研究課題/領域番号 |
22K12330
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62040:エンタテインメントおよびゲーム情報学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
中島 佐和子 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (40453542)
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研究分担者 |
大河内 直之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (30361679)
水戸部 一孝 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (60282159)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 福祉情報工学 / 視覚障害者支援 / 映画・映像 / バリアフリー / アクセシビリティ / 音声ガイド / 音声合成 / 話速 / 視覚障害 / 映画 / 自然言語処理 |
研究開始時の研究の概要 |
視覚障害者の映画や映像鑑賞を支援する手法に音声ガイドがある.超高齢化や国内外の法制定を背景に映画や映像のバリアフリー化が急務な中で,機械学習などのAIを用いた自動音声ガイドも提案されてきた.しかし,映画の音声ガイド制作現場では,それら自動化技術は人間が制作する音声ガイドの代替手段としての位置付けに留まり,映画表現の可能性を開く存在としての期待を得ていない.本研究では「音声ガイドの表記ゆれ検出」及び「映画的印象を考慮した音声ガイドの声質調整」により,制作現場での具体的な支援策を検討する.自動生成された音声や台本を通じて映画と音声ガイドの関係性を見直し,映画の音声表現の可能性を広げる準備を整える.
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研究実績の概要 |
研究の2年目は,主に,「音声ガイドの声質調整手法」の開発を進めた.これまでの実験から,映画音声ガイドの話速は映画音の制約を受けながらも,肉声および合成音声の音声ガイドともに個人差を有し,ある幅を持って最適話速が分布することがわった.しかし,最適話速の具体的な要因分析には至らなかった.映画音声ガイドは,読み上げ音声からなるスクリーンリーダとは異なり,音声そのものの聞きやすさだけでなく映画音との関係も重要である.すなわち,話速の最適さには,「聞きやすさ・理解しやすさ」と「映画音との音響的な作用によるAestheticsな要素」が関わると推察する.そこで,音声とキーボード操作により,視覚障害者自ら映画音声ガイドの話速を調整できるソフトを開発した.本ソフトは,映画音と音声ガイドを再生,一時停止,スキップ,バックで再生制御すると同時に,音声ガイド再生中に上下矢印キーを押すことで再生中の音声ガイドの話速を複数段階で調整できる.シーンに含まれる全ての音声ガイドの話速を一律に上げ下げするモードと個別に上げ下げするモードを備えた.本ソフトを用いて,視覚障害者を対象に,2つの長編日本映画の1分半から2分程度のシーンの肉声と合成音声の音声ガイドの話速調整を実施した.実験の結果,シーン全体の音声ガイドの平均値は約7.4から16.5mora/secまで幅広く分布した.さらに,実験後の調査から,音声ガイドの話速設定には音声ガイドを聞きやすくするだけでなく,映画にリズム感や勢いを与え映画への没入感を増強させる効果があることがわかった.視覚障害者により調整された音声ガイドの話速パターンの一例を用いた晴眼者への評価では,特に,合成音声の音声ガイドにおいて,これからの映画体験の向上の効果が得やすいことが示唆された.以上より,映画音声ガイドの話速の観点から,合成音声に効果的な声質調整の切り口を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初に計画していた「映画的印象を考慮した音声ガイドの声質調整」の具体的な検討は予定通り実施できた.しかし,調査や評価の過程で課題も得られた.そのため,研究目的に到達できるよう軌道修正を試みながら進めている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得た成果に基づき,「音声ガイドの声質調整」については,話速調整および話速設定を中心に,視覚障害者の意見や知覚特性をフィードバックしていく方法を具体的に検討する予定である.研究当初に予定していた「音声ガイドの表記ゆれ検出」については,制作現場の現状に即して,音声ガイドの挿入位置調整などの視点も考慮しつつ検討する予定である.引き続き,当事者への調査や評価を重視しながら,効果的な支援技術の開発を進める.
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