研究課題/領域番号 |
22K12527
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩井 雪乃 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 准教授 (80507096)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | アフリカゾウ / 獣害問題 / 追い払い / コミュニティ主体 / セレンゲティ国立公園 / タンザニア / 住民主体 |
研究開始時の研究の概要 |
アフリカゾウ獣害問題における住民主体の対策である「追い払い」手法に関して、①追い払い隊を組織し、持続的な運営を可能にする要因/阻害する要因、を解明する。そして、②上記①から得られる知見をもとに、追い払い隊を導入し、地域に適合する社会実験を試みる。これによって、ゾウ獣害対策の地域コミュニティへの適合メカニズムを明らかにし、持続的な被害軽減に寄与することを目的とする。 実際の研究では、調査対象村において、知識技術要因・経済要因・社会要因の3つの側面から、阻害要因とそれを乗り越える要因を抽出し、それをもとに、追い払い隊を設立する社会実験を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は、大学から特別研究期間を取得し、4-9月に6ヶ月間の長期調査を実施した。このような長期フィールドワークを実施できたことにより、以下の3点の成果を得た。 ①ゾウ追い払い隊活動の参与観察を、これまでの2村から増加して、11村で実施することができた。道路が不便でアクセスに時間がかかるため、これまで行くことができなかった村を調査でき、セレンゲティ県での被害の全容を面として把握できるようになった。 ②4-7月の収穫期(ゾウがもっとも出没する時期)を自分で調査することができた。この時期は大学学期中であるため、これまでは自分で直接調査することができず、現地の調査助手に記録を収集してもらい、そこから間接的に情報を得ていた。それに対して今回の調査では、実際にゾウが畑に侵入する現場およびそれを追い払う追い払い隊の活動を直接観察でき、ゾウ追い払い観察事例を飛躍的に増やすことができた。 ③これまで十分に調査できていなかった人身被害について詳細な調査をおこなった。人身被害の調査は、ゾウに家族を殺された方や、大怪我を負った方など、精神的に大きな被害を受けている方々に接することになるため、時間をかけた丁寧な行動が必要になる。これまでの数週間の調査では責任ある対応ができないため実施せずにいた。今回は、時間をかけることが可能なため、このような被害者の方々およびその家族のお話を聞くことができた。 さらに、3月にも2週間の調査を行い、追い払い隊および人身被害者の状況を継続して調査した。2023年は、9月から始まった雨季が止まることなく続いており、例年になく降水量の多い年となっている。その影響か、ゾウ被害は、例年とは異なるパターンを見せており、通常被害が多くなる4-5月になってもゾウ襲来が少ないままになっている。降水量や天候と、ゾウ被害の関係性も引き続き調査していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は6ヶ月の長期調査を実施でき、順調に計画を進めることができた。ゾウ追い払い隊メンバーの日常生活を詳しく知ることで、追い払い活動が生活に及ぼす負荷について質的なデータを収集できた。また、畑でのゾウ追い払いの観察事例を増やせたことで、追い払い活動が抱えるリスクについても理解を深めた。さらに、ゾウによる人身被害を受けた方がと関係性を築けたことは、長期的な被害を追跡していく足がかりともなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、アフリカゾウ獣害問題の解決のために、コミュニティがすでに持つ力を生かした対策手法である「追い払い隊」に着目し、①追い払い隊を組織し、持続的な運営を可能にする要因/阻害する要因、を解明する。そして、②上記①から得られる知見をもとに、追い払い隊を導入し、地域に適合する社会実験を試みることを目的としている。 今年度、①に関するデータを収集できたので、最終年度である次年度は②に取り組んでいく。すなわち、追い払い隊の組織化が進んでいない村において組織化を推進する支援を行い、その過程を参与観察(8-9月現地調査)および電話による追跡聞き取り調査を進めていく。さらに、学会(5月:日本アフリカ学会、6月:日本文化人類学会)、論文等での成果発信も進めていく。
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