研究実績の概要 |
【背景・目的】薬剤耐性菌は世界的に重要視されている公衆衛生上の問題の一つである. 薬剤耐性菌を減らす方法として,本研究では,環境に負荷を与えない 微生物ループの視点から,細菌の捕食者である原生生物を用いた捕食による薬剤耐性菌除去に着目した. 【方法】2種の繊毛虫 (Paramecium caudatum dCRT14b, Paramecium multimicronucleatum Y-2) と3種のESBL産生菌を用いて, ESBL産生菌に対する繊毛虫の捕食能力, 消化能力を評価した. さらに, 温度が捕食能力, 消化能力に影響を与えるか検証した. 【結果】2種のParameciumの捕食率は, 24時間後に全ての菌で90%を超えており, 捕食効果を確認した. Parameciumの食胞内での消化を評価するため, 2種のParameciumのGFP含有食胞のLysoTracker陽性率を比較した結果, 2種ともに消化が確認され, 陽性率はP. multimicronucleatum Y-2のほうがP. caudatum dCRT14bよりも高値を示した. Parameciumから排出された薬剤耐性遺伝子を検出するため, 細胞外DNAをリアルタイムPCRで解析した結果, 薬剤耐性遺伝子CTX-M-15の相対値は, P. multimicronucleatum Y-2では非存在群に比べて有意な減少を認めた. しかし, P. caudatum dCRT14bでは, 培養1日目の存在群において, 非存在群に比べ相対値が増加していた. 【考察】2種のParameciumはESBL産生菌を捕食消化することを明らかにした. さらに, P. multimicronucleatum Y-2は薬剤耐性菌だけでなく, 薬剤耐性遺伝子まで効率よく消化することも示された.
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