研究課題/領域番号 |
22K12265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
飯田 緑 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (50882396)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | インタラクトーム / 化学物質有害性評価 / ネットワーク生物学 / 機械学習 / 化学物質 / 複合影響予測 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトや環境生物は環境中に存在する何千種類もの化学物質に同時に曝露されている。したがって、複数の化学物質による影響を予測することは環境毒性学の大きな課題である。化学物質の影響を予測するには、どの化学物質が、どの生物種の、どの疾患に対して高い有害性を持つかを解明する必要がある。現在、化学物質の構造に基づく予測手法が提案されているが、生物種による有害性の差を考慮できない。そこで本研究では、生物種固有のタンパク質相互作用ネットワークと機械学習の手法を統合し、有害性の高い化学物質の組み合わせを予測する。本研究の実現により、優先して調査すべき化学物質や生物種が明らかになり、生物試験を大幅に削減できる。
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研究実績の概要 |
研究期間全体での目標は、①化学物質の有害性評価、②有害性予測手法の開発、③複合暴露評価への拡張という3つである。本年度は①を実施した。本課題は、3つのステップで実施した。最初のステップでは、哺乳類(ヒト)、魚類(メダカ、マダイ、サケ)のインタラクトームデータを構築した。ヒトについては、さまざまなタンパク質間相互作用データを統合して、ヒトの網羅的なインタラクトームデータを構築した。メダカ/サケ/マダイについては、STRINGデータベースからデータを取得し、生物種固有のインタラクトームデータを構築した。 次のステップでは、疾患関連遺伝子群と化学物質関連遺伝子群を同定し、それらの間のインタラクトーム上の距離を計算した。ヒトについては、GWASデータベースなど6つのデータベースから疾患関連遺伝子群を取得し、メダカ・マダイについては、ヒトの疾患関連遺伝子群のオーソログを使用して疾患関連遺伝子群を定義した。サケについては、文献調査により疾患関連遺伝子群を取得した。化学物質関連遺伝子群は、ヒトではLINCSデータベースを、メダカとサケでは文献調査及び、他研究者からの情報提供を取得した。マダイのデータについては、独自に実施したプロテオームの結果を用いた。ヒト・メダカ・マダイについては、それぞれの生物のインタラクトームデータを用いて、疾患―化学物質間距離の計算を行った。 最後のステップでは、疾患とその疾患に対する薬剤間のインタラクトーム上の距離が短い傾向があるかどうかを検証した。ヒトにおいては、既に報告がある通り、疾患―化学物質(薬剤)間距離は、その他の薬剤に比べ短い傾向が見られた。また、メダカ・マダイにおいても同様の傾向があると考えられた。本研究結果については、国内学会で発表した。サケについては、今後行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の哺乳類(ヒト)と魚類(メダカ・マダイ)については、研究計画通りインタラクトームの構築から、距離計算、比較が遂行できた。サケに関しては発表には至っておらず、データ収集による、疾患と化学物質の距離の計算の実現への努力を行っている段階である。以上の理由で、やや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究課題を遂行した結果、インタラクトームデータを用いた手法は、ヒトだけではなく、魚類(メダカ・マダイ)においても化学物質の影響評価に有用であることが示された。そこで、次年度では②有害性予測手法の開発を行う。初年度で計算した「化学物質が影響を与える遺伝子群と疾患に関連する遺伝子群の距離」から「化学物質関連遺伝子群―疾患関連遺伝子群」間の類似度が計算できる。この類似度と化学物質と疾患の関係性を学習する。次に、ある化学物質とある疾患が関係するかを予測する。ここでは、申請者らが以前に開発した類似度から効率よく共有性を予測できる機械学習の手法である、カーネルマトリックス回帰を用いる予定である。カーネルマトリックス回帰で予測精度が十分に高くならない場合、他の機械学習の手法を検討する。
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