研究課題/領域番号 |
22K12609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小倉 亜紗美 呉工業高等専門学校, 人文社会系分野, 准教授 (10706203)
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研究分担者 |
王 新 環太平洋大学, その他部局等, 講師 (20724371)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | オーバーツーリズム / 野生化カイウサギ / 大久野島 / 国立公園 / 環境負荷 / 餌やり / 芝 / 観光客 / 野生化ウサギ |
研究開始時の研究の概要 |
ウサギの島として近年有名になった広島県竹原市の大久野島は、観光客の増加に伴い島に生息している野生のアナウサギが急増し、ウサギに病気が蔓延するなどのオーバーツーリズムに起因する問題が発生している。本研究では、大久野島をモデルに観光客増加による餌の搬入量の増加の影響と、ウサギの増加が及ぼす植生への影響を明らかにし、自然環境への影響を抑えつつも観光地として魅力的な環境を維持し続ける持続可能な観光の在り方を提言する。
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研究実績の概要 |
本研究は、「ウサギの島」として近年有名になったことで、近年観光客が急増した広島県竹原市の大久野島を対象に、オーバーツーリズムなどが生じている観光地の持続可能な利用の在り方を示すことを最終目標としている。大久野島では、観光客の増加に伴い島に生息している野生のアナウサギが急増するという問題が生じている。そこで、大久野島における観光客の増加と副次的に生じたウサギの個体数の増加の影響を明らかにするため、島に自生する芝などの餌の量と観光客の持ち込む餌の量との比較を行った。2022年12月~2023年11月に島内に5ヶ所の調査区を設定し、島内の芝等(芝以外の草も食べているので芝以外の草本も含めた)の生産量(Wgyear)を実測した。その結果、島内の芝等の生産量は255.5 g/m^2/year(芝のみだと179.2 g/m^2/year)と推定された。また、柵を設置しウサギによる捕食の影響を調べたところ、77.1%(芝等の173.8 g/m^2/year)が捕食されていると推定された。Google mapの航空写真から面積測定機能を用いて求めた大久野島の芝等の面積1.72×10^4(m^2)と乗算すると、島内の芝の生産量Wgyear は4.4 t/yearと算出された。2021年に観光客を対象として行ったアンケート調査調査から推定した、観光客が持ち込む餌の一人当たりの平均乾燥重量86.5 g/人に来島者数の最も多かった2017年に観光客を乗じて求めた観光客が持ち込んだ餌の量は27 t/yearと推定され,これはWgyearの6倍であった。また、調査区のうち2区画は芝等がほとんど生えていない場所を選定し、捕食圧の影響を調べたが、ウサギの捕食がない場合にも芝が生えてこなかった。ただし、芝がない場所には外来生物のメリケントキンソウが優占していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は2021年に行ったアンケート調査をもとに、観光客が持ち込む餌の量を推定した。2023年度には、2022年12月~2023年11月に大久野島の管理者である環境省の許可を得て、島内の芝の成長量の調査を行い、その調査結果をもとに、島内の芝等の生産量を推定し、観光客が持ち込む餌の量との比較を行った。これにより観光客の持ち込む餌のウサギへの影響を定量的に評価できた。また、芝等の調査を行う中で、島内の芝がなくなった場所に外来生物メリケントキンソウが優占していることを確認した。 それらの結果も学会等にて報告している。2022年は、第65回土木計画学研究発表会・春大会(2022年6月)、日本環境学会第48回研究発表会(2022年7月)、第17回日本モビリティ・マネジメント会議(2022年8)で発表したほか、2023年1月に開催された国際ウェビナー「動物と観光ウェビナー2023日本におけるワイルドライフ・ツーリズム―発展の可能性と展望―」で発表した。2023年度には、土木学会全国大会第78回年次学術講演会(2023年9月)で発表し優秀講演者に選定されたほか、The 6th NIT-NUU Bilateral Academic Conference 2023(2023年7月)にて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに、島の餌資源の量から最適と考えられるウサギの頭数を推定し、持続可能な観光の実現のために、観光客による餌の持ち込み制限などについても具体的な提言を行っていく予定である。また、これまでの成果は、学会での発表に加え、学術誌に投稿予定である。また観光客に向け、餌やりの影響について考えてもらうため研究成果をまとめた冊子を配布する予定である。
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