研究課題/領域番号 |
22K12227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
小林 三智子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (20153645)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | コーヒー / カフェイン / 動的官能評価 / 順位法 / 味認識装置 / 味覚感受性 / 苦味 / 苦味強度 / 嗜好性 / 緑茶 |
研究開始時の研究の概要 |
コーヒーや緑茶は日常摂取する機会の多い飲料だが、この2種の飲料の共通点は「苦味」である。一般に天然に存在している苦味の多くには毒性があり、ヒトが苦味を嫌うのは、毒性に対する自然に備わった防御反応と考えられている。が、私たちは成長の過程で、コーヒーやビール等の苦味を持つ食品を、好ましいと感じるようになる。本研究課題は、「苦味」に着目し、実際の抽出液の化学的分析と苦味の関係を追求し、さらに風味と嗜好性との関係を検討する、まったく新しい視点に立った研究である。本研究により、苦味、風味および嗜好性の3要因の関連性を探求することができ、「おいしさ」や「食嗜好」の尺度測定の基盤を確立することができる。
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研究実績の概要 |
23年度は、飲料のうち主にコーヒーの苦味と味覚感受性の関係を検討した。 まずカフェイン含量の少ない抽出法を決定するため、水出し法と一般的な90℃抽出したコーヒーのカフェイン量をHPLCで求めた。その結果、24時間水出し抽出法が最もカフェイン量が少なく、この方法を用いてその後の機器測定と官能評価を実施した。 コーヒーの苦味物質はカフェインのみではなく、クロロゲン酸、クロロゲン酸ラクトン等他の成分も重要であるが、その後の官能評価で、苦味を添加した試料を使用予定であったので、人体に安全なカフェイン添加で本学の倫理審査を受けた。 1.味認識装置を用い、コーヒーの酸味、苦味、渋味、旨味、塩味を分析した。カフェイン添加により、酸味、苦味先味および苦味後味に、変化が認められたが有意差はなかった。味認識装置はカフェインの測定ができないので、この値の変化には酸味の影響が大きいのではないかと考察し、現在詳細な検討を進めているところである。 2.順位法による官能評価の結果、カフェインの添加により、ミディアムローストの甘味は0.04%カフェイン添加した試料が有意に強く、渋味が有意に弱くなった。コーヒーの濃さは、カフェインの添加より強くなった。測定項目は、うま味の強さ、渋味の強さ、苦味の強さ、酸味の強さおよび煎茶の濃さである。 3.動的官能評価の結果 ①TI法では、カフェイン添加の大きな影響は求められなかった。②カフェインの添加より、後味の甘味、渋味が感じ易くになった。③TCATA法では、カフェイン添加により、コーヒーの苦味の持続時間が長く、酸味が短くなる傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は年度は煎茶について、2023年度はコーヒーについて、それぞれ飲料の苦味成分と濃さの関係について、研究を進めてきた。 まず最初は、試料の抽出方法の検討に時間をかけ、精度の高い再現性のある抽出法を確立した。 次に、機器分析としてHPLCによるカフェイン量の測定と、味認識装置による味の評価を実施した。 さらに、官能評価は、従来の順位法による評価と、動的官能評価であるTI法、TDS法およびTCATA法を用いて味の時間的変化を測定し、より詳細なデータを得た。 現在は、ここまで得られたデータを総合的に評価し、それぞれの関係性を求めているところである。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、2024年度が最終年度であることから「飲料の苦味成分と味覚感受性の関係および苦味強度と嗜好性に関する研究」の完全遂行を目標とする。 苦味強度と嗜好性に関する部分の研究を主として進める。 この2年間で得られた煎茶とコーヒーの苦味だけではなく、新たに野菜の味についてピューレにして測定する予定である。課題では「飲料の~」としているので、野菜ジュースやスープにする場合を想定して実施する。 現在の大きな課題は、コーヒーをブラックで飲めるパネルが限られることであり、官能評価のパネルの確保が大変難しい。また、パネルのトレーニングをして、苦味の共通認識をもち評価法の精度を上げても、次の年には卒業して別のパネルになるので、そこも大きな問題である。また、煎茶に関しても学生はペットボトル入りのお茶しか飲まず、お茶本来の味を知らない人が多い。 今後、嗜好性について検討していく際に、パネル間で「苦味」に対する共通認識をもち、動的官能評価の評価法の十分な理解が必要であると考えている。
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