研究課題/領域番号 |
22K12442
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉村 彰大 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60800935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 白金族金属 / リサイクル / 使用済み触媒 / 固体王水(溶融塩) / 固液分離 / 固体王水 |
研究開始時の研究の概要 |
PGMsは、自動車用触媒など工業用途の消費が増加傾向にある一方、供給国の偏在する極めて希少な資源であり、価格変動が大きく供給安定性が低い。また、使用済み触媒などの使用済み製品からのリサイクルでも、湿式法や乾式法などの従来型プロセスはいずれも環境負荷が大きい。上記に対し、これまでに塩化鉄(III)と塩化カリウムの複合溶融塩を「固体王水」として用いるリサイクル手法を確立した。本研究では、この「固体王水」によるリサイクル手法の社会実装を目的として、既存手法より環境負荷やコストを大幅に軽減した使用済み触媒からの回収プロセスを構築する。
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研究実績の概要 |
白金(Pt)やパラジウム(Pd)からなる白金族金属(PGMs)は、高い耐食性や触媒能から自動車などから排出されるガスの分解用触媒として重要な素材となっている。一方で、そもそも地殻中の賦存量が少ないこと、製錬に際して環境負荷が大きいこと、産出地が限られることなどから、リサイクルが重要となる。ロジウム(Rh)やイリジウム(Ir)はPGMsの中でも生産量が極めて少ないことから、スクラップからのリサイクルの重要性が特に高い。一方で、既存手法は環境負荷やコストが大きいことから、環境調和型リサイクル手法が必要とされている。 本研究では、これまでにPtやPdへの適用が確認されている「固体王水」について、RhやIrへの適用を進めている。この「固体王水」は塩化鉄(III)(FeCl3)と塩化カリウム(KCl)または塩化ナトリウム(NaCl)からなる複合溶融塩であり、従来よりも低温かつ穏和な条件での処理を可能としている。これまでに、固体王水による溶解、およびその後の析出による回収が確認されたことから、当該年度はこの基礎的手法について、回収率の向上などを目標に研究を実施した。また、処理前後のサンプルの表面状態を観察し、溶解メカニズムの検討も実施した。 その結果、Rhについては、特に還元・回収時の溶媒温度を90 ℃から95 ℃に上昇させることで、回収率が改善したことが確認された。Irについては、溶解後の酸化数をコントロールすることで回収率が安定する傾向が確認された。またRhとIrのいずれも、溶解中にサンプル表面に酸化鉄の被膜が形成され、これが溶解を阻害していることが示唆された。 これまでの基礎的な手法の確立に続き、当該年度は手法の改善を通じて今年度以降実施する実プロセスを想定した検討につながる成果を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、Rh, Irとも溶解、および回収が可能であることは確認されていたが、回収率については高くても40%台にとどまっていた。また、PtやPdと比較して溶解量や回収率の結果が安定しない点も課題として残っていた。要因として、Rh, Irのいずれも溶解自体が困難であること、また回収量が少ないことから回収率の評価が難しいことが挙げられる。 当該年度は、Rhについては特に還元による回収時の改善に取り組み、処理温度をこれまでの90 ℃から95 ℃へ上昇させることで、回収率が40%から70%へ大幅に改善した。逆に85 ℃以下では回収できなかったことから、処理温度が極めて重要な要素であることが明確に確認された。Irについては、サンプル表面の酸化鉄の被覆が溶解を大きく阻害していることが示唆された。加えて、回収時に酸化剤である過酸化水素を過剰量添加すると、Irの単体を直接回収できる可能性も確認された。 上記の検討を通じて、いずれも処理の難しい元素ながら、これまでの課題を解決し今年度以降の検討に必要な技術の確立に至った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、Rh, Irとも溶解、および回収に関する基礎的な検討を実施してきた。また、回収率の改善に必要な要素に関する検討も併せて実施し、一定の成果を得られた。一方で、これまでに処理に利用してきたサンプルはワイヤー状であり、実スクラップよりも比較的比表面積が大きい。また、特にRhはPtやPdと同時に利用されることが多く、処理後の分離によるリードタイムの長時間化、環境負荷やコストの増大が指摘される。以上を踏まえ、RhとIrについてそれぞれ下記の検討を実施する。 Rhについては、PtやPdと同時に処理した後、固液分離を利用した相互分離・回収を試みる。通常の相互分離には溶媒抽出など複雑な手法を必要とするが、特に化合物の溶解度が大きいRhの場合、固体王水のよる処理後は比較的容易に他のPGMsから相互分離できる可能性があるため、本研究ではそれを検討する。Irについては、比表面積の小さいバルクサンプルを用い、実スクラップ処理時にどの程度までサンプルを破砕・粉砕する必要があるかを比較、検討する。 上記検討を通じて、実プロセスへの適用を目指した手法の改善を進めていく予定である。
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