研究課題/領域番号 |
22K12397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63030:化学物質影響関連
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
石井 雄二 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 室長 (70544881)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アセトアミド / 小核 / クロモスリプシス / クロモアナジェネシス / 肝発がん |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は食品汚染物質であるアセトアミドがラット肝臓に特徴的な大型小核を高頻度に誘発することを明らかにし,そのラット肝発がんがクロモアナジェネシスによる染色体再構成によって生じる可能性を見出した.しかし,発がんのキーイベントである大型小核の形成機序は明らかになっていない.本研究では,「アセトアミドの大型小核が二核肝細胞に由来する」という仮説のもとにその機序を解明し,その発がん過程の全容を明らかにすることで,クロモアナジェネシスという新たな機序を示す化学発がん分類の確立とそれら環境化学物質のヒト健康に対するリスク評価に展開するための足掛かりをつかむ.
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研究実績の概要 |
食品汚染物質であるアセトアミドのラット肝発がんのキーイベントである大型小核の形成機序における細胞増殖の関与の有無を明らかにするため、BrdUを24時間持続的に投与可能な浸透圧ポンプをF344ラットの腹腔内に埋め込み、100 mg/kg/dayの用量で投与した。2時間後、アセトアミドを3750 mg/kg体重の用量で単回投与し、投与後24及び48時間後の肝臓について、免疫組織学的解析を実施した。その結果、アセトアミドの大型小核の原因である核膜異常を示すBAF陽性の核においてBrdU陽性像は見られず、アセトアミドが誘発する核の形態異常及び大型小核の形成に細胞分裂が寄与していないことを確認した。さらに、昨年度実施したアセトアミド単回投与後のラット肝臓について、LC-Orbitrap MSを用いたメタボロミクス解析を実施した結果、アセトアミド由来の代謝物Xの生成が明かとなり、そのピーク面積の変化と核の形態変化には関連性が見られた。また、F344ラットの初代肝細胞を調整し、アセトアミド処理後の核の形態観察を行った結果、72時間処理により、in vivoと同様の特徴を示す大型小核の形成を再現することができた。アセトアミドの大型小核形成に関わる構造活性相関を明らかにするため、メチルカルバメート、N-ヒドロキシアセトアミド、N-メチルアセトアミド、プロピオンアミド及びグリコールアミドをF344ラットに投与した。肝臓の病理組織学的検索ならびに肝臓小核試験の結果、プロピオンアミドでは大型小核の形成が確認されたのに対し、その他物質において大型小核の形成は見られなかった。これらの結果から、大型小核の形成は第一級アルキルアミド化合物に共通したイベントであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画は全て実施し、大型小核が二核肝細胞から形成されるという仮説に対し,それを裏付けるためのデータを蓄積することができた.一方、新たに大型小核形成に寄与すると思われるアセトアミドの代謝物の存在が確認されたことから、機序解明の一端として代謝物に関する追加の研究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究で明らかになったアセトアミドの代謝物Xのピーク面積の変化と核の形態変化には関連性が見られたことから、代謝物Xの単離・精製とNMRによる構造解析を実施する。さらに、代謝物XをF344ラットから調整した初代肝細胞に処理し、大型小核の形成との関連を検討する。In vitro試験系ではF344ラットから調整した初代肝細胞において大型小核の形成が確認されたことから、タイムラプス観察装置による小核形成過程の撮影を試みる。構造活性相関についてはさらにブチルアミド、イソブチルアミド、メチルカルバメート及びエチルカルバメートについて大型小核形成能の検討を行い、アルキル側鎖とエーテルが及ぼす影響を明らかにする。
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