研究課題/領域番号 |
22K12524
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都府立大学 (2023) 東海大学 (2022) |
研究代表者 |
石川 智士 京都府立大学, 農学食科学部, 教授 (40433908)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 小規模漁業 / カンボジア / コロナ禍 / 海産物の流通 / バリューチェーン / 漁具の多様化 / コロナ禍の影響 / 新型コロナ感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、カンボジア沿岸域における小規模漁業とその社会が、コロナ禍の影響で具体的にどのような影響を受けたかをアンケートとインタビューならびに漁労と漁獲物データから把握することを目的とする。また、これらの成果を基に、沿岸地域の貧困層が新たな感染症のパンデミックに対して、どのように対応しうるのか可能性を検討するとともに、今後の沿岸域開発に関し、感染症対策という新たな観点からの指針を提案することを目指すものである。
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研究実績の概要 |
2020年から2022年にかけて世界に猛威をふるった新型コロナウィルス感染症は、様々な社会構造や産業に大きな変化をもたらした。特に観光業や流通加工の分野においては、観光客の激減や労働力不足による製品生産の遅れなど、多大な経済的損失をもたらした。一方で、沿岸小規模漁業に関して、どのような影響があったのかについては詳細な報告は少ない。特に途上国における漁業者の生活や漁労および水揚について、どのような影響があったのか定量的な調査報告はほとんどない。これらの諸問題に対して、その背景にはどのような産業としての脆弱性があるかを確認しておくことは、今後の持続的沿岸開発や漁業振興を考える上で、極めて貴重な知見を提供してくれるものと考えられる。 カンボジアの沿岸小規模漁業を対象に、コロナ禍が漁業者および仲買人の生業にどのような影響を与えたかを調べることを目的としている。調査方法は、聞き取り調査を中心に、現地視察および統計資料の収集などを行っている。これまでに、カンボジア国沿岸州のケップ州において、水揚場での聞き取り調査や魚介類市場での仲買人および販売員への聞き取り調査ならびにケップ州役場における統計データの収集を行った。 これまでに漁労行為自体には大きな影響がなかったことや、大量注文があり販売は比較的容易であったこと、ならびに観光客は激減しており対面での販売は殆どなかったことなどが明らかとなっている。 市内の漁獲物市場でも聞き取りを行ったが、カニ市場とほぼ同じ回答となった。また、コロナ禍が収まって1年たった現在でも、客数は戻っていない。 漁業者へ聞き取り調査の結果、漁獲物や漁獲量に大きな変化はなかったことが分かった。一方で、それまで建設業などで働いていいた人たちが解雇され、地元に戻ってきたことから、漁業者数が増えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケップ州のケップ市役所において、コロナ禍の影響についての行政の認識についてインタビュー調査を行った。特に大きな混乱はなく、政府の休業補償や生活保障がうまく機能したとの認識であった。 ケップ州にあるカニ市場と呼ばれる水産販売所において19軒の販売店からコロナ禍での影響について情報を得た。当時、2か月間は完全休業の指示が政府からあり、店を閉めざるを得なかった。この間、生活の状況に応じて政府から生活支援金や休業補償金が支払われた。このため生活が困窮することはなかった。このことは政府からの聞き取り情報とも一致した。また、コロナ禍においても漁業は営まれており、水揚げ量は通常とさほど変わらなかった。ただし、対面での販売はかなり少なくなった。一方で、ホテルやレストランからの大量発注があり、通常より販売は容易に行えたとのことである。値段については、通常と大きく変化したことはなかった。ただしコロナ禍が終了した後は、そのような大量注文は減り、また、観光客数も以前ほど多くないことから、経営は悪化しているとのことである。 市内の漁獲物市場でも聞き取りを行ったが、カニ市場とほぼ同じ回答となった。また、コロナ禍が収まって1年たった現在でも、客数は戻っていない。 漁業者へ聞き取り調査の結果、漁獲物や漁獲量に大きな変化はなかったことが分かった。一方で、それまで建設業などで働いていいた人たちが解雇され、地元に戻ってきたことから、漁業者数が増えた。 カニ専売で行っている業者とカニと魚やエビなど複数の漁獲物を扱っている業者では、生活の困窮度合いが少し異なる様であり、カニ専売はカニが高く、また、販売先も多様であることから変化への対応が容易であることに加え、カニ専売業者の方が資本力大きくまた、経験年数も長い傾向があるため、環境変化への適応力が高い傾向がうかがえた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ケップ沿岸では、アジア開発銀行による沿岸域開発が進行中である。コロナ禍で見られた販売網の変化や観光客数の変化が今後どのように変わるのか、継続的に調査をすすめ、コロナ禍で認められた小規模漁業の脆弱性がどのように変化しうるかその可能性考察する。 一方で、これまで調べてきた情報を整理し、また、日本やタイなど他の東南アジアで報告されているコロナ禍の影響との比較検討を行い、カンボジアでの沿岸小規模漁業の特徴とコロナ禍での影響について、その構造性を理解し、論文として公表する。 なお、沿岸漁業者は、漁業だけでなく観光業やマングローブ保全活動など多様な生業を営んでおり、これらの複合生業の在り方が漁業者としての生活や認識とどのように整合性が測られているかについて、聞き取り調査を行い、カンボジア沿岸社会の全容理解へとつなげる調査研究活動へと展開する予定である。また、現在養殖普及活動がカンボジア政府主導で進められており、これによる小規模漁業者の生活変化や意識変化および災害や疾病へのレジリアンスがどのよう変わるかについても注視していく。
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