研究課題/領域番号 |
22K12400
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63040:環境影響評価関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 真哉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80370419)
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研究分担者 |
玉置 雅紀 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 室長 (00311324)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 低線量放射線 / 植物ゲノム / 植物培養細胞 / バイオモニタリング / DNA損傷応答 / 環境放射線 / 生物影響モニタリング / DNA修復 / 核内倍化 |
研究開始時の研究の概要 |
福島第一原子力発電所事故に起因する放射性物質汚染が原因となっている環境放射線上昇による生物影響が懸念されている。本研究では、超高線量下での未知の生物影響について、DNA損傷生成により上昇する「相同組み換え頻度」DNAの複製ミスで起こる「変異誘発頻度」と、DNA損傷生成の刺激により、細胞が肥大化する現象である「核内倍化頻度」を明らかにする。さらに3つの頻度をパラメータとする現地モニタリングを実施する。このことで、超高線量の環境放射線による植物への未知の生物影響が明らかになり、かつ野外での高精度な環境放射線影響モニタリングが実施可能となる。
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研究実績の概要 |
放射性物質が生活圏へ放出された福島第一原子力発電所事故から12年が経過し、当初と比較して放射線量も低減しつつある。しかし、空間線量が高く人体への影響が懸念される帰還困難区域 (9.5 μGy/h以上) では、長期にわたる放射線量の継続的な計測と影響モニタリングが必要になると考える。野外の放射性物質汚染については、空間線量や土壌・水質の直接測定が行われ、生体への蓄積も確認されている。しかし、蓄積した放射性物質が、生体内でどのような生物影響(DNA変異誘発など)を与えるか、定量的評価についての報告は少ない。本研究では、不明な点が多い、帰還困難区域内における環境放射線 (5.6μGy/h以下、9.5-16 μGy/h付近) の生体内での生物影響を明らかにするために、生物影響を定量的に評価可能と考えられる複数の指標による評価を試みる。 令和5年度は、複数のパラメータによる帰還困難区域での継続的な野外放射線モニタリングを実施することを目標として、遺伝子発現解析について検討を行った。 シロイヌナズナ野生型(Col-0)をMS寒天培地上で生育させ、植物体から胚軸を切り出し、カルス誘導(CIM)培地上で30日間培養し、カルス誘導を行った。得られたカルスは30日程度培養を行い、放射線曝露を行った。放射線曝露は、帰還困難区域内にて採取した放射性物質を含む土壌(線量率 約3.8μSv/h)を用いて、国立環境研究所内に設置されたチャンバーにて曝露を行った。24時間と168時間曝露後、カルスを回収し、凍結保存をおこなった。その後、総RNA抽出を行い、RNA-Seq解析に用いた。 その結果、24時間曝露と168時間曝露で計93遺伝子の発現変動が確認できた。GO解析では、DNA修復に関連した遺伝子は検出できなかったが、二次代謝関連遺伝子、ストレス応答関連遺伝子の発現変動が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度実施予定であった、カルスに対する放射線曝露と遺伝子発現解析については、材料となるカルス培養状態の不良と業務多忙のため、翌年度に実施を延期した。 令和5年度に実施した実験では、カルスの誘導と培養も順調に進み、放射線曝露、RNA-Seq解析と予定していた内容まで進めることができた。ただし、令和5年度をおこなった実験で使用した放射線量では、発現変動が見られた遺伝子群が少なかったため、複数の曝露条件にて実験を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、前年度実施したカルスに対する放射線曝露と遺伝子発現解析について複数の曝露条件にて実験を行う。具体的には、相同組み換え頻度に大きく変動が見られる10 μSv/h以上の曝露を行い、遺伝子発現解析を実施する。そのうち、大きく発現変動が見られる遺伝子が特定できたなら、特異的プライマーを作製して詳細な発現解析を行う。また、シロイヌナズナ植物体に対する曝露を行い、同様に遺伝子発現解析を実施する。 これらの結果を、年度内の学会発表等を予定している。 これまで得られている相同組み換え頻度・ゲノム変異頻度の評価結果をまとめ、学術論文としての投稿を進める。
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