研究課題/領域番号 |
22K12449
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
松崎 弘美 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30326491)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 生分解性プラスチック / バイオプラスチック / 水素細菌 / 乳酸 / 二酸化炭素 / ポリヒドロキシアルカン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
プラスチックはその性質が有用であるが、難分解性であるため、海洋汚染など様々な環境問題を引き起こしている。そのため、自然環境中で完全に分解される生分解性プラスチックの使用が期待される。微生物が合成するバイオプラスチック、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)はその有力な候補であるが、野生株が合成するPHAは物性に難があり実用的ではない。そこで本研究では、実用性に優れた高性能バイオプラスチックを合成する水素細菌の分子育種を行うことを目的とする。水素細菌を用いて二酸化炭素から高性能な生分解性バイオプラスチックを生合成することは、地球環境汚染を防ぐのみならず、地球温暖化防止にも貢献する。
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研究実績の概要 |
水素細菌Cupriavidus necatorは糖や脂質のみならずCO2を炭素源として増殖することができるため、CO2から生分解性の高性能バイオプラスチックを生合成することは地球環境汚染を防ぐのみならず、地球温暖化防止にも貢献する。 C. necatorはポリヒドロキシアルカン酸(PHA)のポリ-3-ヒドロキシブタン酸 [P(3HB)] を合成する。P(3HB)は不透明かつ硬くて脆い高分子材料であるため、実用的ではない。そこで、透明性と柔軟性を付与するため、乳酸(LA)と3HBユニットの共重合体P(LA-co-3HB)の生合成を行った。野生株のH16株やグルコース資化能を有するNCIMB 11599株の分子育種株を宿主とし、D-乳酸(D-LA)ユニットをポリマー鎖に取り込むことができるPseudomonas sp. 61-3由来のPHA重合酵素改変体PhaC1(STQK)、D-乳酸脱水素酵素(LdhD)およびプロピオニルCoA転移酵素(Pct)の遺伝子を導入した組換え株を作製した。これらの組換え株を糖および二酸化炭素を炭素源として培養し、P(LA-co-3HB)の生合成を行った。 組換え株の1つは、グルコースから25 mol%のLA分率からなるP(LA-co-3HB)を合成することに成功した。これは透明な乳酸ベースポリマーであると考えられた。さらに二酸化炭素を炭素源として培養したところ、LA分率が8.2 mol%のP(LA-co-3HB) を6.8 wt%合成した。また、LA分率の向上を目指して、ldhD遺伝子のコドン最適化を行ったがLA分率を高めることはできなかった。さらにldhDopt遺伝子の上流にtrcプロモーターを挿入して遺伝子の発現量を高めたところ、ポリマー蓄積率は高くなったが、LA分率を高めることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、C. necator H16(野生株)のphbC遺伝子を破壊した株およびphaC1(STQK)遺伝子に置換した株を宿主として利用し、ldhDおよびpct遺伝子を導入した組換え株、さらにphaC1(STQK)遺伝子を導入した組換え株を作製したところ、糖を炭素源としてLA分率が5 mol%以下からなるP(LA-co-3HB)を合成した。しかし、LA分率が低く、P(3HB)とほとんど同じであった。そこで、C. necator NCIMB 11599(グルコース資化能を有する野生株)の3HB供給量を低下させた株を作製し、これを宿主とすることで、その組換え株はグルコースから25 mol%のLA分率からなるP(LA-co-3HB)を合成することに成功した。これは透明な乳酸ベースポリマーであると考えられた。さらに二酸化炭素を炭素源として培養したところ、LA分率が8.2 mol%のP(LA-co-3HB) を6.8 wt%合成した。しかし、この株は不安定であり、再現性よくポリマーを生産することができないことがわかった。 一方、LA分率の向上を目指して、ldhD遺伝子のコドン最適化を行ったがLA分率を高めることはできず、さらにはコドン最適化したldhD遺伝子の上流にtrcプロモーターを挿入して遺伝子の発現量を高めたところ、ポリマー蓄積率は高くなったが、LA分率を高めることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
C. necatorの分子育種株を宿主とした組換え株は、糖を炭素源として透明性を有すると考えられる25 mol%のLA分率からなるP(LA-co-3HB)を20 wt%合成した。これは透明性を有する生分解性プラスチックと考えられた。また、この組換え株は二酸化炭素を炭素源としてLA分率は8.2 mol%のP(LA-co-3HB) を6.8 wt%合成した。さらなるLA分率の向上とポリマー蓄積率を高めることが求められるが、この組換え株は安定性が悪く、同様な組成のポリマー合成能を失う傾向が顕著であった。これはC. necatorにおけるプラスミド保持率の低下が原因と考えられる。そのため、必要な遺伝子をC. necatorのゲノムDNAに挿入してP(LA-co-3HB)合成に相応しい菌株の育種を進めている。相応しい菌株を作製した後には、ポリマーを菌体から抽出・精製し、その熱的性質・ポリマー構造・分子量・機械的性質を調べ、実用的な高性能な高分子材料であるかを調べる。
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