研究課題/領域番号 |
22K12255
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 京都大学 (2023) 東北大学 (2022) |
研究代表者 |
川又 生吹 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30733977)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | DNAナノテクノロジー / DNAオリガミ / DNAタイル / 組み合わせ最適化 / 配列設計 / 分子ロボティクス / 分子サイバネティクス / トラス型構造体 |
研究開始時の研究の概要 |
DNA分子を材料として、微細で精密な形状を持った人工物を自己集合により作製する技術が近年発展している。しかしながら、単一の構造として作製可能な分子の大きさは100ナノメートル程度である。この制約が生じる要因は、材料として必要なDNAを、物理・経済的観点から、一定量以上準備できないことにある。 本研究では、従来法と比べて100倍以上安価にかつ大量にDNAを合成可能な「オリゴプール法」に注目し、大規模なDNAの人工物を作製する新規手法を提案する。具体的には、シミュレーションと実験自動化を組み合わせ、従来の試行錯誤による手法とは異なる合理的な設計方法を開発し、大規模なDNA構造体を実験的に作製する。
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研究実績の概要 |
DNA分子を材料として、微細で精密な形状を持った人工物を自己集合により作製する技術が近年発展している。しかしながら、単一の構造として作製可能な分子の大きさは、せいぜい100ナノメートル(nm)程度である。この制約が生まれる要因は、材料として必要なDNAを、物理的・経済的観点から、ある一定量以上準備できないことにある。 本研究では、従来法と比べて100倍以上安価かつ大量にDNAを合成可能な「オリゴプール法」に注目し、大規模なDNAの人工物を作製する新規手法を提案する。要素技術として、DNAの分子構造に基づいた幾何学設計、組み合わせ最適化を用いた配列設計手法、観察直前に夾雑物の除去する技術の開発、粗視化分子動力学シミュレーションを用いた安定性解析などが必要になる。これらの手法を組み合わせることで、従来の試行錯誤による手法とは異なる合理的な設計方法を開発する。
当該年度では、前年度に集中的に研究を行っていたDNAの粗視化分子動力学シミュレーション発展させ、提案するDNA分岐構造やらせん型のDNAオリガミ構造体の幾何学的・力学的性能を評価することに成功した。その成果の一部をまとめた論文を執筆し、Nature Communications誌等で報告した。さらに、DNAの塩基配列設計手法については、問題サイズに応じた評価関数と組み合わせ最適化アルゴリズムを用いるシステムを開発することに成功し、DNA構造体やDNA反応系へ応用した。その成果の一部をまとめた論文は、Science Advances誌で採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発を進めているDNA構造体の予測を行うための、DNAの粗視化分子動力学シミュレーションに必要な環境を整えることができた。具体的には、計算資源を追加で導入し、さらにシミュレーションを実行するためのウェブインターフェースを開発した。シミュレーション結果の可視化や解析を自動的に行うツールも作成し、予測や共同研究を加速させることができた。例えば、国際共同研究を行っている、らせん型DNA構造体について、その巻く向き・半径・ピッチ等を定量評価し、実験結果と比較することができた。
さらに、人工知能の一種である組み合わせ最適化アルゴリズムを用いることで、DNAの塩基配列を自動的に設計するソフトウェアの開発にも成功した。ソフトウェアの特徴の一つは、ユーザーが問題の規模に応じて、高精度・低速、または高速・低精度な評価関数を切り替えることが可能な点である。開発したソフトウェアは、本研究で提案するDNA構造体のみならず、DNA反応系の設計にも応用できることができることが分かった。具体的には、分子モーターを駆動するための大規模なDNA反応系を設計し、実験的にその性能を評価することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーション等の理論研究の成果については、必要に応じて関連する共同研究者に提供するものの、本研究では今後、これまでの理論研究の成果に基づき、前年度から引き続き行っている実験研究を集中的に行う。具体的には、現在進めている一辺500nmを超える大規模DNA構造体の作製を進める。現時点では収率が非常に低いため、提案の構造体に最適な精製方法および観察方法を模索する。例えば、目的の構造物だけのマイカ基板上に吸着させ、ピペッティング等により発生させた液体の流れによって、余剰な材料や不純物を取り除く。本技術の有用性を示すために、理論と実験の間で生まれた齟齬は理論モデルへとフィードバックを行い、より将来的な研究へとつなげる。
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