研究課題/領域番号 |
22K12431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
秋濱 一弘 日本大学, 生産工学部, 教授 (30394547)
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研究分担者 |
高橋 栄一 日本大学, 生産工学部, 教授 (90357369)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | すす / 粒径分布 / マイクロフローリアクタ / セクショナル法 / 化学反応計算 / プロパン / ガソリン機関 / 化学計算計算 / 燃焼 / ナノ粒子 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
炭化水素燃料の燃焼により生成する粒子状物質(PM)に関して,主成分であるすすの粒径分布が予測できる「すす粒子生成モデル」の構築を目的とする.詳細な気相反応モデルに粒子生成・成長にセクショナル法を組み合わせて粒径分布を計算するが,特に粒子化過程での反応定数など検討する必要がる.そこで流動が非常に単純なマイクロフローリアクタを用い,反応時間をサブ秒程度(粒子分布計算モデル中のパラメータの僅かな変化に対して粒径分布が大きく変化するパラメータ変更感度が高い実験条件)に設定し,実験データとの比較によりモデル改善を行う.特に自動車分野での活用を念頭にガソリン模擬燃料に対応したモデルの構築を狙う.
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研究実績の概要 |
電気炉で加熱される内径2mm外径4mmの石英ガラス管をマイクロフローリアクタとして用い,反応ガス流れ方向にほぼ1次元とみなせるすす生成反応場を形成した.生成したすす粒子は窒素で500倍に希釈したのちPAMS(ポータブル・エアロゾル・モビリティ・スペクトロメータ)にて,サンプリングを行うことですす粒子径分布を計測した.なおPAMSの測定粒径レンジは10~433nmのハイレゾリューションモードにて測定を行った.反応温度を1333K,窒素希釈したプロパンの濃度を2%に固定し燃料ガスとした.マイクロフローリアクタに流す燃料ガス流量を1.6sccmから0.4sccmに変化させることで反応時間を0.14秒から0.56秒まで変化させた.種々の条件で生成された粒径分布の粒子数最大値で規格化した規格化分布を比較すると,反応時間が0.14sでは粒径のピークが30nm程度であるが 0.56sでは90nm程度まで変化していることから,反応時間が長くなるに連れて生成される粒径分布のピークが大粒径側にシフトし,粒子成長が進行していることが分かった. 0次元定温・定圧でのすす粒子生成反応計算(セクショナル法)を反応時間0.14s~0.56sにて行い,リアクタ出口の粒径分布を計算した.粒子化計算におけるパラメータとして粒子衝突確率にて考慮される“van der Waals強調因子Ca”を1~3の間で値を変化させた結果,Caが大きいほど大粒径側に分布が移動した.また実測値と比較すると,一般的に用いられる値Ca=2.2に比べて2.5~3.0で実測値と良く一致することが分かった.今年度の燃料・実験範囲においては,セクショナル法による計算結果は,Caを調整することで,実験値を再現することが確認できた. さらに実験装置改良を完了し,液体燃料の実験が可能になったことも実績として付記する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロフローリアクタを用いたすす粒子の生成実験を行い,得られた実験結果とセクショナル法を用いた計算結果の比較を行い以下の結論を得た. ①マイクロフローリアクタでのすす粒子生成とCa(van der Waals強調因子)を変化させた計算結果の比較を行い,Ca=2.5~3.0において実測値に近い結果を得ることができた. ②今回の実験範囲においては,セクショナル法による計算結果は,反応時間経過に伴う分布ピークの大粒径側へのシフトの様子を良く再現した. ③実験装置改良を完了し,液体燃料の実験が可能になリ,装置面での目標を達成した. ④試験的に液体燃料イソオクタンによるすす粒子径分布の測定を試みた.その結果,PAMS内部に汚染が生じ,測定不能となることが分かった.今回のマイクロフローリアクタを用いた実験では,PAMSには窒素で希釈しただけの粒子を入れている.そのため,すす粒子には高沸点の多環芳香族などの揮発性成分が付着している可能性がある.この付着物(SOF:Soluble Organic Fraction/可溶有機分)は,PAMS内部を汚染すると同時に,粒径を見かけ上大きくしている懸念がある.以上のように,次年度に向けた課題が明らかになった.
以上のことから,若干の課題は残すものの2年目の目標を概ね達成し順調と判断している.
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今後の研究の推進方策 |
2年目の実験装置の問題点として,液体燃料イソオクタンでは, PAMS内部に汚染が生じ測定不能となったことが挙げられる.PAMSには窒素で希釈しただけの粒子を入れている.そのため,すす粒子には高沸点の多環芳香族などの揮発性成分が付着している可能性があり,その除去が必要である.3年目では,PAMSの前段に粒子に付着した揮発成分を取り除くためのキャタリティックストリッパを導入して問題を解決する. その後,実際のエンジン試験でも用いられるガソリン模擬燃料の一つであるイソオクタンに着目し,マイクロフローリアクタで生成されるすす粒子の粒径分布のデータベースを構築する. さらに2年目で得られたモデル改善ノウハウを生かし,上記データの実験条件に対応させて,セクショナル法(Ansys社の化学反応計算ソフトChemkinに実装されているセクショナル法)によるすす粒子の粒径分布を多数計算する.併行して実験データを再現するためのモデル改善を試み,ガソリン模擬燃料にも対応可能な “粒径分布まで予測可能なすす粒子生成モデル” を提示して目標達成を目指す.
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