研究課題/領域番号 |
22K12441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
黒川 秀樹 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50292652)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | オリゴメリゼ―ション / 1-ブテン / 2ーブテン / 異性化 / 鉄錯体 / ニッケル錯体 / 層状粘土鉱物 / バイオジェット燃料 / ブテン類 / 低重合 / 分岐オレフィン / バイオマス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、バイオマスから製造されるエタノールを原料として、カーボンニュートラルなバイオジェット燃料を製造するための多段階触媒反応プロセスを構築する研究である。具体的には、当研究室においてこれまで開発してきたFe(III)、Co(II)、Ni(II)錯体をベースとした固体触媒を用いて、(i) エチレンの選択的二量化反応により1-ブテン製造し、(ii) そのブテン類の低重合により炭素数12~16の分岐アルケン類を製造するための研究を行う。得られた炭素数12~16のアルケン類は既存技術である水素化反応によりバイオジェット燃料へと転換可能である。
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研究実績の概要 |
バイオマスからバイオエタノールを経由して合成できるバイオエチレンおよびその二量化生成物であるバイオブテン類を原料として鉄あるいはニッケル系触媒を用いてオリゴメリぜ―ションを検討した。まず、粘土鉱物層間固定化ビスイミノピリジン鉄(III)触媒とアルキルアルミニウムを組み合わせた触媒による1-ブテン重合を行ったところ、二量体である2-エチル-1-ヘキセンが主生成物として得られた。一方で反応温度を上げると触媒が急速に失活した。この原因を明らかにするため、反応後の未反応ブテン類の組成を解析した結果、-ブテンの一部が2-ブテンに異性化していた。この結果から、触媒が2-ブテンにより失活している可能性が示唆されたため、2-ブテンおよび1-ブテン/2-ブテン混合物によるオリゴメリゼ―ションを行ったところ、2-ブテンの存在により触媒が不活性化することを見出した。 遷移金属触媒では1-ブテンから2ーブテンへの異性化は不可避であるため、2-ブテンにより失活しない触媒系が必須である。そこで文献等の調査を行ったところ、既報の特許であるが、オクタン酸ニッケルとエチルアルミニウムジクロリド(EADC)を組み合わせた均一系触媒がブテン類のオリゴメリゼーションに活性を示すことがわかった。そこで触媒系を不均一系触媒とするべく種々の担体に担持した触媒を調製して評価した結果、脱水したシリカをアルキルアルミニウム類で処理した後、オクタン酸ニッケルを担持した触媒が、EADCを活性化剤として2ーブテン(cis, trans混合物)のオリゴメリゼ―ションに高活性を示し、2量体を高収率で生成することを見出した。一方で本触媒系はメチルアルモキサン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリドを活性化剤に用いた場合には不活性であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で検討予定の触媒系では1-ブテンのオリゴメリゼ―ションに活性を示すものの併発する異性化反応により生成する2ーブテン類により失活してしまうことがわかった。また、オリゴメリゼ―ション中に1-ブテンから2ーブテンへの異性化が容易に進行することも分かり、2-ブテンにより失活する触媒系では実質的にブテン類のオリゴメリゼ―ションは実現不可能であることが分かった。 当初予定した触媒系の多くがこの問題により実用不可であることが分かり、新たな触媒系の開発が必須となったため改めて文献調査を実施した。その結果、既報の特許に2-ブテンのオリゴメリゼ―ションを実現可能な触媒としてオクタン酸ニッケルとエチルアルミニウムジクロリドを組み合わせた触媒が記載されており、この触媒系を追試した結果、目的とする2-ブテンのオリゴメリゼ―ションを達成できることがわかった。一方でこの触媒系は均一系触媒であり、反応後の触媒残渣と生成物の分離が極めて煩雑である。そこで生成物との分離が容易な不均一系触媒への改良を検討したところ、シリカ担持触媒系でも良好な触媒活性が得られた。 以上の結果より、当初計画した触媒系においては目標を達成できなかったが、有望な新しい触媒系の発見と担持触媒の開発に成功したことは、目標を概ね達成したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、計画した触媒系によるブテン類のオリゴメリゼ―ションを検討したが、予期せぬ触媒の失活により軌道修正が必要であった。その中で既報の触媒ではあるもののオクタン酸ニッケルとエチルアルミニウムジクロリドを組み合わせた触媒のポテンシャルを確認し、その触媒系を不均一系触媒とすることに成功した。一方でこの触媒系はブテン類のオリゴメリゼ―ションに適度な活性を示すものの、汎用のトリエチルアルミニウムやトリイゾブチルアルミニウム、メチルアルモキサンでは全く活性が発現しない。また塩素を含むジエチルアルミニウムクロリドでも活性化されないことから、活性化メカニズムや活性種に関して情報が少ない。加えてハロゲン化アルミニウムは塩酸の発生による反応器腐食の問題もあることから、ハロゲン化アルミニウムフリーの触媒が望まれる。 そこで令和5年度はこの触媒系をベースとして、担体、アルミニウム化合物の種類、ルイス酸等の助触媒の添加などにより、ブテン類のオリゴメリゼ―ションに活性を示す新規な触媒系の構築を目指す。担体にはルイス酸である酸処理モンモリロナイト、塩化マグネシウム、アルミナなどを検討する。またルイス酸としてはボラン類の添加を検討する。またニッケルのカルボン酸塩として、より入手しやすい酢酸ニッケルの使用も検討する。
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