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マンザイの代数構造を通して理解する笑いの経験

研究課題

研究課題/領域番号 22K12231
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分61060:感性情報学関連
研究機関早稲田大学

研究代表者

郡司 幸夫  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40192570)

研究分担者 中村 恭子  九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (00725343)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワード笑い / マンザイ / コント / 量子論理 / ラフ集合 / 天然知能 / 束論 / 量子論 / あるあるネタ / 漫才 / 創造性
研究開始時の研究の概要

マンザイにおけるオチの形成条件として解読する。マンザイのネタデータから言葉と意味の二項関係をアンケート・インタビューによって構成し、ラフ集合を用いて得られる束が、量子論と関係するオーソモジュラー束や、準直和ブール代数系となるか評価する。これを通して、芸人自身が唱える、笑いにおける「緊張の緩和」や「フチドリ」を束の変化と束上の確率の変化によって説明し、創造性一般に対する量子情報を部分に含む理論の拡張を企図する

研究実績の概要

本研究は日本でとりわけ発展したマンザイを題材に、笑いの体験を創造体験として捉え、その代数構造を解析しようとする研究である。したがって本研究は、マンザイにおける具体的な解析と共に、その根幹にある「創造とは何か」という問いに答えることをも研究主題として位置付けている点に大きな特徴がある。
この創造とは何かに関して、問いに正面から答えた、研究代表者の主著ともなるべき『創造性はどこからやってくるか-天然表現の世界』ちくま新書(2023)を今年度、刊行した。本書は、代表者の前著『天然知能』講談社メチエ(2019)を、人間の創造行為一般に拡張し、さらにその後継でもあった『やってくる』医学書院(2020)における外部の召喚をより具体的、普遍的な構造として構想したもので、異質な二者を共に引き受ける肯定的アンチノミーとその異質な二者の強度を脱色し、無効にすることで、肯定的アンチノミーを担保しながら否定的アンチノミーさえ共立させる構造こそが、外部を召喚する創造行為の原器であると主張している。
従来の構造主義が、問題にされる現象の説明として構造を用いるのに対し、本研究における肯定的・否定的アンチノミーの共立は、外部を召喚する道具、何かを捉える網のような道具として構造を提案している点で、構造主義とは一線を画するものであり、同時に、全てをなんらかの形で観察者に相関させ説明する現象学を乗り越える、「外部へアクセスする実践の哲学」として提案されている。
同時に今年度、その具体的解析においても、マンザイのみならずコントにつてモデルを構築し、解析を進めた。肯定的・否定的アンチノミーの共立として成立するはずの笑いは、その構造を二項関係化して得られる量子論理(オーソモジュラー束)で表現されるというモデルを提案し、それを証明するべく、マンザイ及びコントの構造がどのぐらい量子論理に近いかを定量的に分析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

第一に「創造とは何か」という問いに対して、想像を外部からの召喚として捉え直し、その構造を明らかにした点にある。これによって、笑いを含む創造一般について議論することが可能となり、創造とは何かという問題を、説明すべき問いから、体験する問いへと大きく転換した。
第二に、マンザイやコントの構造解析に関して、人間を使うのみならず、人工知能、とりわけChatGPTを用いてマンザイやコントに関するアンケートを実施し、その結果を構造解析しているという新たな方法の導入にある。この方法もある程度確立しつつあり、今後はさらにこの方法を展開することが期待できる。
第三に、笑いのモデルとして提案していた二項関係から束を構成するモデルが、単に準直和ブール代数系をもたらすというのではなく、量子論理をもたらすことが示せた点にある。この点から直接、量子論理の特徴である分配律が崩れ、オーソモジュラー律が成立する度合いを評価することで、現実のマンザイやコントの構造が、どの程度量子論理に近いかを評価することが可能となった。
第四に、文献調査から、本研究で用いたラフセットを用いて量子論を得るという解析方法が、決して本研究のみの孤立したものではなく、独創性と先駆性を持ちながら、近年、これに接近する研究が認められ始めた点にある。従来からあった量子論理的認知科学は、2017年より笑いと量子論との関連を提案してはきたが、量子力学を用いた隠喩的なモデルに留まっていた。しかし2023年になると、量子論的認知科学において、化学反応や進化過程を二項関係に落とし、束として解析する論文が発表された。それはラフ集合を用いるものではないが、ほぼ等価な方法になっている。彼らもここから量子論理が得られる道を探っているが、まだ見つかっていない。これらにおいて、本研究は明らかに先行している。

今後の研究の推進方策

第一に、マンザイとコントの解析結果を含む、笑いと量子論理の関係を明らかにした論文を著す。また、最近連絡をとるようになった、笑いをテーマとする量子論的認知科学の研究者と共著で、これに関するレビュー論文を書く予定である。
第二に、また、深層学習において、グラニュール計算としてのラフセットに注目が集まり初めており、ここでも量子論理との関連が取り沙汰されるのは明らかだ。二年前、研究代表者はベイズ推論とこれを拡張した逆ベイズ推論を併せ持つシステムにおいて量子論理が得られることを示したが、これをさらに制限付きボルツマンマシンに拡張し、そのグラニュール計算と量子論理の関係を明らかにする。
第三に、昨年度の終わりから今年度にかけて、時間の存在しない量子論理にあって、量子論理をもたらす二項関係をセル・オートマトン化するモデルを考案し、量子論理オートマトンとして定義しているが、この量子論理オートマトンは一般的にセル・オートマトンの言葉で言うところのクラスIVパターンを形成し、カオスと秩序の臨界状態を示すことがわかってきた。その時間発展パターンは臨界現象に特徴的な1/fノイズを示すことも判明した。これによって、量子論理と臨界現象的な振る舞いが関係している可能性があり、それはいわゆる相転移に関与した臨界現象ではなく、より一般的な意味を持つものと考えられる。これをマンザイやコントでも見出せるか、マンザイやコントの時系列において1/fノイズのような冪分布が見られるか否か解析を進める。
第四に、量子論理との類似度に関する定量評価と、1/fノイズのような時系列解析を、マンザイと並んで日本のサブカルチャーの代表であるマンガ、とりわけギャグマンガに関しても進める予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (32件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 2件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Kakiwari: The device summoning creativity in art and cognition.2023

    • 著者名/発表者名
      Gunji, Y.-P., & Nakamura
    • 雑誌名

      Unconventional Computing, Philosophies and Art (Adamatzky, A. ed.) World Scientific, Singapore

      巻: 1 ページ: 135-168

    • DOI

      10.1142/9789811257155_0007

    • ISBN
      9789811257148, 9789811257155
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deja; vu, Bayesian and inverse Bayesian Inference.2023

    • 著者名/発表者名
      Gunji, Y.P.
    • 雑誌名

      Bergson’s Scientific Metaphysics: Matter and Memory Today (Hirai, Y. ed.), Bloomsbury Pub

      巻: 1 ページ: 195-211

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 975597on a visual body with discomfort and its algebraic analysis2023

    • 著者名/発表者名
      Ruijia Yang、Sakura Hirokazu、Gunji Yukio-Pegio
    • 雑誌名

      Frontiers in Neuroscience

      巻: 17 ページ: 975597-975579

    • DOI

      10.3389/fnins.2023.975597

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The device summoning creativity in art and cognition.2023

    • 著者名/発表者名
      Gunji, Y.-P., & Nakamura, K.
    • 雑誌名

      Unconventional Computing, Philosophies and Art (Adamatzky, A. ed.) World Scientific, Singapore

      巻: 1 ページ: 135-168

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Connection and disconnection of perception and memory: Deja vu, Bayesian and inverse Bayesian Inference.2023

    • 著者名/発表者名
      Gunji, Y.P.
    • 雑誌名

      Bergson’s Scientific Metaphysics: Matter and Memory Today (Hirai, Y. ed.), Bloomsbury Pub

      巻: 1 ページ: 195-211

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Probabilistic logic gate in asynchronous game of life with critical property.2022

    • 著者名/発表者名
      Gunji, Y-P., Ohzawa, Y., Tanaka, T.
    • 雑誌名

      Handbook of Unconventional Computing Vol. 2 (Adamatzky, A. ed.) World Scientific

      巻: 2 ページ: 375-397

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Concept Formation and Quantum-like Probability from Nonlocality in Cognition2022

    • 著者名/発表者名
      Gunji Yukio-Pegio、Haruna Taichi
    • 雑誌名

      Cognitive Computation

      巻: - 号: 4 ページ: 1328-1349

    • DOI

      10.1007/s12559-022-09995-1

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Psychological origin of quantum logic: An orthomodular lattice derived from natural-born intelligence without Hilbert space2022

    • 著者名/発表者名
      Gunji Yukio Pegio、Nakamura Kyoko
    • 雑誌名

      Biosystems

      巻: 215-216 ページ: 104649-104649

    • DOI

      10.1016/j.biosystems.2022.104649

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Simulation of foraging behavior using a decision-making agent with Bayesian and inverse Bayesian inference: Temporal correlations and power laws in displacement patterns2022

    • 著者名/発表者名
      Shinohara Shuji、Okamoto Hiroshi、Manome Nobuhito、Gunji Pegio-Yukio、Nakajima Yoshihiro、Moriyama Toru、Chung Ung-il
    • 雑誌名

      Chaos, Solitons & Fractals

      巻: 157 ページ: 111976-111976

    • DOI

      10.1016/j.chaos.2022.111976

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Universal criticality in reservoir computing using asynchronous cellular automata.2022

    • 著者名/発表者名
      Uragami, D. & Gunji, Y.P.
    • 雑誌名

      Complex Systems

      巻: 31 ページ: 104-121

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Connecting the free energy principle with quantum cognition2022

    • 著者名/発表者名
      Gunji Yukio-Pegio、Shinohara Shuji、Basios Vasileios
    • 雑誌名

      Frontiers in Neurorobotics

      巻: 16 ページ: 910161-910161

    • DOI

      10.3389/fnbot.2022.910161

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 天然知能から構成される量子論的認知科学と過剰ベイズ推定2022

    • 著者名/発表者名
      郡司ペギオ幸夫
    • 雑誌名

      人工知能

      巻: 37(6) ページ: 699-707

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] メタモルフォーゼ:制約によって発現される自由.2022

    • 著者名/発表者名
      郡司ペギオ幸夫
    • 雑誌名

      モルフォロギア

      巻: 44 ページ: 2-21

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 『不在』がもたらす創発2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第17回「共創する時空」研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] いかにして作家である「私」の当事者性は擁護されるか2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第17回「当事者としての共・創」研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 起源問題における「不在」の意味2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      日本進化学会第25回大会シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 自由エネルギー原理と量子論的認知科学の関係, そして笑い2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      第33回日本神経回路学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 天然知能から適応・起源を考えるということ2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      第70回自律分散システム部門研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「創造する・外部を受け入れる」という能動性について2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      第65回知謝塾
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「不在」を作ることで媒介者を召喚する2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第7回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 「言葉にできないこと」を言葉にする-書く・読む・奏でる-2023

    • 著者名/発表者名
      江藤健太郎, 郡司ペギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第7回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 和太鼓のリズムに出会う:和太鼓の鑑賞実験を通して2023

    • 著者名/発表者名
      野村翔琉,郡司ペギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第7回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 「どうしても思い出せない」を実験的に作り出す2023

    • 著者名/発表者名
      遠藤瞭介,郡司ペギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第7回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 空間認知の人称性と記憶の人称性の相関について-あやとりによる発見2023

    • 著者名/発表者名
      杜越, 郡司ペギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第7回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 量子論理オートマトンにおける臨界性2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ペギオ幸夫, 大澤慶彦, 江藤健太郎
    • 学会等名
      第24回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Critical Computation in the disequilibration between the active and passive Computing2023

    • 著者名/発表者名
      Yukio Pegio Gunji
    • 学会等名
      The 14th International Workshop on Natural Computing
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Bio-Computing as Natural Born Intelligence2022

    • 著者名/発表者名
      Yukio Pegio Gunji
    • 学会等名
      Workshop for Digital Innovation Season in University of the Art London
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 不在によって、外部に開かれるもの2022

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      シンポジウム・意識の源流を探る(諏訪市美術館)
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「はじまりの・あーと」その理論と実践2022

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      第56回作業療法学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 自己中心フレームと他者中心フレームの捩れがもたらす8字ダンス2022

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 学会等名
      共創学会第6回年次大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 創造性はどこからやってくるかー天然表現の世界2023

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      筑摩書房
    • ISBN
      9784480075758
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] かつてそのゲームの世界に住んでいたという記憶はどこから来るのか.2022

    • 著者名/発表者名
      郡司ぺギオ幸夫
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      青土社
    • ISBN
      9784791775163
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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