研究課題/領域番号 |
22K12545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
浦野 真理子 北星学園大学, 経済学部, 教授 (30364219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | インドネシア / 食料危機 / COVID-19 / 農民 / アブラヤシ / カカオ |
研究開始時の研究の概要 |
この研究の目的は、COVID-19の感染拡大が、開発途上国の農村地域に与えている影響を明らかにすることである。自給自足的な農業生産からパーム油とカカオ豆というグローバルな商品作物生産へ転換したインドネシアの農民社会を事例に以下の3点を検討する。①地域社会は、どのような経緯で商品作物生産に転換してきたのか。②COVID-19感染拡大は住民たちの生計へどのように影響しているか、住民らの危機への対応はどのようなものか。③開発途上国の農村社会が危機に対応力のある経済を構築していくためには、新自由主義が唱える民間資本と連携したイノベーションが有効なのか、それとも農民のローカルな食料主権が必要なのか。
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研究実績の概要 |
この研究の目的は、COVID-19の感染拡大が、グローバルな食料生産システムに組み込まれている開発途上国の農村地域にどのように影響し、また現地の農民らが生計維持のためにどのような対応を行っているかを明らかにすることである。具体的には、自給自足的な農業生産からパーム油とカカオ豆というグローバルな商品作物生産へ転換したインドネシアの西スマトラ州アガム県と東カリマンタン州東クタイ県をフィールドとして選定した。 2022年度は文献調査を行うほか、COVID-19の行動制限の制約からフィールド調査を実施する代わりにオンライン上の調査を行うにとどまった。しかし、2023年度は現地カウンターパートとして西スマトラ州アンダラス大学法学部農地慣習法研究所と東カリマンタン州環境自然保護熱帯研究センター(ECOSITROP)の協力を得て、インドネシア調査イノベーション庁(BRIN)からのフィールド調査実施許可と入国管理局から対応するインドネシア滞在許可を得ることができた。 2023年9月に調査許可と滞在許可をもとに、西スマトラ州を訪問し、アンダラス大学法学部農地慣習法研究所の協力を得て、調査候補地となる村を4か所見学した。さらに、2024年2-3月に西スマトラ州と東クタイ県を訪問し、現地の状況を把握した。 今まで行ってきた研究の成果として2023年9月に英国Globalizations誌(査読付き)に、アンダラス大学法学部農地慣習法研究所のワルマン博士と共同で論文を発表した。また、東クタイ県のカカオ生産について得られた知見について、2023年9月オーストラリアで開催されたIndonesia Councilで発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では、文献調査とフィールド調査のデータを通じ、以下の問に答えることを目指している。①開発途上国の農村社会は、新自由主義者たちの推進する農業政策からどのような影響を受けてきたのか。グローバルかつ工業的な食料生産システムにどのような形で組み込まれてきたのか。② COVID-19の世界的感染拡大が、開発途上国の小農たちの生計に与えている影響と、危機に対する農民たちの対応はどのようなものか。商品作物の違いによって影響は異なるのか。③開発途上国の農村社会が、より持続的な経済を構築していくためには新自由主義者と農業エコロジー派の主張のどちらが有効なのか。 2023年度に現地訪問を通じ、以下の点が分かった。西スマトラ州では、アブラヤシ栽培のほかにも、商品作物栽培として、養鶏飼料用に遺伝子組み換えトウモロコシ栽培が多く行われており、比較的広い土地を所有する裕福な農家の収入源となっている。養鶏飼料用トウモロコシ栽培はローカルな市場用ではあるが、インドネシアが都市化し所得が向上するなかで鶏肉の消費も拡大するなかで需要が増大しており、工業的な食料生産システムに生産者と消費者が組み込まれているなかで農民がどのような影響を受けているかを検討するうえで適切な研究対象であり、アブラヤシとともに検討材料にできる。一方で所有地が狭い所得が低い農家は短期間で収穫し地元の販売が可能である多様な野菜の栽培を行っており、農民間の格差が拡大していることが分かった。また、COVID-19のもとで、多くの地域住民が生業を失いやむを得ず農業を始めたことも分かった。 東クタイ県では以前からカカオの栽培が盛んだが、近年世界的なカカオ価格の高騰を受けて住民の生産意欲が高まっている。しかし一方で、カカオの栽培に関する設備や知識は不足し、生産したカカオ豆を仲介業者に安価に販売している状況であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
西スマトラ州と東カリマンタン州での現地調査を継続するため、BRINと入国管理局での延長手続きを行う。そのうえで、両州における現地調査を継続する。 さらに、「開発途上国の農村社会が、より持続的な経済を構築していくためには新自由主義者と農業エコロジー派の主張のどちらが有効なのか」を実証的に検証するため、農業共同組合の働きによって、カカオ豆の質を向上させたり、所得を向上させた事例についても検討を行う。特に東カリマンタン州でカカオ栽培に関する地域住民のスキルを向上させるために可能な方策の研究を、インドネシア共和国国立調査イノベーション庁(BRIN)生命科学と環境調査機構バイオマスとバイオ産品研究センター所属Rizki Maharani氏と協力のもと推進していく。得られたフィールドデータを補完するため、FAO, OECD, International Cocoa Organizationなどの統計データや文献データを用いる。
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