研究課題
基盤研究(C)
我が国では、ここ数年来、中国から日本へ移流する越境PM2.5の健康影響が懸念されている。越境汚染物質中の二次生成有機エアロゾル(SOA)の組成は、室内実験の結果から大きく2つの議論にわかれている。1つは、SOAはオリゴマーやフミン様物質のような比較的分子量の大きい難分解性の有機物が主要成分であり、長距離輸送中に生成される。もう一つは、オリゴマーやフミン様物質は輸送中に光化学酸化反応などによって分解が促進され低分子化し、さらに分解副産物も生成するというものである。そのため本研究では、東アジアの国際共同観測ネットワークを活用し、上記2つの実態を解明することで健康被害の改善を目指す。
長距離輸送される二次有機生成エアロゾル(SOA:Secondary organic aerosol)の組成は、室内実験の結果から大きく2つの議論にわかれている。1つは、SOAはオリゴマーやフミン様物質のような比較的分子量の大きい難分解性の有機物が主要成分であり、長距離輸送中に生成される。もう一つは、SOAであるオリゴマーやフミン様物質は長距離輸送される間にオゾンによる酸化や光化学酸化反応によって分解が促進され低分子化し、さらに分解副産物も生成するというものである。上記2つの議論について実態を解明するため本研究では、これまで申請者が構築してきた東アジアの国際共同観測ネットワークを活用し、長距離輸送中のSOAがどのようなタイムスケールで生成や分解を起こすのかを解明する。1)試料採取:2022年と1月の冬季と4月の春季に辺戸岬に位置する国立環境研究所 辺戸岬 大気・エアロゾル観測ステーション(日本)とTouji島(中国)で2週間に1日1回のPM2.5の試料採取を行う予定だった。しかし、冬季の沖縄は新型コロナの感染拡大に伴って、辺戸岬で試料採取ができなくなったため、サンプリングはできなかった。その代わりに、長崎大学屋上でサンプリングを行った。春季は新型コロナの感染者が減少したためCHAAMSの使用が可能となり、中国、長崎と沖縄でサンプリングを行った。3地点での大気観測終了後は、沖縄のみ4月から6月まで週に1回のサンプリングを行った。2023年は1月と3月に2週間に1日1回のサンプリングを中国、長崎と沖縄の3地点で行った。2)SOAの分析手法の改良:大気試料をChen et al. (2016)の方法を用いてカラムにより有機成分を4分画し抽出した。今回の報告では沖縄で4月から6月まで週に1回のサンプリングした試料を用いて分画を行い、主要な官能基をFT-IRによって解析した。
2: おおむね順調に進展している
沖縄は他県と比べ新型コロナの感染拡大がしやすい状況で、試料採取や化学分析などができない時期などがあった。しかし、SOAの分析手法の改良をするために、大気試料をChen et al. (2016)の方法を用いてカラムにより有機成分を4分画し抽出した。今回の報告では沖縄で4月から6月まで週に1回のサンプリングした試料を用いて分画を行い、主要な官能基をFT-IRによって解析した。その結果、FT-IRでの研究結果は順調に進んでいる。次年度は、ESI/MSで有機物の分子量とLC/MSで有機物の組成を調べ、沖縄、長崎とTouji島の比較を行う。当初の計画通り、順調に分析を行っている状況である。
次年度は、ESI/MSで有機物の分子量とLC/MSで有機物の組成を調べ、沖縄、長崎とTouji島の比較を行う。当初の計画通り、順調に分析を行っている状況である。この分析ができてくると越境大気汚染による健康影響の研究へと発展できるため、国際共同研究加速基金に申請を行うい、今後の研究を発展させる準備を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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