研究課題/領域番号 |
22K12432
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
垣田 浩孝 日本大学, 文理学部, 教授 (40356754)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 海藻 / 水圏環境浄化 / 海洋資源 / 植物 |
研究開始時の研究の概要 |
オゴノリ科海藻単藻培養株をIAAあるいはIAAと微生物含有海水培地で培養し、増殖海藻湿重量、栄養塩吸収量を明らかにするとともに、培養海藻を細胞成分分画して得た各画分でのタンパク質を電気泳動等で解析し、IAAあるいはIAAと微生物含有海水培地で活性化される酵素タンパク質とその関与する代謝経路に関する情報を獲得する。酵素に関しては活性を持った酵素として発現しているか否かを判断する。酵素の基質や生成物はHPLC等で分析する。代謝経路に関する網羅的情報をもとに鍵酵素群を推定する。この情報等を海藻供給量と栄養塩吸収能向上に活用する。
|
研究実績の概要 |
すでに申請者は環境浄化生物として有用な非成熟性オゴノリ科海藻を発見し、海藻成長促進微生物を単離し、微生物由来indole-3-acetic acid (IAA)と微生物が海藻成長と栄養塩吸収を促進することを見出した。さらにIAAと微生物による海藻の一部の代謝物質変動と一部の酵素量増加を見出した。本研究ではIAA等(微生物由来物質)により変動する海藻タンパク質を網羅的に解析し、海藻成長と栄養塩吸収能に関わる鍵酵素群を探索すると共に、窒素吸収特性、糖代謝特性を制御し、高成長と栄養塩高吸収機能を持つ海藻の調製に最適な培養条件を選定することを目的とする。 本研究初年度(令和4年度)にIAA添加条件の異なるオゴノリ科海藻単藻培養株のタンパク質の変動を電気泳動で分析した。当該分析に先駆けて、海藻からのタンパク質可溶化の分画も行い、①糖は鍵酵素群の基質あるいは生成物と関連する生体物質であるが、ポストカラム蛍光誘導体化反応搭載HPLCによって、凍結乾燥海藻10 mgあれば遊離単糖類検出が可能であること、②ポリビニルピロリドン添加によりポリフェノールを分別でき、タンパク質回収率を上昇させること、③Tris-HCl緩衝液よりも尿素CHAPS抽出溶液での抽出の方がタンパク質の回収率が向上することを明らかにした。タンパク質画分に混入した多糖の除去は次年度以降の課題である。 IAA添加条件の異なるオゴノリ科海藻単藻培養株の粗抽出液のSDS-PAGEにより、IAA添加条件により異なった分子量のタンパク質バンドを検出することができた。次年度以降にこれらのタンパク質バンドの検証を進める予定である。 IAA添加によりオゴノリ科海藻単藻培養株の湿重量増加が約1.2倍上昇することを再確認できた。次年度は培地中の共存微生物の存在量のオゴノリ科海藻の湿重量増加及び栄養塩吸収量への影響実験を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施期間を通じて、当該オゴノリ科海藻単藻培養株の維持培養を滅菌した人工海水中で継続して行い、実験に使用する。海水培地でのコンタミネーション(当該海藻以外が培養されてしまうこと。雑菌混入)の危険性を低減するために維持培養は複数の培養容器で行った。初年度もコンタミネーションが起こらずに維持培養が継続でき、当該株由来の海藻切片を実験材料として使用できた。単藻培養株は藻類としてたった1種しか含まない状態になった培養株のことであり、実験材料としては個体差が少ない点等で優れている。さらに単藻培養株のうち、非成熟性である株は、成熟や成熟後の枯死が起こらないため水質浄化への活用に利点がある。 細胞中の全タンパク質を抽出することは、細胞中の全DNAを抽出することよりも困難である。それはタンパク質には疎水性や親水性等の性質が異なった分子が含まれており、かつ細胞質や膜等、その局在する組織、器官によってタンパク質の存在状態も異なるためである。初年度目標『IAA添加条件の異なるオゴノリ科海藻単藻培養株のタンパク質の変動を電気泳動で分析する』のためには、『海藻からのタンパク質可溶化の分画も条件検討』が必須となる。タンパク質可溶化の分画法としてポリフェノール除去法、水溶性タンパク質抽出法、膜結合タンパク質抽出法の大まかな条件を決めることができた(多糖の除去は未達成である)。酵素の基質や生成物に関連する遊離単糖の抽出条件と検出最低必要量も明らかにできている。これらの情報はタンパク質変動の解析をするために非常に重要な情報である。 またIAA添加条件の異なる培地での株によりSDS-PAGEで異なったバンドが検出されたこと、IAA添加により海藻湿重量増加が約1.2倍上昇することも確認できた。 以上の成果が得られたことから区分(2)と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
第2年目(令和5年度)は引き続きオゴノリ科海藻保存株(単藻培養株)を本研究実施期間全般にわたって使用可能にするために維持培養を継続する。培地交換は約2週間毎とし、維持培養の海藻湿重量の調節は約1か月ごとに実施する。当該オゴノリ科海藻保存株のタンパク質含有量等の代謝変動への微生物由来物質等(IAA等)の特異的影響を明らかにするためには他のオゴノリ科海藻培養株との比較実験が必要である。そのため、新規にオゴノリ科海藻オゴノリ株、ツルシラモ株の単藻培養株を人工培養により実験に使用できる量まで培養して、海藻培養株のタンパク質含有量等の代謝変動への微生物由来物質等(IAA等)の影響を比較する。 令和5年度にIAAあるいは海藻付着共存微生物添加によるオゴノリ科海藻単藻培養株のタンパク質とmRNA発現の変動を電気泳動(2D-DIGE等)、LC-MS/MS、タイムコースを含めたRNA-Seq等の高処理能力手法を用いて網羅的に分析し、NCBIデータベースと総合し、IAAあるいは海藻付着共存微生物添加で活性化される酵素タンパク質とその関与する代謝経路に関する情報(タンパク質同定情報)を獲得する。 海藻からのタンパク質可溶化の分画に関しては初年度に大まかに決めた分画条件をさらに細かく検討する。多糖の除去方法を検討する。酵素に関してはその酵素活性を測定し、活性を持った酵素として発現しているか否かを判断する。酵素の基質や生成物に関してもLC (HPLC)、 GC-MSで定量する(基質や生成物は代謝経路中で消費される可能性があるが、海藻内の定常的な量を見積もる)。増殖海藻湿重量、栄養塩吸収量等の各測定を行う。 第3年目(令和6年度)には令和4~5年度で獲得したIAA添加あるいはIAAと微生物添加により活性化される酵素タンパク質と代謝経路に関する網羅的情報をもとに鍵酵素群を検討する。
|