研究課題/領域番号 |
22K12447
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田邉 秀二 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50171814)
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研究分担者 |
中越 修 長崎大学, 工学研究科, 助教 (00374687)
佐野 秀明 長崎大学, 工学研究科, 助手 (10253634)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スチームリフォーミング / 過渡応答法 / バイオマス / トランジェント法 / 水素 / ニッケル / マンガン / BTG |
研究開始時の研究の概要 |
木質バイオマスから水素を取り出す事のできるスチームリフォーミング反応(水蒸気改質反応)を、より低温(500℃以下)で進めることができる固体触媒の探索と、その反応メカニズムを明らかにします。低温でこの反応を行うと、表面に炭素が析出し、短時間で活性を失い、水素を作り出すことができなくなります。しかし、触媒に酸素供給を促進する元素を添加することで炭素析出を防ぐことができ、低温でも活性を失わず、反応が進行するはずです。この研究では、酸素供給を促進する元素を探索し、本当にそのような反応が進行しているのかを分光法を使って明らかにし、触媒設計の指標を提案します。
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研究実績の概要 |
石油や石炭などの化石燃料の使用に代わるエネルギー源として廃木材などのバイオマスを利用する試みがなされている。バイオマスの利用は、直接燃焼して熱エネルギーを取得することもできるが、触媒を使い、スチームと一緒に反応させ、水素やCO, 小分子量の炭化水素に変換する試みがなされている。しかし、この方法は700℃以上の高温が必要とされている。この研究では、より低温で反応を進めることができる触媒の開発と、その反応メカニズムを明らかにすることを目的としている。 今回の研究では、ニッケル(Ni)にマンガン(Mn)を10%加えた触媒をSBA-15というメソポーラスシリカに担持したものを準備し、過渡応答法(トランジェント法)を使って、炭化水素とスチームを交互に触媒に導入し、その生成物を質量分析計と赤外分光計で測定し、反応機構を調べた。炭化水素は、バイオマスから熱分解して出てくると想定されるシクロヘキサンを使用した。この実験は500℃で行った。 触媒上にシクロヘキサンを導入すると、急速に熱分解し、表面に炭素と炭化水素の重合物が析出したが、最初にスチームを導入し、次にシクロヘキサンを導入すると、急速な炭素と炭化水素の析出は抑制された。特にMnを加えた触媒では、ほとんどシクロヘキサンが反応しなかった。このことから、MnをNiに導入するとスチームと触媒表面の結合が強くなることがわかった。スチームリフォーミング反応はNiの表面で進むことが知られており、私たちの研究でも100%Mnでは反応は進まないことを確認している。しかし、Niをわずかでも加えると、反応が進行する。このことから、Mnの添加で、Ni表面のスチームの吸着力が変化し、たとえ炭素が吸着したとしてもスチームをより強力に引き寄せ、炭化水素とスチームの反応を効率よく進行させていると推測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランジェント法を利用できる実験環境を構築し、当初の計画通り、タールのモデル化合物であるシクロヘキサンとスチームを500℃で試験し、反応機構の推測がある程度できた。現在、この結果を論文にまとめ、速報誌に投稿中である。1年間の成果としては計画通りに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
触媒の組成をNiにたいしMn10%としている。触媒の構造がどのようになっているかを確認できていないため、触媒のキャラクタリゼーションを行うことを計画している。また、スチームの吸着状況、炭化水素の吸着状況が明らかでないため、引き続きIRを使って検討していく予定である。 反応メカニズムについては、概略の反応メカニズムは確認できたが、表面の酸性、塩基性、あるいは親水性、疎水性の詳細が明らかになっていないので、今後はこの性質を明らかにする予定である。 これらを明らかにした後、これらの知見を元に、新しい組成で触媒を合成し、定常反応活性を試験する予定である。
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