研究課題/領域番号 |
22K12399
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63040:環境影響評価関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
平尾 茂一 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (30596060)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | トリチウム / 大気水蒸気 / HTO / 短期連続観測 / パッシブサンプリング / 大気拡散 / 環境動態 |
研究開始時の研究の概要 |
原子力関連施設周辺の大気中放射性核種の高い時間解像度での測定は、施設影響評価のために極めて重要である。施設周辺の大気水蒸気中トリチウム(H-3)観測では電源供給の問題から、任意の場所で観測が困難であった。そのため本研究では、商用電源不要で、短時間の連続観測が可能な観測装置を開発する。さらに本装置を用いて実環境で得られる時間・空間的に密な大気水蒸気中トリチウム濃度データに基づき、地理・気象条件および放出状況などが濃度変動に及ぼす影響を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、商用電源不要で短時間の連続観測が可能な観測装置(パッシブサンプリング装置)を開発し、実環境への適用可能性を検討するとともに、実際のトリチウム濃度の短時間変化をとらえ、その変動要因と大気放出の関係性を解明することを目的としている。 今年度は、初年度に引き続き大気水蒸気中トリチウムの捕集装置の開発と実環境での屋外観測を実施し、水蒸気中トリチウム(HTO)の大気拡散過程に関する研究を進めた。前年度に提案した試作機の性能試験、その後実環境における試験観測を実施した。電源・重量の制約および観測継続時間について検討した結果、屋外空気の水分量に応じてエアポンプの流量を調節する方針が得られた。逆止弁の使用によって、空気の導通が無い時間に外部水蒸気の混入は無視できることを確認し、本装置停止後に一定期間を屋外に設置しても問題がないことを示した。実環境における動作確認のために、東電福島第一原発の周辺にて観測を行い、流量、捕集時間の設定方針が概ね妥当であることが分かった。ただし、冬季であっても日内で湿度が変動する場合、水蒸気捕集量が想定よりも過剰になるため、より保守的な流量設定が必要であることが分かった。また、全ての現地観測において北寄りの風から時計回りに風向が変化するパターンで、大気水蒸気中トリチウム濃度が短期間に増加する結果が得られた。この増加パターンは、観測地点の風上が原発であることから、原発から水蒸気状トリチウムの大気放出が示唆される。これまで月毎の大気HTO観測結果に基づく仮説、原発からの大気放出の発生、を支持する結果であった。以上の成果をまとめ、論文を投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1) 観測装置の開発、2) 観測装置の実環境への適用、3) 大気中HTO変動の解明を実施予定であり、概ね順調に進展している。 1) 観測装置の開発: 昨年度に続き今年度で基本的なシステムを開発済みである。 2) 観測装置の実環境への適用: 今年度、試作機を用いて実際に観測を開始した。大気水蒸気中HTO濃度と現地の気象項目(風向、風速、温度、湿度)を同時に観測できることを確認した。 3) 大気中HTO変動の解明: 大気放出源付近のHTO濃度は、気象条件に大きく影響を受け時間変動することが予想される。これまでの実験によって、HTO濃度の短期時間変化と風向風速の関係が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでに開発した商用電源不要で短時間の連続観測が可能な観測装置を利用し、実環境での大気中HTO濃度の短期変動の観測を遂行する。大気中HTO濃度の変動要因の特定のため、大気輸送モデルを用いた解析を実施を予定している。大気輸送モデルにはトリチウムの大気放出源情報の入力が必要である。しかし大気放出場所および放出量の詳細はは不明である。そこで逆解析による手法で放出源情報を推定する手法を試みる。本年度はこの点について更に調査を進め、論文化を図る。
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