研究課題/領域番号 |
22K12474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長尾 征洋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40432223)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 電気化学的酸化 / 廃プラスチック / 水素生成 / エネルギー回収 |
研究開始時の研究の概要 |
廃プラスチック類は一部発電利用されている場合を除くと大部分が焼却処理もしくは燃料として熱利用されている。廃プラスチックに含まれる水素をプロトンとして乖離させ気体水素として分離できれば、低環境負荷な水素利用が期待できる。そこで本研究課題ではプラスチック等の水素含有物質が電極上で電解によりプロトンを生成する反応に着目し、これを水素生成やエネルギー回収に応用する。セルロースを主成分とする廃棄バイオマスに加え、廃プラスチックの直接電解による低環境負荷かつ低コストな水素生成や水素燃料電池発電を実現できれば、水素利用社会への大きな足掛かりになる。
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研究実績の概要 |
プラスチックはその軽さ、丈夫さ、加工のしやすさから、日用品から工業製品にまで広く応用されている。しかし、適切に処理されずに環境中へ廃棄されたプラスチックはそのサイズに関わらず、環境、生態系、人体へ悪影響を及ぼしている。そこで、本研究課題では、プラスチックに対してエネルギー資源としての活用方法に新しい道を見出すことにより、適切な廃棄処分へのモチベーションを高め、環境中に放出されるプラスチックの削減を目指す。具体的には、プラスチックを直接電解することにより水素を生成することで環境負荷が低くコスト的に有利な水素を得る。また、燃料電池の燃料にも用い、水素ではなく電力を得る方法としても検討する。これらに関係する電気化学反応の解析することで、電極反応や電気化学的酸化反応の解明を目指すものである。 今年度は、水素生成におけるエネルギー消費量の推計を行った。継続的に水素生成を行うにはフローセル式の実験系が適しており、これの運転に関係する加熱電力、補器作動電力、電解電力を求める必要がある。プラスチックを直接電解した際の水素生成に関わる電流効率はほぼ100%であったことから、電解に要する電力は、生成水素当たりに換算すると2.3kWh/Nm3・H2となることが分かった。これは従来技術のプラスチックのガス化(4.0kWh/ Nm3・H2)と比べると、大幅なエネルギー削減である。しかし、加熱電力および補器作動電力はそれぞれ2.1,2.5 kWh/Nm3・H2であったことから、電解には関わらない部分のエネルギー消費が課題であることが分かった。特に作動温度の高温化においては、加熱による電力消費は不可避であることから、補器作動電力の低減がより重要になることが分かった。このことから、現作動温度である200度を上限とし、可能であれば低温化を試みることが重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、昨年度に課題とした作動温度の高温化の影響を評価するために、エネルギー収支の計算を行い、作動温度を検討した。その結果、電解に必要な電力(2.3kWh/Nm3・H2)に比べ、補器および加熱に必要な電力が4.6kWh/Nm3・H2となることが分かった。つまりエネルギー収支がおよそ35%ということになり、水素生成においては電力の低減が課題であると結論付けた。高温作動化により電極反応がスムーズに進むことが期待されるため好ましいが、同時に加熱電力も必要とすることから、本実験系においては現状の200度を上限値とすることとした。これにより、電気化学的な評価方法(サイクリックボルタンメトリー)による電極反応の詳細な評価を行う際には200度およびそれ以下の温度で行うことが重要であることが示された。200度という熱源は、工場やボイラーの廃熱(余剰熱源)を利用することが期待できる。また、電解及び補器作動電力には風力・太陽光発電などによる再生エネルギーを利用することで低減可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の進め方に関して、電気化学反応の解明に着手するため、電気化学測定法(リニアスイープボルタンメトリ測定、サイクリックボルタンメトリ測定、インピーダンス測定等)により、プラスチックからの脱水素反応機構を検討する。また、電解においては触媒の活性化も重要であるため、触媒担体の検討も進める。継続的な電解による水素生成には、これに適した電気化学セルの設計も必要であるため、新たに開発した触媒を用いた継続的な水素生成実験も行う。最後に、現在はプラスチック燃料の供給には継続供給が可能なフロー式を検討しているが、排出される燃料溶液には未反応のプラスチックおよびその分解生成物(部分酸化生成物)が含まれている。そこでこれらを有効利用(リサイクル)するために、循環式のフロー型セルも設計する必要がある。
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