研究課題/領域番号 |
22K12565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂部 晶子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (60433372)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 中国 / 社会主義的近代化 / 公私領域 / ライフヒストリー / 婦女連 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、社会主義的近代化および産業化にともない、中国社会で生じた公私領域の分離のプロセスを再考する。中国の公共性が西洋近代と異なるのは、公的領域と私的領域の関係性が異なるためであり、またその淵源は社会主義政策の実施された1950年代から70年代の社会の編成と関わっている。社会主義的近代化推進期から改革開放期以降の転形期への転換点をはさんで、それぞれの時期における女性の社会への動員と家内領域との関係性を実証的に検証する作業をとおして、それぞれの時代の公共性と私的領域との関連について分析する。
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研究実績の概要 |
本研究は、中国における社会主義的近代化の時期(1950年代~1970年代)から改革開放期以降の転形期(1980年代~)への転換の時期に焦点をあてる。そこで新中国以降上からのトップダウンで進行していた、中国女性の労働への参加プロセスを再構成することで、社会における公共性と私的領域の自律性の連関を解明することを試みる。中国における市民的公共性は、国家の枠組みに包摂されたかたちでの人びとの主体的活動という側面をもっているが、このような中国社会の状況を準備したのは、社会主義政策の実施された1950年代から70年代にかけての人びとの動員と社会編成に関連していると想定されるためである。 本研究では、上記の目的にあわせて以下の調査段階を設定していた。第一段階は、社会主義的近代化推進期における社会的な動員政策についての通時的な資料調査と分析、第二段階は、婦女連等の団体の刊行物や雑誌の通時的分析、第三段階は、1950年代から80年前後までの社会主義的近代化推進期を過ごした人びとへのライフヒストリー調査である。 今年度の研究実績については、第一段階、第二段階での資料調査について、中国の女性労働や社会参与にかかわる調査、研究を幅広く渉猟し、一定の枠組みを得ることができた。また現地での資料調査をあきらめたことから、1950年代から1970年代にかけての日本での新聞報道、とくに女性の社会参与に関心を持つ媒体として、『婦人民主新聞』での中国での記事を中心に閲覧と収集を行った。現在、中国への調査のための入国は困難であり、自由な活動は危険ですらあるため、現地でのライフヒストリー調査の代替案として、昨年度に引き続き、オンラインをとおした聞きとり調査を実施し、そのテープ起こしを進めている。この作業により第三段階の調査を進めていった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究の展開においては、以下の点が重要である。現地調査の計画実施に関して、当初の予想とは異なり実施困難であると判断せざるを得ない。理由の第一に日本人の中国入国の諸手続きに一定の困難さがあること、二点目として、中国現地調査について現在の状況では安全に実施する見通しが得られないことである。コロナ以前の数年間でも、現地調査の折に、調査依頼を行っても、現場レベルで外国人への対応を忌避する雰囲気が生じ始めていた。その状況が改善されることはなく、コロナによる都市封鎖措置などによって、より強力に管理体制が敷かれていることを、実際に調査をしている中国人研究者仲間からの情報として得ている。そのため、当初想定していた現地調査にかえて新たな調査方法の実施を、今年度の半ばに決断することになった。 新たな打開案として以下の方法をすでに実施している。第一段階として、社会主義的近代化推進期における社会的な動員政策についての通時的な資料調査については、該当分野の政策について中国内外の研究書および中国の記録資料を集めることによっておおよその分析枠組みを得ている。第二段階として、婦女連等の団体の刊行物や雑誌の通時的分析であるが、これについても日本国内で収集できる婦女連関連の資料や書籍を網羅的に収集している。ただしこの項目はやはり現地調査ほどの詳細な資料調査は難しいため、日本国内での関連団体での中国女性についての報道を、時系列にそって網羅的に収集することで、一定の成果を得た。第三段階として、1950年代から80年前後までの社会主義的近代化推進期を過ごした人びとへのライフヒストリー調査については、実際の対面での調査を断念し、昨年度より実施しているオンラインでの同様の聞きとり調査を進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトでは、上述の進捗状況のところで詳細に記したように、調査実施の方法について、現地調査の代替案を模索し実施中である。その結果、第一段階の社会主義的近代化推進期における社会的な動員政策についての通時的な資料調査、第二段階での中国の女性団体の活動に関する資料収集については、一定の成果が見込まれる収集状況であると判断している。今後の方針としては、とくに第二段階で収集した資料についての系統的な閲読と分析が必要となっている。 さらに第三段階として企画していたライフヒストリー、ファミリーヒストリーの収集は、当初の企画とは異なるものの、2年間のオンライン調査をとおして一定のデータが蓄積しつつある。1940年代、1950年代出生の中国の女性たちは、社会主義的近代化推進期であり、社会体制が整いつつある時期に、青年期を過ごし、社会参加のチャンスを得た世代である。今後はより充実したデータ収集を図りながら、聞きとりデータの詳細な分析を進めていく予定である。 またこれら第一段階から第三段階までの調査結果をまとめたかたちで、学会での成果報告を行い、当該分野の専門家とのディスカッションを通して、分析枠組みのブラッシュアップを行い、最終的な研究論文執筆へとつなげていくことを計画している。
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