研究課題/領域番号 |
22K12419
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
江口 哲也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 上級研究員 (40710356)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 放射性セシウム / 安定セシウム / カリウム / 固液分配 / 土壌診断 / 潜在リスク評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、交換性Kと土壌溶液Kの固液分配(存在比)を推定する方法(Quantity/Intensity relationship analysis)により、風乾土から土壌溶液K濃度を推定する。さらに、RCsの代替として安定Csの固液分配を評価することにより、土壌溶液RCs濃度を推定する。このことにより、放射性Cs移行リスク評価を、現行の交換性カリ・全放射性Cs濃度に基づく評価から、土壌溶液のK・放射性RCs濃度に基づく評価へと高精度化させる。
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研究実績の概要 |
令和4年度のCs-133を添加したポット栽培試験の結果から、交換性Cs-133の固液分配係数を交換性Cs-137に当てはめることにより土壌溶液のCs-137濃度の推定が可能であり、さらに、微量のCs-133添加が作物へのCs-137移行リスクの高い土壌のスクリーニングに有効であることが示唆された。そのため、令和5年度はダイズの大規模ポット栽培試験を行い、土壌溶液K濃度と推定Cs-137濃度から子実のCs-137濃度を求める計算式の確立を目指すとともに、過年度のポット栽培試験のデータ解析を進めた。 ダイズの大規模ポット栽培おいては、土壌溶液のCs-133濃度のばらつきが大きく土壌溶液のCs-137濃度を推定することができなかった。ダイズ子実のCs-133濃度およびCs-137濃度のばらつきは小さかったため、バルク土壌の交換性Cs-133の固液分配評価が子実のCs-137濃度推定に有効である可能性が考えられる。 Cs-137移行高リスク土壌のスクリーニングについては、添加したCs-133の栽培後土壌の交換性割合がCs-137の交換性割合と高い正の相関(r = 0.918)にあったことから、Cs-133の添加は高リスク土壌のスクリーニングのみならずCs-137の環境動態解明においても有用であると考えられた。また、乾湿を30回繰り返しエージングを再現した土壌では、乾湿処理の間に有機態窒素の無機化が起こり植物の生育が促進されていたことが確認された。このことにより、栽培後土壌の交換性カリ含量が乾湿処理を行わなかった土壌に比べて低くなり、エージングの添加Cs-133可給性への影響を過小評価している可能性が考えられた。そのため、エージングの影響を評価するうえでは、カリ施肥水準の異なる複数の処理を設ける必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダイズの大規模ポット栽培において土壌溶液のCs-133濃度が大きくばらついたため土壌溶液のCs-137濃度の推定を行うことができず、土壌溶液のK濃度と推定Cs-137濃度から子実のCs-137濃度を予測するという計画に遅れが生じている。しかしながら、ダイズ子実のCs-133濃度およびCs-137濃度のばらつきは小さかったため、バルク土壌の分析により土壌溶液の代表的な組成を推定し子実のCs-137濃度を予測することが可能であると期待される。 一方で、微量のCs-133添加は想定以上にCs-137の挙動を再現し、作物へのCs-137移行リスクが高い土壌のスクリーニングのみならず、環境中でのCs-137の動態評価などの研究への応用が期待される。 以上のことから本研究は、一部で計画に遅れが生じているものの総じて順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
土壌溶液のCs-133濃度のばらつきが大きく、Cs-137濃度の推定ができなかったことから、バルク土壌のQuantity/Intensity Relationship Analysis (Q/I解析)により土壌溶液への交換性Cs-133の分配を評価し、土壌溶液Cs-137濃度推定をおこなう。Q/I解析はKの土壌溶液への分配評価に広く用いられており、Kと同じメカニズムにより挙動が決定されるCs-133ひいてはCs-137の土壌溶液への分配評価にも有効であると考えられる。 ゼオライト施用を施用したポット栽培によるK溶脱低減試験については、当初よりQ/I解析によってゼオライト施用量を決定する計画であったため変更なく行う。
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