研究課題/領域番号 |
22K12272
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62020:ウェブ情報学およびサービス情報学関連
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
井ノ口 宗成 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (90509944)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 生活再建支援 / 被災者登録 / 事前対策 / ウェブアプリ / 令和6年能登半島地震 / 生活再建 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,被災者の生活再建支援の迅速化・高度化を目指し,被災者個人と支援組織をHuman-in-the-Loopで連携させる「被災者登録システム」の設計・開発と実装を実現する。本システムでは,被災者生活再建支援の第一歩となる罹災証明発行において,災害前後の情報連携ならびに被災者個人と支援組織の参画により迅速性と確実性を担保し,被災者の状況や支援の状況が個別情報と集約情報として管理され,被災者自身にとっては生活再建の見通しを立てられるとともに,支援組織としては新たな支援策の検討を可能とする。
|
研究実績の概要 |
2023年度では、初年度に開発したプロトタイプシステムをベースに、住民・支援組織(基礎自治体)を含めた検証を実施した。本システムでは、事前登録機能を実装し、被災者の基本情報をクラウドで管理することにより、災害時には識別キーを含むQRコードで様々な支援サービスと連携することとした。支援サービスを送受する場合にのみ、クラウドから基本情報を復号化して取得し、利用終了後は破棄することとした。本検証では、以前の紙媒体における避難所入所時のチェックインよりも、システムを活用したチェックインの方が、確実かつ迅速に手続きを完了できるとともに、避難者名簿の作成が容易となったことを実証した。また、支援組織側においても、避難所ごとの避難者数を把握するとともに、収容可能人数から混雑度を可視化することで、避難所の概況を即時に把握することが可能となった。一方で、事前に想定した生活再建支援にかかる基本情報についても、事前登録によって収集可能であった。上記の実験では、防災訓練の場を利用しており、避難所運営が中心となっているため、生活再建支援で利用する上での情報の過不足については検証に至らなかった。 令和6年元旦には能登半島地震が発生した。富山県内でも住家被害が発生し、生活再建を進める必要があった。本研究で位置づけた「被災者の基本情報」をもとに、行政側の生活再建支援推進のための仕組みを構築し、その有用性を検証した。想定していた基本情報が活用できると推察された一方で、避難フェーズでは利用のない口座情報の管理が必要であることが示唆された。本システムが、個人情報管理の観点から実災害で利用可能な状態でなく、能登半島地震では実装できなかったものの、事前に情報管理にかかる体制および制度設計も必要であることが明らかとなった。この点については、社会実装フェーズにおいて、関係者とともに協議が必要であると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、新潟県をフィールドとして研究計画で予定していた実証実験を推進した。本実証実験では、2022年度の研究成果として構築したアプリの有用性が確認され、円滑な避難所運営を可能としたと評価できる。これは実務者としての市町村職員に対してもアンケート調査ならびにヒアリング調査を経て、利便性を確認している。あわせて、被災者から「居住地」や「避難先」に関する位置情報もテキストベースとGPSデータの組み合わせによって取得できており、結果のマッピングも可能とした。これらは研究計画で予定していた事項を満たす結果となった。この検証では、避難フェーズを中心としたものにとどまっており、生活再建支援まで展開できていなかった。 一方で、令和6年能登半島地震の発生を受け、富山県内の被災市町村において、生活再建支援の過程を支援することにより、支援側と被災者とのインタラクション上で扱われる情報種別を把握した。特に、住家被害認定においてはマイナポータル申請と自己判定方式が導入された実態を受け、より確実な判定を支援するアプリを事前登録機能と組み合わせられれば、被災者負担だけでなく支援者側の負担を軽減させるとともに、効率的な生活再建が可能であることが示唆された。前述の実証実験では検証できなかった生活再建支援にかかる有用性についても、この被災地での実態調査により確認され、本アプリの展開可能性については一定の評価が出来たと考えている。 これらのように、本申請時の計画に則り、おおむね予定通りに研究が推進されていると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年に発生した能登半島地震を踏まえ、現場で展開される実状を本システムに反映することとする。特に、実務者のみならず被災者の声を聞きながら、個人情報保護の観点も踏まえ、管理すべき情報の標準化を進めるとともに、必要十分条件を明確にしながら情報範囲の極小化を図る。この極小化においては、現場でのヒアリング調査に加えて、被災者の生活再建過程を継続的にモニタリングし、システムに反映することとする。特に、申請時に予定していたHuman-in-the-Loopを意識し、被災者が期待する情報の特定を推進する。この過程でシステムのインタラクションの可能性を追究し、システム側で機械学習すべき対象を捉え、システムの実装を推進する。
|