研究課題/領域番号 |
22K12453
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
|
研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
川村 淳浩 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (20596241)
|
研究分担者 |
井田 民男 近畿大学, バイオコークス研究所, 教授 (70193422)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | バイオマス / 固形燃料 / 直接熱利用 / 農業残渣 / クリンカ / スラグ / バイオコークス / 燃焼灰 |
研究開始時の研究の概要 |
ゼロカーボン社会の実現に向けて、寒冷地の既設住宅における暖房や給湯等の供給熱源燃料を灯油からバイオマスに切り替えるため、資源量の豊富な草本系バイオマスの利用が望まれている。しかし、草本系バイオマスのような高灰分の燃料を燃焼すると、燃焼機器の稼働や安全性を阻害する粘結性クリンカが形成されることが永らく問題となっている。 本研究では、高灰分の農業残渣バイオマスを原料として高密度固形燃料(農業残渣バイオコークス)を製造し、この燃料がもつ特性と燃焼形態の工夫によって、粘結性クリンカの形成を抑制する開発研究を行う。 これにより、持続可能社会の構築に繋がる循環型農林地域圏実現の一助とすることが期待できる。
|
研究実績の概要 |
本研究は、灰分が多いために直接燃焼による熱利用が困難な農業残渣(草本系バイオマス)を原料として高密度固形燃料(農業残渣バイオコークス)を製造して市販の住宅用ストーブをベースとした燃焼比較実験機に適用し、燃焼形態の工夫によって粘結性クリンカ形成などの不具合を抑制する開発研究を行うことを目的としている。 この実施計画は、1)農業残渣原料・燃焼灰の化学組成分析(計量法で定められた計量証明事業者への外部委託)、2)燃料(農業残渣バイオコークス)製造システム製作と燃料製造、3)燃焼比較実験機製作(市販の住宅用ペレットストーブの改造)と燃焼実験とした。以下、2023年度の研究実績を記載する。 (1)農業残渣原料の金属分析と燃焼灰の溶融性試験を外部委託した。これらの結果、小豆収穫残渣は珪素割合が高いこと、米ぬかは融点が低いことが確認された。 (2)小豆収穫後に廃棄される残渣(小豆収穫残渣)を主原料、米ぬかを副原料として、バイオコークス連続製造における製造パラメータ(油圧式プランジャの往復運動速度、高周波加熱器の設定温度)を変更して農業残渣バイオコークスを製造した結果、単位時間当たりの製造量とエネルギー効率に優れた連続製造が可能であることがわかった。また、原料のバイオコークス化を維持するためには、油圧式プランジャの往復運動速度に連動して高周波加熱器の設定温度を適正化する必要があることがわかった。 (3)市販の住宅用ペレットストーブを用いて、木質ペレット専焼の場合と農業残渣バイオコークスとの混焼(発熱量換算10%)の場合の比較実験を実施し、熱電対による燃焼温度計測を実施した。この結果、小豆収穫残渣70% 米ぬか30% 配合の農業残渣バイオコークスとの混焼では平均燃焼温度の低下が認められ、粘結性クリンカの形成が確認されなかったことから、粘結性クリンカの形成を抑える効果があることが改めて示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオコークス連続製造システムを用いて、農業残渣バイオコークスを連続製造するための最適な製造条件を探った。ここでは、米ぬかの配合割合を50mass%と固定し、各原料の含水率も一定とした。そのうえで、油圧式プランジャの往復運動速度を0.02~0.04Hz、高周波加熱器の設定温度を180~210deg.Cの範囲とした。なお、油圧式プランジャの往復運動長さ(ストローク)を90 mm固定とした。この結果、油圧式プランジャの往復運動速度を上げることで単位時間当たりの製造量が向上したが、バイオコークス化を維持するためには高周波加熱器の設定温度を連動して上げる必要があった。これは、高周波加熱器から原料が得る熱量は油圧式プランジャの往復運動速度に依存するためと考えられる。最終的に、油圧式プランジャの往復運動速度0.04Hz、高周波加熱器の設定温度210deg.Cの条件において、農業残渣バイオコークスの製造に要したエネルギー(消費電力量)は3.76MJ/kg程度(先行研究の1/1.472程度)となった。 燃焼比較実験では、木質ペレット専焼と農業残渣バイオコークス3種(発熱量換算10%とし、小豆収穫残渣70%米ぬか30%、小豆収穫残渣50%米ぬか50%、米ぬか100%)との混焼を比較した。この結果、米ぬか配合割合が大きいほど平均燃焼温度は上昇する傾向となった。また、米ぬかを用いたすべての場合で米ぬかの融点である760deg.Cを超えたが,米ぬか30%配合の条件では粘結性クリンカの形成が確認されなかった。一方,米ぬか100%バイオコークスでは平均燃焼温度が木質ペレットと同様に高かったが,米ぬか50%,30%配合の条件では燃焼温度の低下が認められたため、燃焼温度の抑制に効果があることが改めて示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、農業残渣バイオコークス化における小豆収穫残渣の配合割合を更に増やす(滑り材としての米ぬかの配合割合を減らす)ことと、燃焼時におけるクリンカ形質改善メカニズムの解明を更に進める必要がある。以下にこれらの推進方策を示す。 1.農業残渣バイオコークスの連続製造における米ぬかの配合割合を減らすため、反応管内面の平滑度を上げ、摩擦損失の軽減を図る。そして、原料の含水率等をパラメータに加えるなどして検討の範囲を広げ、最適な製造条件の検討を進めていく予定である。 2.燃焼比較実験において、米ぬかがクリンカ形成条件の鍵を握っていると思われることから、製造条件と併せて、クリンカ形成・抑制メカニズムの解明を促進する。 3.燃焼灰の分析結果をもとに、循環型社会の構築に向けた取組みを推進する。 4.なお、小豆収穫残渣の調達において土壌などの不純物が混入する恐れがあったことから、これが製造条件や燃焼比較実験に及ぼす影響についても将来的に検討する必要があると思われる。この対応策として、本研究では選別の徹底によって不純物の混入を極力排除することで、小豆収穫残渣による本質的な性能を明確にしたいと考えている。
|