研究課題/領域番号 |
22K12454
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
奥村 寿子 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (20600018)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | ポリフェノール / 植物性廃棄物 / 光退色 / 有機色素 / クロロゲン酸 / 光反応 |
研究開始時の研究の概要 |
持続可能な社会の実現のためには、農産業において排出される未利用資源の有効活用は重要な課題である。本研究では、植物性廃棄物であるサツマイモ茎葉から、有用物質であるクロロゲン酸類を抽出回収し、そのラジカル補足能を光増感性の有機色素の退色抑制剤として活用させる技術開発を目的とする。サツマイモの茎葉部分は、現代ではほとんど食されることはなく、収穫前に刈り取られ、堆肥として埋められるか、焼却処分されている場合が多い。現状あまり着目されず、積極的に利用されていない低分子ポリフェノールの機能を工業材料へ応用することで、廃棄されている有効資源に新たな活路を見出す。
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研究実績の概要 |
本研究では、植物性廃棄物のサツマイモ茎葉に多く含まれるクロロゲン酸の有効利用を目的とし、有機色素の光退色を抑制する添加剤としてのクロロゲン酸の効果について検討した。 溶液中においてクロロゲン酸の有効性がすでに確認された色素4種について、照射する光の波長の影響を調査した。その結果、各色素が最も退色する波長において、クロロゲン酸による退色抑制効果が最大となることが分かった。これは、有機色素の光増感作用により発生した一重項酸素が退色の要因として関与しており、クロロゲン酸によりそれらが補足され、退色が抑制されるためと考えられる。 また、光照射時の化学反応によってクロロゲン酸から生成する物質は、紫外領域の光の照射ではクロロゲン酸のcis体、可視光の照射では二量体が生成し、二量体は光の照射によってクロロゲン酸の2カ所が結合して生成することが分かった。ラジカルが関与した反応が進行したと推測され、二量体として結合する時に片方のクロロゲン酸がcis体となることも判明した。 溶媒のない膜表面上においてもクロロゲン酸の効果を確認したところ、溶液中よりは劣るものの、膜表面上でも同様の有機色素の退色抑制効果が観測された。また市販のインクジェット式プリンタインクに対しても効果が得られることが判明した。溶液中での効果は、溶存酸素濃度に影響されることも分かった。 クロロゲン酸と化学構造が類似したフェニルプロパノイド骨格を持つ化合物の効果を調べたところ、クロロゲン酸と同様の退色抑制効果が観測されたものの、クロロゲン酸とは異なる呈色反応が進行したり、分解が速く進行する場合が多く、クロロゲン酸よりも退色抑制効果が優位な化合物は見つからなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の有機色素を用いたクロロゲン酸の退色抑制に対する有効性の確認については、昨年度に引き続き順次進めることができ、より詳しい実験の結果からメカニズムに関する新たな知見を得ることができた。しかし、サツマイモの茎葉乾燥物からのクロロゲン酸の抽出物までは達成できたものの、その後の精製操作がうまく進まなかったため、粗抽出物を用いた有機色素の光退色抑制効果の検討が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後進めていく課題としては、さらに退色抑制のメカニズムを明らかにするため、クロロゲン酸類似化合物による実験を追加で行い、効果のあり、なしの分類から、関与している化学的な要因を追求していく。溶液中でのラジカル発生量の観測や各種物性値の測定、色素と有効な添加物の相互作用エネルギーについて計算化学による解析を行う。また、各抽出段階での粗抽出物の作成を早急に進め、退色抑制に影響を与える物質を調査する。
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