研究課題/領域番号 |
22K12418
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
伊藤 未希雄 東京工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (60722098)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ATR-SEIRAS / 自己組織化単分子層 (SAMs) / 分子構造 / 回転異性体 / 赤外スペクトルにおける指紋領域 / 土壌水分量センサー / 自己組織化単分子層 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、様々な種類の分子で被覆された金属基板を用いる非破壊で高感度な、分光計測の原理を用いた土壌中の水分その他の化学種のセンシング技術を開発する。本技術は、建設作業現場で発生した土壌の、原位置での安定化・無害化のための成分調査への応用を想定している。本技術で土壌水分含有量を分析することで、最適な土壌の安定化・無害化の条件を迅速に決定できるようになる。本手法の原理は、金属基板を被覆した分子の構造が、土壌中の化学的な環境により変化するのを、赤外分光により検出するものであり、既存の電気的な水分量等のセンサーと同等の感度で、かつ夾雑物質の影響がより少なくなることを目標としている。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は土壌などの固相と接した自己組織化単分子層 (SAM) の構造変化より、間接的に固相中の化学成分を分析することである。その技術を実現するために、SAMの周辺環境が構造に及ぼす影響をより詳細に理解する必要がある。
これまで様々な極性の溶媒に接したSAMの構造変化に関する知見が得られているが、SAMの分子構造によって、変化の程度は異なると予想され、適切な応答性をもつ分子を見つけることは重要と考えた。そこで様々な鎖長をもつアルカンチオールSAMの溶媒極性による構造変化の様子を明らかにすることを目指した。 銀基板上に炭素数5から12の直鎖アルカンチオールSAMを作製し、SAMを水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、n-ヘキサン中に浸漬して表面増強ラマン散乱を測定した。ラマンスペクトルにはSAM末端のC-S結合の伸縮振動に帰属されるピークが500 - 700 cm-1の領域に観察されるが、C-S結合の部位の回転異性体(トランス型、ゴーシュ型)に応じた2本のピークとして観察され、それらの強度比から回転異性体の割合を推定することができる。これまでの研究で極性の低い溶媒中ほどS原子がアルキル鎖に対してゴーシュ位にある異性体の割合が高まることがわかっているが、いずれの溶媒中でもSAMの分子鎖長が長くなるほどゴーシュ型の構造の割合が増える事が示された。一般的にオールトランス構造はアルキル鎖の最安定構造であり、アルキル鎖のC-C結合は鎖長が長くなるほどトランス構造を取ることが知られているが、本研究のC-S結合に関する結果はC-C結合に関する知見とは逆の傾向を示した。Ag-S-C結合の結合角および隣接するSAMのS原子間の距離が、SAMの基部のみゴーシュ構造構造を取らせる要因であると考えているが、詳細な分子構造についてはさらに検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SAMの構造変化と、SAMと接している固相の化学成分の相関を得る方法については、まだ実証実験ができていない。溶媒と接するSAMの構造変化と、鎖長の関係について新たな知見が得られたが、構造変化をうまく説明するには至っていない。 以上の様に新しい知見は得られたものの、それが本研究が目指す課題の解決には至っておらず、本研究はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
SAMの構造評価を全反射表面増強赤外吸収分光法 (ATR-SEIRAS) で実現する。ゲルマニウム等の指紋領域で透過率の高い材料を光学基板として用い、得られた赤外スペクトルを従来のラマンスペクトルを比較して検討する。昨年度検討を始めたマイクロATRプリズムアレイについても検討を続ける。 赤外またはラマン分光法を用いて含水高分子膜等と接したSAMの構造の評価し、高分子膜の含水量に応じたSAMが構造変化を観察できることを実証する。 以上の知見を踏まえて、土壌と接したSAMの測定から土壌の成分分析を行えることを実証する。
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