研究課題/領域番号 |
22K12371
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋山 秋梅 (張秋梅) 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00260604)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 酸化ストレス / DNA 修復 / 線虫C.elegans / ヒト培養細胞 / ミトコンドリア / 放射線 / 酸化ストレス防御 / DNA修復 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線や活性酸素から細胞を守ることは, 生物の生死にとって極めて重要である。本研究は、①ヒト細胞ミトコンドリアで働く酸化DNA修復酵素OGG1-2a, 酸化還元酵素GLRX2の放射線応答・酸化ストレス防御における役割を解明する。さらに, 酸化ストレス抵抗性タンパク質OXR1の相互作用するタンパク質の同定を行う。②線虫(C.elegans) DNA修復因子の同定と役割を解明する。DNA修復や損傷応答因子の胚発生, 生殖・成長, 寿命, 器官形成, 運動, 記憶, 次世代への影響を解明する。
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研究実績の概要 |
電離放射線や細胞の代謝活動で生成する活性酸素種(ROS)は細胞に強い酸化反応を引き起こす作用がある。本研究では、酸化防御・DNA修復因子の細胞や個体での役割の解明を目指している。本年度は、以下五件の成果を上げた。 (1)一昨年度よりミトコンドリアで酸化DNA損傷8-oxoGを修復する酵素OGG1-2aの高発現ヒト培養細胞株を樹立し始めたが、本年度は候補となる複数細胞clone、その細胞内OGG1-2aの発現量の解析、gamma線感受性、細胞増殖への影響、酸素依存性、核DNAへの影響を調べた。(2)酸化DNA修復酵素KsgAのDNA結合domainを解明するため、KsgA抗体の精製を行った。抗体を使用してKsgA全長、KsgAのN末端遺伝子欠損とC末端遺伝子欠損のplasmidをそれぞれ大腸菌mutMmutYksgA欠損株に導入した時の発現量を比較した。得られた結果は論文として国際英文誌で公表した。(3)非分裂期線虫BERなど変異株とatm、 ced-1、daf-16変異株の超高線量放射線への応答解析を行なった。欠損株を用いて3000Gyのgamma線あるいはCarbon-beamで照射を行い、運動への影響や回復有無を観察した。(4)分裂期である線虫(C.elegans)(胚発生時期)塩基除去修復(BER)変異株及び二重変異株においてDNA損傷剤の胚発生へ影響を調べた、BER欠損株孵化時の細胞死を蛍光染色観察で行った。その一部の成果は日本分子生物学会で発表した。(5)ヒト細胞における酸化タンパク質を還元する酵素GLRX1を過剰発現する細胞株の樹立を行ったが、得られた細胞株を用いて、過剰発現細胞の放射線の他、酸素の影響、H2O2などの酸化ストレス感受性、核DNA損傷の有無についての解析を更に確認・解析実験を行った。得られた成果の一部は国際学会(ATW)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)一昨年度より、ミトコンドリアで酸化DNA損傷8-oxoGを修復する酵素OGG1-2の高発現ヒト培養細胞株の樹立を開始したが、本年度はOGG1-2aの細胞内の発現量を解析するために多数の細胞候補よりRNAを回収し、RT-semi-q-PCR方法で発現量の同定を行うことで、複数高発現細胞cloneを得られた。候補細胞株のgamma線感受性、細胞増殖への影響、核DNAへの影響を調べた。細胞内酸化ストレスの蓄積の測定も予備実験を行なっている、概ね順調に進展している。 (2)酸化DNA修復酵素KsgAのDNA結合domainを解明するためにKsgA抗体の精製を行った。投稿論文への追加実験の要求に応えられ、得られた結果は国際英文誌での公表に至った。この項目について目標達成に至った。 (3)非分裂期線虫の超高線量放射線への運動低下と回復は難題であるが、欠損株を用いて3000Gyの放射線照射を行い、回復に関連する遺伝子の同定に絞った。概ね順調に進展している。 (4)分裂期C.elegans (胚発生時期)である塩基除去修復(BER)変異株おいてDNA損傷剤の孵化時の影響を細胞レベルで観察する方法の開発、蛍光染色方法を見出した。今後の研究発展に期待できる。 (5)還元する酵素GLRX1を過剰発現する細胞株の核DNA損傷の有無についての解析から、GLRX1の発現量の変化は細胞全体に影響を与えるという新知見を得られた。成果の一部は国際学会(ATW)で発表した。この研究の一部は新型コロナ感染症による制限の影響で予定していた学内他部門での低線量率照射実験の実施ができなかった。少し遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ミトコンドリアDNA欠損細胞 Roh0 細胞を作成。 ミトコンドリアで過剰発現するOGG1-2a細胞が放射線感性であることが確認されており、ミトコンドリアDNA欠損Roh0細胞の作成を進めていきたい。 (2)OGG1-2a高発現細胞の放射線や活性酸素によるミトコンドリアへの影響、ミトコンドリアの形態観察、ATP測定、MitoSoxやDCFHを用いたROS検出、細胞死apoptosisなどの解析を行う。 (3)非分裂期各種欠損株を用いて線虫の運動への高線量放射線が及ぼす影響、データ解析に力を入れていきたい。 (4)GLRX1欠損細胞と高発現細胞の低線量率放射線への感受性を調べる。 (5)ヒトOXR1タンパク質と結合する新規タンパク質の同定について候補となるタンパク質のplasmidを準備し、大腸菌中にタンパク質を発現させ、 精製したタンパク質を用いて双方を反応させ、抗体を用いて相互作用するタンパク質を検出する。
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