研究課題/領域番号 |
22K12495
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 国土交通省国土交通政策研究所 |
研究代表者 |
南 聡一郎 国土交通省国土交通政策研究所, 主任研究官(任期付) (20781917)
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研究分担者 |
東 秀忠 山梨学院大学, 経営学部, 教授 (50583267)
竹内 龍介 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (60896330)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | モビリティ・イノベーション / 持続可能な交通政策 / CASEとMaaS / 地方分権 / 脱炭素 / LRT / 料金無料化 / バリアフリ- |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、自動車からのCO2や大気汚染物質の排出削減などの持続可能な地域交通の実現に貢献するために、地方自治体の持続可能な交通政策とモビリティ・イノベーションに関する相互依存的な発展サイクルを解明することを目指す。1)地方自治体の交通政策が企業の技術開発に与える影響に関する分析、2)欧州における先進事例の調査、について、国内外の政策立案者や企業の技術者へのヒアリングをおこなって明らかにし、3)モビリティ・イノベーションと持続可能な地域交通政策の展望を示すために日本の地域でのシミュレーションを実施する。
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研究実績の概要 |
今年度は、昨年度の成果(研究フレームワークの共有、既知の情報の整理、研究仮説の設定、調査先の選定と調査項目の確定)を踏まえ、国内外の先進事例調査をおこなった。6月にはフランス調査をおこない、グルノーブル、モンペリエの事例調査をおこなうと共に、パリの社会科学高等研究院日仏財団主催のワークショップにて、研究代表者の南、分担者の東が本研究に関する報告をおこない、日仏財団の研究者らと議論をおこなった。特に、モンペリエ市は、都市圏在住の市民全員を対象に公共交通の料金無料化についての調査を実施した。この調査では、技術面のイノベーションだけではなく、社会的イノベーションも持続可能な交通実現のために重要であることが判明した。 日本における環境に持続可能なモビリティのトッピクとして、2023年8月に日本で初めての新設LRTとして、宇都宮ライトレールが開業した。そのため、本科研費では日本の路面電車・LRTのイノベーションに果たす自治体の役割について重点的に調査した。9月、1月に宇都宮の調査を実施したほか、2月には広島の調査をおこなった。新設であった宇都宮市のケースでは、地方自治体が思い切って財政投入して、全ドアICカード対応など最新技術をふんだんに使用して非常に近代的な交通機関とすることができたのに対して、既存路線の改良である広島のケースでは、独立採算制の下でのバリアフリー対応車両の投入の困難さなど、地方財政がモビリティ・イノベーションの制約となっていることが判明した。 22年の研究で構築した仮説、23年度の現地調査の実績に基づき、2024年度にはフランスでの自治体や交通事業者のほか、自治体の全国組織や交通事業者の連合体などのアクターに注目し、これらのアクター間の協力関係により、地方自治体主体のモビリティー・イノベーション推進の実態解明をしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は海外現地調査と国内実地調査についても実施する事が出来たので、事例情報を収集することができた。また、研究の中間アウトプットして、シンポジウムでの招待講演や学会報告を行い、研究成果のとりまとめをおこなうと共に、参加者や討論者と意見交換することができた。ここでの議論からは、フランス国内でもパリを中心とした首都圏と、地方では先進的な公共交通イノベーションに対する公的部門によるアプローチに差があること、一方でモータリゼーションから公共交通主体のモビリティを模索する方向性については共有されていることが明らかになった。特にパリ市内には、先進的なモビリティ・イノベーションを推進するための政策的取り組みのアプローチが存在し、積極的な社会実験を推進しつつ、問題が明らかになったら規制を実施する、という方針となっていることが確認された。これまでの進捗を基盤として、2024年度の現地調査や国内外の研究者とのワークショップを重ねて、研究とりまとめへ向けて推進していく。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、地方自治体の持続可能な交通政策とモビリティ・イノベーションに関する相互依存的な発展サイクルの典型例として、フランスにおけるLRT普及の経緯とそれに伴う技術的、制度的、認知的障壁の解消プロセスを観察して分析するための現地調査を2回計画している。第1回は2024年6月下旬に、ボルドーにおいて視察、現地研究者との議論、現地関係者への聞き取り調査を実施する予定である。第2回目として、10月にストラスブールで開催される欧州モビリティエキスポを視察する。同エキスポは、GART(全仏地方交通政策組合、地方自治体の交通セクションの全国組合)とUTP(全仏鉄道・公共交通事業者連合)が合同で開催し、交通事業者や車両、施設メーカー、モビリティに関わるベンチャー企業などが出展する大規模な展覧会で、会期中は講演プログラムも設定されており、欧州におけるモビリティ・イノベーションに関する最新情報を効率的に把握することができる。同時に、GARTやUTPへのヒアリング調査も実施する。 また、研究成果のとりまとめへ向けて、国内においては交通や環境の研究者とのワークショップを開催し、海外においてはフランスの社会科学高等研究院日仏財団と協力して国際ワークショップを開催する。
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