研究課題/領域番号 |
22K12374
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
津田 雅貴 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 室長 (00734104)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | DNA二本鎖切断 / DNA double-strand break |
研究開始時の研究の概要 |
放射線は、DNA二本鎖切断(DSB)を誘発しゲノムDNAに重篤な損傷を与える。これまでに、多くの先行研究により放射線誘発DSBの修復機構の詳細が明らかにされた。一方、抗がん剤として使われる放射線類似作用物質もDSBを生成することが知られており、その修復機構は放射線誘発DSBと同じと考えられている。本研究では、放射線および放射線類似作用物質が誘発するDSBの修復経路の違いを明らかにする。
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研究実績の概要 |
トポイソメラーゼ1(TOP1)やトポイソメラーゼ2(TOP2)は、DNA複製や転写(遺伝子発現)の際に生じるDNAの超らせん構造を解消するために必須の酵素である。TOP1は一過的に1本鎖切断(single-strand break: SSB)、TOP2は2本鎖切断(double-strand break: DSB)を発生させることで超らせんを解消する。TOP1は反応中間体として、DNAの3'切断端と活性部位のチロシン残基が共有結合した複合体(TOP1 covalent complex: TOP1cc)を形成する。一方、TOP2はDNAの5'切断端と活性部位のチロシン残基が共有結合した複合体(TOP2 covalent complex: TOP2cc)を形成する。Tyrosyl-DNA phosphodiesterase (TDP) 1は、DNAのねじれを解消する酵素であるトポイソメラーゼ(TOP)1がDNAの3'リン酸末端に不可逆的にトラップされた反応中間体を除去する酵素である。一方、TDP2は、TOP2がDNAの5'リン酸末端に不可逆的にトラップされた反応中間体を除去する酵素である。これまで、研究代表者は、TDP1・TDP2が、放射線誘発および放射線類似作用物質誘発DSBの修復に関与するかどうかを調べ、これらの酵素が放射線類似作用物質誘発DSBの修復に関与することを明らかにしてきた。2022年度は、TDP1やTDP2が、放射線類似作用物質誘発DSBにおいてどのようなDNA損傷の修復を行なっているのかを生化学的に調べるために、大腸菌を用いて発現システムを利用した。精製したTDP1は、3'末端に結合したチロシン残基の除去を行い活性があった。一方、精製したTDP2は、5'末端に結合したチロシン残基の活性があった。従って、これらの酵素の精製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、放射線類似作用物質が誘発するDNA損傷のうち、どのDNA損傷がTDP1やTDP2が認識し、修復を行なっているのかを調べる為の準備を行った。具体的には、野生型TDP1および野生型TDP2のヒトのcDNAをpET16b プラスミドにクローニングし、それぞれのプラスミドをBL21(DE3)株にトランスフォーメーションし、IPTGで誘導させた。大腸菌を破砕し、ライセートからニッケルカラムを用いて精製した。SDS-PAGEを用いたCBB染色では、それぞれのタンパク質を高純度に精製できたことが分かった。この精製した酵素が、これまで知られている、TDP活性があるのかを調べるために、3'末端および5'末端にチロシンが結合したオリゴヌクレオチドを作製した。これらを用いて、精製TDP1および精製TDP2の酵素活性を試験間内で評価した。その結果、これらの酵素は既存の活性があることが分かった。また、2023年度に細胞内の3'-PGを特異的に標識する手法を確立する為に、野生型TK6に放射線類似作用物質を暴露し、塩化セシウム密度遠心勾配を用いてゲノムDNAを精製した。従って、研究計画通り、2023年度に実施する放射線類似作用物質が生成する様々なDNA損傷に対する酵素活性を調べることが可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
放射線類似作用物質は、DNA鎖切断の3'末端に3'グリコールリン酸(3'-PG)と呼ばれる損傷を生成する。そこで、TDP1やTDP2が3'-PGに反応するかどうかを調べる。具体的には、32Pで放射性標識した3'-PGを含むモデルDNA(化学合成)と2022年度に精製したTDP1・TDP2タンパク質をインキュベートし、生成物をポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析することにより3'-PGが除去されるか検討する。さらに、細胞内の3'-PG除去動態を解析する手法を確立する。具体的には、3'-PGを含むモデルDNAの3'末端カルボン酸をcarbodiimide/ NHSで活性化し、ビオチン標識する手法を考えている。すでに予備実験の結果から、標識効率は70%であることが分かっているが、反応時のNHS等の化合物反応量を調節することにより高効率に標識する手法を確立する。また、細胞内に精製した3'-PGも標識できるか検討を進める。すでに、2022年度に放射線類似作用物質を暴露した細胞から、CsCl密度遠心勾配を用いて精製したゲノムDNAを調整済みであるので、これを用いて、3'-PG標識できるか試みる。
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