研究課題/領域番号 |
22K12448
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
黒田 桂菜 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 准教授 (70708023)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 海産バイオマス / メタン発酵 / 発酵残渣 / 微量金属 / 牡蠣殻 / 循環資源 |
研究開始時の研究の概要 |
大阪湾などの富栄養海域で大量発生する緑藻類アオサや漁網に混獲された市場価値の低い魚は,漁村地域で厄介者として扱われ,廃棄処分となっている。また,漁業系廃棄物であるカキ殻の再利用は,一部に留まっているのが現状である。本研究では,アオサや魚由来のメタン発酵残渣に豊富に含まれる鉄などの微量金属とカキ殻の主成分である炭酸カルシウムに着目し,長期にわたる連続メタン発酵実験を通して,メタン発酵槽への発酵残渣の返送およびカキ殻の添加がメタン発酵の高効率化に与えるメカニズムを明らかにし,未活用海産バイオマスを核とした高効率メタン発酵法を提案する。
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研究実績の概要 |
大阪湾などの富栄養海域で大量発生する緑藻類アオサや漁網に混獲された市場価値の低い魚は,漁村地域で厄介者として扱われ,廃棄処分となっている。また,漁業系廃棄物であるカキ殻の再利用は,一部に留まっているのが現状である。本研究では,アオサや魚由来のメタン発酵残渣に豊富に含まれる鉄などの微量金属とカキ殻の主成分である炭酸カルシウムに着目し,長期にわたる連続メタン発酵実験を通して,メタン発酵槽への発酵残渣の返送およびカキ殻の添加がメタン発酵の高効率化に与えるメカニズムを明らかにし,未活用海産バイオマスを核とした高効率メタン発酵法を提案する。 本研究の目的は,海産バイオマスを核としたメタン発酵の高効率化の有効性を明らかにし,実用化に向けた実験的知見を得ることである。そのため,海産バイオマス由来のメタン発酵残渣(固相)の返送およびカキ殻の添加がおよぼす発酵過程への影響について,メタンや有機酸の分析および微生物群集の解析を基に,発酵経路を詳しく調べる。さらに,漁村地域の廃棄バイオマス量を基に,長期的な連続メタン発酵実験を行い,運用条件の最適化を行う。 2022年度は,先行研究のレビューを行うとともに,小型メタン発酵実験を通して,残渣返送およびカキ添加がメタン発酵に及ぼす影響を詳しく調べた。残渣返送に関しては,発酵試料や返送量による違いによる発酵特性を明らかにした。カキ添加に関しては,カキの形状および添加量の違いによる発酵特性を明らかにした。同時に,2023年度に予定している対象漁港の実地調査の前準備として,現段階での地産エネルギーの試算を行い,シナリオ作成に向けた簡易的な検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,小型メタン発酵実験を用いて,残渣返送およびカキ殻添加がメタン発酵に及ぼす影響について詳しく調べた。アオサ・タイ由来の発酵残渣(固相)の返送について,グルコースを用いたアオサ由来の固相添加実験では,5gの固相添加において,添加なしに比べ7.2%のメタンガスの増加を確認した。一方,10g,15gの添加ではメタンガス発生量が減少した。タイ由来からは,5gの固相しか得られなかったが,5g添加では18.6%のメタンガスの増加を確認できた。また,アオサ由来の固相を用いた場合,ガス発生速度のピークが添加なしに比べ遅れることがわかった。これらの結果から,固相の添加によってメタンガスの増加が期待できること,発酵試料の成分によって得られる固相量が大きく異なることがわかった。 タイを用いたカキ殻投入実験では,低負荷(3g-VS/l-汚泥)より高負荷(9g-VS/l-汚泥)の方がメタンガス増加量が期待できること,発酵開始直後にメタンガスの増加が期待できること,カキ殻の形状によってメタンガスの増加傾向に違いがあることがわかった。以上の結果から,メタン発酵に効果的な残渣返送量およびカキ殻添加量が明らかになった。 シナリオ作成に向けた簡易検証によって,現状の発酵方法では,漁港で消費するエネルギーをすべて賄えないことがわかった。本研究で提案する高効率型のメタン発酵法も含めたシナリオ作成が必要といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,2022年度に得られた結果を基に,小型・中型メタン発酵実験を通して,メカニズムに着目した考察およびシナリオ作成に向けた実験を進める。具体的には,長期運用を想定した連続メタン発酵実験を通して,発酵過程に及ぼす要因について詳しく調べる。シナリオ作成に関して,当初予定していた大阪府阪南市に加え,愛媛県のノリ養殖漁業者からも協力を得られることになったことから,海域や地域の環境に合わせた複数のシナリオを想定した実験計画を組む予定である。
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