研究課題/領域番号 |
22K12356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奈良 郁子 名古屋大学, 環境学研究科, 学振特別研究員(RPD) (70414381)
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研究分担者 |
落合 伸也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (10401936)
土屋 範芳 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40207410)
渡邊 隆広 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (40436994)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 堆積物試料採取 / 年代測定 / 日本海沿岸 / 海水準変動 / ハロゲン元素 / 日本海 |
研究開始時の研究の概要 |
日本各地の沿岸において、後期完新世(約4200~2000年前)に海水準の低下が発生したこと が報告されている。しかしその地域性や発生時期の同時性に関する理解は未だ乏しく、日本各地の試料を用いた海水準の復元が望まれる。本研究計画では、北陸地方の日本海沿岸に位 置する潟湖(ラグーン)から採取した堆積物中のハロゲン元素(Br及びI)分布から過去数千年間の塩分変動を連続的に復元し、テフラ同定と放射性炭素年代測定を併せた高精度年代モデルの構築により、日本海の海水準変動復元、特に後期完新世に発生した海水準低下時期を特定する。
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研究実績の概要 |
本研究では、北陸地方の日本海沿岸に位置する潟湖(ラグーン)から採取した堆積物中のハロゲン元素(Br及びI)分布から過去数千年間の塩分変動を連続的に復元し、加えて噴火年代が西暦946年と決定されている白頭山噴 火テフラ(B-Tm)の同定と放射性炭素年代測定を併せた高精度年代モデルの構築により、日本海の海水準変動復元、特に後期完新世に発生した海水準低下時期を特定することを目的としている。今年度の研究実績として、研究目的に沿った試料採取場所の選定及び試料採取場所周辺のフィールド調査、また堆積物試料採取を行うことができた。本試料の採取場所選定においては、研究分担者とオンラインでのミーティングを重ね、本研究を遂行する上で、最も適当な場所を選定することができた。また、本研究を進める上で、英国の研究者と密接な情報交換を行なった。特に海水準変動復元について、北海堆積物を使用した最新の研究状況について、意見交換を行うことができた。日本海沿岸にて採取された堆積物試料は、十分な試料長さを持って試料採取における撹乱の影響も見られず、今後の分析を進めるための良い状態の堆積物を得ることができた。採取された試料の記載より、試料中に明瞭な堆積層の変化が確認され、採取した堆積物中に日本海沿岸における完新世の環境変動記録が含まれていることが期待できる。また堆積物試料中に貝類及び植物片が複数箇所において見つかり、これら試料を用いた年代測定により、精確な年代モデルを作成できることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の進捗として、今年度の重要な研究遂行項目であった堆積物試料採取を完了できた。試料採取にあたっては、その選定において対象地域の地形等を考慮し、最も効率的に本研究を進めることが期待できると思われる試料採取地点を選定することができた。これにより、環境変動が急激に発生した堆積層を採取できたことが期待でき、研究目的を順調に進めることが期待できる。採取された堆積物試料には貝類などが見つかっており、堆積物土壌以外からの環境情報を得られると期待できる試料を得ることができた。これらの試料は年代測定を進める上で非常に有効な測定試料となりうる。残念ながら今回得られた試料中には、目視で明確にテフラと判断できる堆積層を確認することができなかった。一方で、堆積物には明確に堆積層の変化が確認できており、このことからこの堆積物試料が研究該当地域である汽水域における過去の環境変動を記録していることが予測され、環境変動復元の成果を得られることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、採取された試料を分割し、それぞれの試料を特に化学分析に注目し、分析を進めていく予定である。得られた分割試料の取り扱いについても、研究分担者と議論を重ね、最も効率よく多種のデータを蓄積できるように取り組んでいく。化学分析においては、蛍光x線分析装置を用い、化学元素の網羅的な分析を進めることで堆積物試料の化学元素分布を得る。さらに、元素分析計を用いて、堆積物中の有機物量(有機態炭素及び窒素)変動を明らかにする。これらの分布から、環境変動に対する生物変動についても知見を得ることを予定している。また、複数の元素を用いた放射性同位体年代測定を進めることで、不確実性の低い年代モデルの構築を進める。年代測定結果及び元素分布から、特徴的な分布を明らかにし、環境変動の復元、ひいてはテフラ層の発見につなげたい。また、得られた元素分布データに基づいて、新たな試料採取も進めることを予定している。
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