研究課題/領域番号 |
22K12398
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63030:化学物質影響関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田部井 陽介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40555083)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ナノ粒子 / エフェロサイトーシス / 上皮間葉転換 / 肺線維化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ナノ粒子暴露によって引き起こされる肺線維化の発症メカニズムを明らかにする。特に、好中球のクリアランス阻害と上皮間葉転換誘導による線維化の発症機序を細胞間コミュニケーションの視点から解析を行う。通常、ナノ粒子等の異物侵入後の好中球のクリアランスには、マクロファージによる好中球の貪食が必要不可欠である。この貪食作用の阻害は、動脈硬化や悪性腫瘍形成等を引き起こすとされるが、ナノ粒子による肺線維化との関連性を解析した報告は皆無である。そこで、エフェロサイトーシス阻害によって起こる局所的な慢性炎症が、上皮間葉転換を介して肺の線維化を引き起こすとの仮説を立て、多角的な検証を実施する。
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研究実績の概要 |
ナノ粒子は、幅広い分野での応用が期待される一方、その微小物質であるという形体的特徴から、健康への影響が懸念されている。我々は、これまで、特定のナノ粒子の暴露によって、マクロファージによる死細胞のクリアランスが阻害されることを見出している。死細胞のクリアランス阻害は動脈硬化や悪性腫瘍形成等を引き起こすとされるが、ナノ粒子による肺線維化との関連性は未解明であった。そこで、本研究では、複数種類のナノ粒子を用い、肺線維化に関与するとされる上皮間葉転換誘導との関連性を解析することで、ナノ粒子による生体影響を明らかにすることを目的とした。複数種類のナノ粒子をマクロファージに暴露したところ、特定の種類のサイトカインの発現が誘導されることが明らかとなった。さらに、生化学的解析の結果、これらサイトカインのうち、少なくともIL-1betaが上皮細胞の上皮間葉転換を誘導することを見出した。NLRP3(NLR family pyrin domain containing 3)ノックダウンマクロファージにおいては、これらサイトカインの誘導が認められなかったことから、ナノ粒子によるIL1betaの発現誘導はインフラマソームを介していることが示唆された。興味深いことに、生体において肺線維化を引き起こすとされるナノ粒子においては、IL-1beta依存的な上皮間葉転換が特に強く誘導される結果が得られた。以上の結果から、ナノ粒子曝露によって生じる肺線維化は、マクロファージから放出されたIL-1betaによって上皮細胞に上皮間葉転換が誘導されることに起因する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特定のナノ粒子が、インフラマソーム依存的なIL-1betaの発現を促進し、さらに上皮細胞においてはIL-1beta依存的な上皮間葉転換が誘導されることを見出した。IL-1betaによる上皮間葉転換誘導メカニズムについては、未解明であるものの、当初設定した目標に対しては、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
特定のナノ粒子曝露によって蓄積されたIL-1betaが上皮間葉転換を誘導することが見いだされたものの、そのメカニズムについては、依然として不明な点が多い。そこで、IL-1betaによって誘導されるシグナル伝達経路に焦点を当て、生化学的、分子生物学的な解析を推進することで、メカニズムレベルでナノ粒子の生体影響を明らかにする。
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