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遠隔かつ非接触な眼底酸素飽和度計測装置の開発と有効性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 22K12262
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
研究機関静岡大学

研究代表者

海老沢 嘉伸  静岡大学, 工学部, 教授 (40213574)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード眼底 / 血中酸素飽和度 / 非侵襲計測 / 近赤外光 / 瞳孔輝度計測 / 瞳孔検出 / マルチスペクトルカメラ / 視線検出 / 近赤外 / 酸素飽和度 / ヘルスケア / 近赤外2波長瞳孔輝度比
研究開始時の研究の概要

本研究では、遠隔から非接触で人間の眼底の酸素飽和度SO2の計測を行える装置の開発とその実証実験を行う。2波長の不可視の近赤外線LED光源により2種類の明瞳孔画像を得て、2波長間の瞳孔輝度比の変化からSO2の変化を検出する。無呼吸実験により、これを検証する。これまでの研究では高速度カメラを使用していたが、偏光センサカメラを利用した2波長の画像を同時取得できる技術を導入して、低コスト化を試みる。同時にカメラの変更によって新たに起こる測定精度低減の問題の軽減を試みる。本方法は、被験者への負担が小さく、将来、無意識のうちにSO2の変化の検出ができるようになる可能性がある。

研究実績の概要

本研究では、遠隔から(30㎝~50㎝程度を想定)非接触で人間の眼底の血中酸素飽和度SO2の計測が日常的に行える装置の開発とその実証実験の試みを行っている。眼底疾患の発見に役立つことが期待できる。
1年目は、2波長(810nm, 940nm)を被験者の顔に光を照射させ、2波長間の瞳孔輝度比をSO2に相関を持つ数値(以後、単にSO2と呼ぶ)を検出した。被験者に画面上の1点を注視させ無呼吸実験を試みた。指先の経皮的動脈血酸素飽和度SpO2を同時計測した。両眼で合計4カ所の同時計測をした結果、3名中、どの被験者でも1か所のみに、SpO2の経時的変化とSO2が相関的に変化する傾向が見られた。この結果は、動脈と静脈の量比が眼底の位置によって異なるためと考察できた。よって、計測中にどこを注視させるべきかが課題となった。
2年目には、本方法で一時期に網膜のどの程度の広さの領域のSO2を計測しているのかを調べるため、被験者に滑動性眼球運動を生じさせ、計測領域が網膜上の視神経乳頭を含む領域を水平走査するように計測した。その結果、810nmでは瞳孔輝度が視神経乳頭部分で急峻に上昇する結果が得られた。940nmではその傾向が弱かった。眼球の近くから網膜の広い範囲を撮影する方式で同2波長を使用して撮影したときに、神経乳頭部が周囲に比べて輝度が高く、その度合いが810nmのほうが大きいという知見がある。本実験結果はそれと一致するとともに、本方法による計測領域は神経乳頭よりも狭いことが示唆された。この結果を受けて、黄斑部のSO2を計測すること想定して、瞳孔検出法用光学系を被験者に注視させて無呼吸実験を行った結果、1年目と同様にSO2に変化が生じた。黄斑部は加齢や疾患により異常により視覚に重大な問題を起こす部位であり、測定するにあたり、光学系を注視するだけで済むため、日常の計測に有効であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

瞳孔輝度と瞳孔面積との関係が正比例になることを確認することを課題としていたが、1年目は被験者にモニター画面を注視させながらSO2を計測し、2年目に瞳孔検出用光学系を注視させながらSO2を計測した。ともに、従来に比べ、より正比例に近くすることができ、瞳孔輝度を瞳孔面積で正規化することなしで、単純演算により2波長間の瞳孔輝度比でSO2の変化を検出できたことは計画通りである。
上述のように、一定の位置を計測できるだけであるため、眼底を走査し、眼底の広い範囲での計測をする方法を提案することを計画していたが、それには至らなかった。しかし、視覚にとって重要な黄斑部でのSO2が計測できることを示唆する結果が得られ、実用化に向けて、むしろ有用な結果を得た。それに関連して、1年目では動脈の多い部位でないと瞳孔輝度比に変化が生じないと考察した。黄斑部では、毛細血管が多く、動脈と静脈の量がニュートラルであると予想していたため、瞳孔輝度比変化が得られにくいと予想していたが、変化が得られることが確認できたことは予想外の価値ある発見であった。
眼球を回転させることにより、SO2の計測部位を、視神経乳頭部を含む少し広い範囲を水平走査させることで、本方法の計測範囲が非常に狭い領域であることが確認できた点も計画になかった進展である。それにより、上述のように、視覚に重要な黄斑部のみを特定してSO2を計測することにつながった。
これまで特殊で入手しにくいマルチスペクトルカメラを使用していたが、普通のマシンビジョンカメラでも画像の一部のみを取り込むことで高フレーム化できるカメラを利用した光学系を、未だ不備な点があるが、構築することができた。

今後の研究の推進方策

これまで、瞳孔検出用光学系を注視することで、視力にとって重要な眼底の黄斑部のSO2を計測できていることが示唆される結果を得た。したがって、被験者に光学系を注視させるだけで、視覚の中でも特に重要な黄斑部のSO2が計測できると考えられ、有効である。しかし、現状では、光学系に対する瞳孔の3次元位置を固定するために、歯形を作って被験者に噛ませ頭部を固定している。まずは、SO2が計測できる可能性があるかを検証するためであったが、日常的な計測には不都合である。
最終年度は、頭部を動かしても計測ができるかを検証する。そのためには、次のことを行う。カメラはその性質上、画像の中心が周辺に比べて相対的に明るい傾向がある。また、使用している近赤外光源には指向性があるため、さらに画像の中心が明るく周囲が暗くなる傾向が強まる。また、使用している810nmと940nmの光源の指向性には違いがあるため、頭部が移動し(移動中という意味ではない)、別の位置で瞳孔輝度を計測すると、血中酸素飽和度が変化しなくても、2波長間の輝度比に変化が生じてしまうと考えられる。そこで、白板を光学系の前に設置し、波長ごとに輝度補正を行うことを提案し、導入する。
研究実績の概要に述べた実験では、2波長を同時発光させて、波長分離した画像が得られるマルチスペクトルカメラを使用した。課題としてきた、瞳孔輝度と瞳孔面積との間の正比例関係が成立させることにはほぼ成功したため、瞳孔輝度を瞳孔面積で正規化する必要がなくなり、単純に2波長間の瞳孔輝度比からSO2を求められるようになった。しかし、同カメラが特別なカメラであるため、一般的なマシンビジョンカメラのフレームレートを高速化したものを利用した研究を別途開始した。しかし、なんらかの理由で、瞳孔輝度と瞳孔面積との間の正比例関係が成立させるするには至っていない。その検討を進める。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 学会発表 (11件) 備考 (7件) 産業財産権 (2件)

  • [学会発表] 内視鏡外科手術を想定した術者の負担軽減のための瞳孔検出技術を用いた装置開発2023

    • 著者名/発表者名
      成瀬摩衣、武田隼輔、福元清剛、海老澤嘉伸
    • 学会等名
      ViEW2023ビジョン技術の実利用ワークショップ
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] マルチスペクトルカメラを用いた2波長の瞳孔輝度比に基づく眼底血中酸素飽和度の遠隔計測2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤壱哉、福元清剛、小野修司、海老澤嘉伸
    • 学会等名
      ViEW2023ビジョン技術の実利用ワークショップ
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 瞳孔位置検出に基づく遮蔽物の擬似透明化の試み2023

    • 著者名/発表者名
      具志堅諒、福元清剛、海老澤嘉伸
    • 学会等名
      ViEW2023ビジョン技術の実利用ワークショップ
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ロール回転するステレオカメラの反射マーカーによる外部パラメータ推定に基づく瞳孔3次元座標を用いた注視点検出2023

    • 著者名/発表者名
      福元清剛、伊奈尚時、海老澤嘉伸
    • 学会等名
      SII2023画像センシングシンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 携帯機器におけるLEDの少量化を伴う小型光学系を用いた注視点検出の検討2023

    • 著者名/発表者名
      石田知基,福元清剛,海老澤嘉伸
    • 学会等名
      DIA2023 動的画像処理実利用化ワークショップ2023
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 瞳孔3次元座標を用いた視線検出装置における反射マーカーを利用したステレオカメラの外部パラメータ推定の試み2023

    • 著者名/発表者名
      伊奈尚時,福元清剛,海老澤嘉伸
    • 学会等名
      DIA2023 動的画像処理実利用化ワークショップ2023
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 高速度カメラによる高頻度かつ高精度な注視点検出に基づく眼球運動の計測 -高速な頭部回転への対応-2022

    • 著者名/発表者名
      岡本朋也,福元清剛,海老澤嘉伸
    • 学会等名
      ViEW2022ビジョン技術の実利用ワークショップ
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 目視外観検査における習熟訓練のための手に持つ3次元物体上の注視点検出システム2022

    • 著者名/発表者名
      福元清剛,阪口恵真,海老澤嘉伸
    • 学会等名
      ヒューマンインタフェースシンポジウム2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ROIおよびBinningにより高速化したカメラを使用した瞳孔および注視点検出2022

    • 著者名/発表者名
      村松雄太,小島達史,福元清剛,海老澤嘉伸
    • 学会等名
      映像情報メディア学会年次大会2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 偏光センサカメラを用いた明・暗瞳孔顔画像同時取得による注視点検出2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤壱哉,清水凌雅,福元清剛,小野修司,海老澤嘉伸
    • 学会等名
      映像情報メディア学会年次大会2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 据置型視線分析システム2022

    • 著者名/発表者名
      海老澤嘉伸、金田篤幸
    • 学会等名
      周辺視目視検査セミナー
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [備考] 海老澤・ 福元研究室

    • URL

      https://wwp.shizuoka.ac.jp/ebiken/

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 静岡大学プロジェクト「正視覚力研究所」

    • URL

      https://project-kenkyu.shizuoka.ac.jp/introduction-pj-labo/y2019/1-004

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書
  • [備考] 眼底の血中酸素飽和度遠隔かつ巨視的無自覚計測

    • URL

      https://shingi.jst.go.jp/list/list_2021/2021_sizuoka.html#20211111P-006

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 遠くでも目と目が合う遠隔対話、覗き込める遠隔観察システム

    • URL

      https://shingi.jst.go.jp/list/list_2019/2019_shizuoka.html#20191107P-003

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書
  • [備考] 部移動に対応する自動車ピラーや建造物等の死角の透明化

    • URL

      https://shingi.jst.go.jp/list/list_2023/2023_shizuoka.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 海老澤・福元研究室

    • URL

      https://wwp.shizuoka.ac.jp/ebiken/

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [備考] 眼底の血中酸素飽和度の遠隔かつ巨視的無自覚計測

    • URL

      https://shingi.jst.go.jp/list/list_2021/2021_sizuoka.html#20211111P-006

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [産業財産権] 画像処理システム及び画像処理方法2023

    • 発明者名
      海老澤嘉伸
    • 権利者名
      海老澤嘉伸
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2023-200904
    • 出願年月日
      2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [産業財産権] 瞳孔検出装置および瞳孔検出方法2023

    • 発明者名
      海老澤嘉伸
    • 権利者名
      静岡大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2023-027277
    • 出願年月日
      2023
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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