研究課題/領域番号 |
22K12615
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
平見 尚隆 香川大学, 創造工学部, 教授 (50774139)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | エコツーリズム / コミュニティ・ベースド・エコツーリズム / 地域共同体 / ラテンアメリカ / フィールドワーク / 地域資源 / 自然環境保護 / アントレプレナーシップ |
研究開始時の研究の概要 |
短期的な収益性が重視される市場原理がグローバル化したことで、自然環境破壊が加速し地域の持続性が著しく低下しているという社会的背景がある。代表者のラテンアメリカ諸国での先行調査では,エコツーリズムの民間レベルの浸透には国によって温度差があることがわかっている。この地域間比較をベースに、文化面を含めたエコツーリズムの浸透度を明らかにする。これを理論化できれば、各地域の社会開発が可能となり、これが自然環境・生態系維持につながっていく。
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研究実績の概要 |
本研究では、中南米におけるエコツーリズムの発生メカニズムを解明することを目的としています。2023年度は、以前からのフィールドワークのデータの整理と仮説の検討を行い、また新たなフィールドワークを中心にデータ収集と仮説検証を進めました。研究成果は随時公表されています。
アジアの3大学(タイのチェンマイ大学、台湾の国立嘉義大学、香川大学)が主催する国際シンポジウム(英語)において、エコツーリズムの発生過程を4ステップに集約する研究成果を発表しました。その後、2023年8月にメキシコのオアハカ州Sierra Norte地区で行ったインタビュー調査を基に、先住民の独立と現実問題としての投資資金の必要性がエコツーリズムの発展に与える影響を検証しました。そして、これらの地域でのCBET(Community Based Ecotourism)の開発においては、地元政府の支援が初期段階で特に重要であることが判明しました。これらの結果は国際フェスタや学術論文として発表・掲載されています。
また、メキシコにてインタビューと並行して行った、エコツーリズムに係わっている先住民に対するアンケート調査から因子分析を行い、エコツーリズムが地域文化や自然に及ぼす影響、コミュニティメンバーの権威感、ビジネスの恩恵による持続可能性の達成など、心理的要因について有意な因子が明らかになりました。これらの心理的な因子が本研究の目的である発生メカニズムの解明に関与することがわかってきました。これらに関しては継続検討を続けています。なお、2023年2月には、比較的開発が遅れているボリビアでのフィールドワークも行い、メキシコのケースとの比較に取り組んでいます。そのデータ分析結果は2024年度に発表する予定です。この研究を通じて、中南米におけるエコツーリズムの理解を深め、その発展に寄与することを目指しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、中南米におけるエコツーリズムの発生メカニズムを解明することを目的としています。特に、SDGsの観点から先住民地区のコミュニティ・ベースド・エコツーリズムに注力しています。2022年度はコロナの影響で活動が制限されていましたが、2023年度には多くの進展がありました。初めに、以前のフィールドワークから得られたデータの整理と新たなデータ収集が順調に行われ、仮説の検討も実施しています。これにより、研究成果を国際シンポジウムや学術誌で公表する機会も得て、研究の進捗が随時共有されています。
また、メキシコのオアハカ州での具体的なフィールドワークにより、先住民の独立願望とエコツーリズム発展への影響が明確になりました。地元政府の支援の重要性を明らかにすることができ、CBETの成功要因についての理解を深めることができました。さらに、エコツーリズムが地域文化や自然環境に与える影響に関する心理的要因の研究を進め、重要な因子を特定しました。これらの因子がエコツーリズムの発生メカニズムにどのように影響しているかの理解が進み、研究の深化が見られました。ボリビアでの追加フィールドワークも計画通りに実施され、これにより異なる地域でのエコツーリズムの取り組みを比較分析することが可能となりました。この比較研究は、中南米全域にわたるエコツーリズムの包括的な理解を促進するものです。
これらの実績は、本研究が順調に進展していることを示す明確な裏付けと考えています。進捗状況の共有、国際的な協力の推進、および実地調査から得られた具体的な洞察により、エコツーリズムの発生メカニズムに関する新たな知見が次々と得られています。これにより、中南米におけるエコツーリズムの発展に寄与することが期待されると確信しています。
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今後の研究の推進方策 |
当研究は中南米におけるエコツーリズムの発生メカニズムを解明することを漠然とした目的として開始しましたが、調査を進めるに従い、研究目的の根底にはグローバルなSDGsの達成があることが明確となってきました。その中でもツーリズムが貢献できる、第1目標(貧困のない世界)、第11目標(持続可能な都市とコミュニティ)、第13目標(気候行動)、第15目標(陸の豊かさを守る)を実現することが期待されてくると考えるようになりました。その為には、従来の大量観光から持続可能で責任ある観光への転換が明らかであり、コミュニティベースのエコツーリズム(CBET)が際立って注目されてくると確信しています。
そこで、これまで対象を中南米の先住民地区に絞った活動を行ってきました。今後はこれまでに得られた心理的要因に基づき、成功例と思われるメキシコとその達成レベルの差が明確であり対比可能と考えているボリビアとの比較検討を中心に行っていきます。2024年3月に現地でのフィールド調査から得られたデータの分析とメキシコのそれとの比較から、先住民の考え方の違いに基づくCBETを成功へ導いていく方策を導き出していきたいと考えています。
この研究を通じて、エコツーリズムの理論的枠組みの拡張と、実際のプロジェクト設計に役立つ実践的知見を提供することを目指しています。また、地域社会と環境の両方に利益をもたらす持続可能なモデルの構築に貢献していきます。この研究の先にはSDGsの掲げる理想のグローバル社会の実現があると信じています。引き続き、実際の先住民や、彼らを取り巻くステークホルダーや関連研究者との知見の共有や議論を通じて、さらなる研究の進展を図って参ります。
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