研究課題/領域番号 |
22K12359
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
川東 正幸 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (60297794)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | バイオフィルム / 底質 / 土地利用 / 収着 / 汚染 / 沈降 / 堆積 / ごみ |
研究開始時の研究の概要 |
環境中に放出されたプラスチックごみは、表面劣化や破砕によるサイズ減少を伴ってマイクロプラスチック(MP)となる。MPは、環境中の天然有機物および鉱物に被覆されて見かけの比重が変化することによって、水中を沈降する可能性が指摘されている。しかし、その過程について実際の環境からの知見が得られていない。このMPの河床への沈降は、陸域で発生したMP量と海洋や河口域で推定されるMP量の間でバランスが取れない実態を説明しうる可能性がある。本研究は、都市を通過する河川におけるMP沈降量を河床堆積物中MP量から推定し、流域での発生量と蓄積量の関係を明らかにし、陸域でのMPの動態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
河川流域に発生したプラスチックごみは移動中に光、温度変化の影響や衝撃による劣化に伴ってサイズを減少させると同時に環境中の有機・無機コロイド物質を収着して表面特性や物性が変化する。この特性変化はプラスチックの移動・集積過程に影響するだけでなく、表面への異質物質の収着移動にも関与する。本研究では、21世紀以降人口増加と都市化が世界で最も著しい都市のひとつであるモンゴル国ウランバートルの市街地を対象に実施する研究であり、これまでの研究成果と合わせてプラスチックごみの動態について総合的に解釈を試みる研究である。初年度は、流域の土地利用が異なる地域を対象に環境中のプラスチックを河岸、河床、河川流水の3領域から採取し、それらの分布組成について上流から下流まで検討した。プラスチック組成、サイズ組成が採取地点によって異なることは従来からわかっていることであったが、既往データと数量および組成が異なることから発生源における土地利用や人口密度などにおける変動の影響を受けていることが推測された。現在、流域の土地利用との関係を検討中である。また、プラスチック表面のバイオフィルムの構成成分が採取地点によって異なり、主たる構成成分の組成によって分類することができた。この成果は学術誌に公表することができた。新知見としては、いずれの調査地点においても各採取領域でプラスチック組成が全く異なることが分かった。この相違は、それぞれの領域に存在するプラスチックの移動過程を反映しているものと考えられ、現在、表面特性や劣化程度から検討中である。これらの調査および分析結果についてマイクロプラスチックを対象とした国際会議で発表し、陸域でのプラスチック分布の発表が少ない中で組成のモニタリングデータから動態解析を行った研究として一定の評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モンゴル国内のトール川において首都ウランバートルの市街地を含み、上流から下流に調査地点を設けて、河岸、河床および河川中において調査・試料採取を実施した。河岸のプラスチック分布は上流から下流へMega, Macro, Meso, Microのいずれのサイズにおいても増加傾向が認められた。尚且つ、Form, Fiber, Film, Fragmentの各タイプも数量は増加傾向にあるものの、割合は変化する傾向が認められた。それらの分布とプラスチックタイプまたはサイズは支流と本流でも異なっており、支流では本流に合流するまでの距離が短いことと支流沿いの人口分布が密でないためにプラスチックが破砕されておらず大きなサイズ割合が高く且つFilmタイプが多く認められた。圧倒的に多く存在するプラスチックはFormタイプのMicroサイズであった。この結果は、当対象地の従来の調査結果と一致している。また、河川調査では流速と流下プラスチックをモニタリングしたため、河川フラックスと流下プラスチックのフラックスを算出できた。河川本流ではプラスチックフラックスも上流から下流へ増加する傾向が認められたものの、その組成は一様ではなく、採取地点の特徴を反映しているものと考えらえれた。流下プラスチックではMicroサイズが主体であり、それらはFilmとFormタイプで占められた。一方、現地採取した河床堆積物においては、どの地点においてもMicroサイズが主体であり、タイプも多様であったがある程度の規則性があると考えられた。それは、組成の類似性が採取地点において共通していることである。この組成変化は移動する過程でのプラスチック分別が生じているものとして解釈された。現地で採取した試料のスペクトル解析結果からはプラスチック材料のスペクトルから変化が確認され、表面劣化に由来することが推測された。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロプラスチックの動態はその材料特性に依存しつつも、表面特性にも依存する。プラスチック表面は実に多様であり、有機・無機成分が収着している場合、生物痕がある場合、プラスチックが劣化している場合がある。これらの表面の変化は周辺環境の影響を受けることが予測されるが、異なる環境とプラスチック表面の関係について十分検討されていない。これまで、都市化が顕著なモンゴルの都市河川を対象に研究を進めてきた。2年目には日本国内において、河川沿いおよび海岸域のプラスチックから検討する。日本国内のプラスチックについて表面に収着した物質を特徴づける研究は行われていない。流域の土地利用および植生分布は供給される有機物の質に影響する。また、土地利用は供給される鉱物に影響することから、モンゴルで得た結果と比較することで、気候帯や土地利用がプラスチックの動態に及ぼす影響として解釈できる。国内では土地利用と気候帯が太平洋側と日本海側で異なるために、その両者を流域に有する河川と河口域を対象に調査・研究を実施する予定である。日本では、上流からのプラスチックごみの流出が少ないために河岸のプラスチックごみは多くない。しかし、海岸には多くの破砕されたプラスチックが広く分布しており、それらが水位の変化に伴って河口域を河川の上流に移動する場合がある。海岸沿いと河口域のプラスチックを対象に分布、組成およびそれらの表面特性を分析する。それらの結果から異なる環境がもたらす表面特性の変化について解釈する。上流から供給されるプラスチックと異なり、藻類由来の有機物特徴を有するバイオフィルムが検出されることを推測している。収着した有機物特性の違いはプラスチックの物性やさらなる経時的な劣化に影響を及ぼす性質としてマイクロプラスチックの分配に影響することを予測している。
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