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ヒト造血幹細胞における放射線誘発変異の全ゲノムシーケンスによる解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K12388
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分63020:放射線影響関連
研究機関公益財団法人放射線影響研究所

研究代表者

田邉 修  公益財団法人放射線影響研究所, バイオサンプル研究センター, センター長 (70221398)

研究分担者 松田 由喜子  公益財団法人放射線影響研究所, 分子生物科学部, 研究員 (10735301)
内村 有邦  公益財団法人放射線影響研究所, 分子生物科学部, 室長 (20513063)
吉田 健吾  公益財団法人放射線影響研究所, 分子生物科学部, 室長 (70443596)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワードDNA損傷 / 体細胞変異 / 変異シグネチャー / バイオドシメトリ / 晩発障害 / 悪性腫瘍 / クローン化 / 老化
研究開始時の研究の概要

原爆被爆者には放射線被ばくによって、ガンなどの病気が増加することが知られているが、その仕組みは明らかになっていない。この研究では、一般人と原爆被爆者から提供を受けた血液から、血液細胞の元となる造血幹細胞を一個ずつ単離して増殖させた後にDNAを抽出し、その塩基配列を分析することにより、1個の造血幹細胞に生涯に蓄積した変異をできる限り多く見つける。その結果の分析により、原爆放射線への被ばくにより生じた変異の数、種類などの特徴を明らかにすることにより、放射線被ばくによるガンなどの病気の増加の仕組みを明らかにするとともに、個人が生涯に被ばくした放射線の量を推定する方法の開発を目指す。

研究実績の概要

本研究の目的は、放射線被曝の晩発障害の分子メカニズムを明らかにすること、そして放射線特異的な体細胞変異シグネチャーを同定して新たなバイオドシメトリを開発することである。原爆被爆者には、悪性腫瘍や循環器疾患などの過剰リスクが観察されているが、その分子メカニズムは不明である。そのため本研究では、一般ボランティア及び原爆被爆者の造血幹細胞における体細胞変異を全ゲノム規模で同定して被曝線量との関連を分析する。実験方法としては、末梢血単核球より造血幹細胞を単離し、試験管内で分化増殖させて細胞クローンを得る。これら造血幹細胞由来クローンとバルクの単核球試料から抽出したDNAの全ゲノムシーケンス解析を行って変異を同定する。これらの変異のうち、そのアレル比率が造血幹細胞由来クローンで高く、バルク試料で低い変異を体細胞変異と判断する。これらの解析結果をもとに、造血幹細胞における、塩基置換、欠失、挿入、構造変異などの変異種類ごとの頻度及び特徴と、被曝線量との関連性を明らかにする。令和5年度には、ボランティアより提供された末梢血液から密度勾配遠心によって単核球を分離し、液体窒素中で凍結保存後に解凍し、セルソーターを用いて蛍光標識抗体の細胞表面抗原への結合性に基づき、分化マーカー陰性/ CD34+/ CD38-/ CD45RA-/ CD90+ などで定義される造血幹細胞を分離した。その結果として、1 mLの血液から平均190万個の単核球が分離され、うち約70個が造血幹細胞として同定単離された。これは単核球のわずか0.004%に相当した。これら単離された造血幹細胞は、各種サイトカインを添加した半固形培地上での培養によるコロニー形成法により、多系統への分化能と十分な増殖能を示し、全ゲノムシーケンス解析に必要なDNA量が抽出可能であった。これにより造血幹細胞の体細胞変異を同定するための実験プロトコルを確立することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、一般ボランティアの血液試料と、推定被曝線量2 Gy以上または5 mGy以下の原爆被爆者の長期凍結保管された末梢血単核球試料より、セルソーターを用いて造血幹細胞を単離して各種サイトカインを添加した半固形培地上で分化増殖させて細胞クローンを得る。これら造血幹細胞由来クローンと分画前のバルク単核球試料からDNAを抽出して全ゲノムシーケンス解析を行う。参照ゲノムシーケンスとの比較により同定した変異のうち、アレル比率が造血幹細胞由来クローンで高く、バルク試料で低い変異を体細胞変異と判断する。始めに、ボランティアと線量5 mGy以下の被爆者のシーケンスデータより、造血幹細胞における自然発生の体細胞変異の種類、頻度、特徴とそれらの個人差を明らかにする。次に、線量2 Gy以上の被爆者からのデータより、線量に応じた変異頻度の増加や、放射線特異的な変異シグネチャーの有無を明らかにして、放射線により生じた体細胞変異の特徴を明らかにする。
本研究は、ボランティア及び原爆被爆者から提供された血液試料を用いたヒトゲノム解析研究であるため、国の定める「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守して行う必要がある。このため、令和4年度には、採血、血液試料の調製と保管、造血幹細胞の単離と培養、DNA抽出などの実験手順に関する研究計画書と説明同意文書を作成して倫理審査委員会の承認を得た。さらに令和5年度には、全ゲノムシーケンス解析に関する詳細な研究計画書と説明同意文書を作成して放射線影響研究所内の研究計画審査委員会の審査を受けた。また、セルソーターを用いた造血幹細胞の単離と培養、DNA抽出などの実験条件の最適化や、全ゲノムシーケンス解析データの分析条件の最適化などの予備的研究を行った。当初計画よりもこれらに時間を要したことが、進捗状況にやや遅れがある理由である。

今後の研究の推進方策

今後は放射線被曝による体細胞変異の頻度と特徴に関する研究を以下の通り推進する。
1)造血幹細胞のクローン化: 一般ボランティア2人より血液試料の提供を受けて、単核球を分離して研究に使用する。また、末梢血単核球試料が放射線影響研究所に凍結保存されている被爆者のうち、推定被曝線量2 Gy以上の5人と、低線量被曝(5 mGy以下)の2人を選択し、その試料を研究に使用する。これら単核球試料より、令和5年度に確立した実験プロトコルに従って、セルソーターを用いて造血幹細胞を単離し、各種サイトカインを添加した半固形培地上で分化増殖させて50万個以上の細胞からなるクローンを取得する。
2)体細胞変異の同定と検証: 各試料提供者1人あたり少なくとも2個の造血幹細胞由来クローンと、分画する前のバルクの単核球試料の一部からDNAを抽出して、イルミナシーケンサーによる全ゲノムシーケンス解析を外部委託にて行う。シーケンス解析結果を参照ゲノムシーケンスと比較することにより変異を同定し、そのアレル比率が造血幹細胞由来クローンで高く、バルク試料で低い変異を体細胞変異とみなす。これらのデータをもとに塩基置換、欠失、挿入、構造変異などの体細胞変異を同定し、その頻度と特徴を分析する。同定された体細胞変異の検証のために、各DNA試料よりPCRによって変異部分を増幅して高深度の標的シーケンス解析を行う。
3)体細胞変異への放射線影響の解析: 始めにボランティアと低被曝線量の被爆者からのデータの解析により、ヒト造血幹細胞における自然発生の体細胞変異の種類、頻度、特徴とそれらの個人差を明らかにする。次に、推定被曝線量2 Gy以上の被爆者からのデータの分析により、線量に応じた変異頻度の増加や、放射線被曝に特異的な変異シグネチャーの有無を明らかにして、ヒト体細胞における放射線誘発変異の特徴を明らかにする。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Spectra and characteristics of somatic mutations induced by ionizing radiation in hematopoietic stem cells2023

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Yukiko、Uchimura Arikuni、Satoh Yasunari、Kato Naohiro、Toshishige Masaaki、Kajimura Junko、Hamasaki Kanya、Yoshida Kengo、Hayashi Tomonori、Noda Asao、Tanabe Osamu
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 120 号: 15

    • DOI

      10.1073/pnas.2216550120

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 原爆被爆者及び被爆二世のバイオレポジトリ2023

    • 著者名/発表者名
      田邉修
    • 学会等名
      第63回原子爆弾後障害研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Genome-wide frequencies and signatures of somatic mutations introduced by whole-body X-irradiation in mouse long-term hematopoietic stem cells2023

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Y, Uchimura A, Satoh Y, Kato N, Toshishige M, Kajimura J, Hamasaki K, Yoshida K, Hayashi T, Noda A, Tanabe O
    • 学会等名
      17th International Congress for Radiation Research
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Genome-wide analysis of radiation-induced somatic mutations in mouse long-term hematopoietic stem cells2023

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Y, Uchimura A, Satoh Y, Kato N, Toshishige M, Kume K, Kajimura J, Hamasaki K, Yoshida K, Hayashi T, Noda A, Tanabe O
    • 学会等名
      73rd Annual Meeting of the American Society of Human Genetics
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] X線照射によりマウス造血幹細胞に誘発される体細胞変異とクローン性増殖2023

    • 著者名/発表者名
      松田由喜子、内村有邦、佐藤康成、加藤直広、利重匡亮、梶村順子、濱崎幹也、吉田健吾、林奉権、野田朝男、田邉修
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第66会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 全身X線照射後のマウス造血幹細胞の体細胞変異とクローン動態の全ゲノムシーケンスによる解析2023

    • 著者名/発表者名
      松田由喜子、内村有邦、佐藤康成、加藤直広、利重匡亮、梶村順子、濱崎幹也、吉田健吾、林奉権、野田朝男、田邉修
    • 学会等名
      日本環境変異原ゲノム学会第52回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] X線照射によりマウス造血幹細胞に誘導される体細胞変異の頻度と特徴2022

    • 著者名/発表者名
      松田由喜子、内村有邦、佐藤康成、加藤直広、利重匡亮、梶村順子、久保美子、山岡美佳、濱崎幹也、吉田健吾、野田朝男、田邉修
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第 65 回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] X 線照射マウスの造血幹細胞における体細胞変異の頻度と特徴2022

    • 著者名/発表者名
      田邉修、松田由喜子
    • 学会等名
      日本環境変異原ゲノム学会第51回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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