研究課題/領域番号 |
22K12620
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
大塚 良治 江戸川大学, 社会学部, 教授 (70412335)
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研究分担者 |
崎本 武志 江戸川大学, 社会学部, 教授 (00468951)
安本 宗春 追手門学院大学, 地域創造学部, 講師 (10826069)
美藤 信也 高崎商科大学, 商学部, 教授 (30756383)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 観光振興 / 地域連携パス / ステークホルダー / テーマパーク化 / 財務分析 / 経営戦略分析 / 事業価値 / 鉄道遺産 / パーパス / まちづくり / 経営戦略 / SWOT分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、観光振興プロジェクト(以下、PT)に関する事業評価指標を地域のステークホルダーと共有することおよび継続的な事業改善を図って地域活性化を実現する仕組みとしての「観光振興プロジェクトの地域連携パス」の開発・体系化を行うことである。本研究では、PTに対して行う財務分析と、PTをめぐる環境分析としてのSWOT分析と、ステークホルダーと目標値を共有するバランスト・スコアカード(BSC)を基にした経営戦略分析を統合した事業評価指標を体系化し「見える化」する。この「見える化」の手法として「連携パス」の開発・体系化を試みるものである。
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研究実績の概要 |
2023年度は、研究代表者および研究分担者全員で、鉄道事業者などでヒアリング調査を行った。世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の暫定リストに登載されていた「旧上野鉄道鬼ヶ沢橋梁」および「旧上野鉄道関連施設下仁田倉庫」を全員で視察し、旧上野鉄道の現在の会社である上信電鉄の役員に対してヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査では、「旧上野鉄道関連施設」の世界遺産化に向けた行政の取り組みがあれば積極的に協力したい旨の意向を確認することができた。そして同じく「富岡製糸場と絹産業遺産群」の暫定リストに登載されていた「碓氷峠鉄道施設群」についても、研究代表者が調査準備に着手した。今後、群馬県内および他県の鉄道遺産も調査し、鉄道遺産を中心とする観光振興について「地域連携パス」の作成を行い、その成果を学会誌などで報告する予定である。また、研究代表者は「鉄道における『独立採算』の修正を前提とした鉄道とまちづくりの連携 -鉄道維持財源確保とJRの『ベネフィットコーポレーション』への転換と併せて-」(『まちづくり戦略研究』第3号、2023年10月)を公表した。同論文の「まちづくりにおける鉄道の役割と地域のステークホルダーとの情報共有の仕組みの構築」において、鉄道路線の運営費用を、観光誘客を呼び込むための「投資」と位置付け、費用と効果を測定・評価したうえで、地域のステークホルダーの間でその評価を共有することで、鉄道存続とまちづくりを両立させるための打ち手とする「観光振興プロジェクトの地域連携パス」を提案した。今後、研究成果の学会誌への投稿を行うとともに、研究チーム全体の成果として著作にまとめるべく、2024年度以降の研究を進める計画である。また、研究分担者も研究成果の一部を、日本ホスピタリティ・マネジメント学会全国大会おなどでの報告などを通して公表した。引き続き、成果として公表するべく鋭意進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の「鉄道における『独立採算』の修正を前提とした鉄道とまちづくりの連携 -鉄道維持財源確保とJRの「ベネフィットコーポレーション」への転換と併せて-」(『まちづくり戦略研究』第3号、2023年10月)として公表した論文において、鉄道活性化策として「観光振興の地域連携パス」を提案することができた。ただ、内容は概念的な提示に留まった。それでも、鉄道活性化策として「観光振興の地域連携パス」を提案ることができた。今後、「観光振興の地域連携パス」の精度を高めるため、さらに多くの事例についてパスを作成し、財務分析および経営戦略分析で用いる指標の精度および種類を充実させていく。さらに「観光振興の地域連携パス」を発展させて、観光振興事業の業績評価手法および観光振興事業のファイナンス方策への展開を目指して引き続き研究を続ける。観光列車については、現状では、鉄道事業者が自力でファイナンスすることが大半であるが、観光列車のファイナンス市場が整備されれば、多様な資金提供者から資金を調達し、持続可能な観光列車を実現できる。また、鉄道遺産を活用したまちづくりの事例が増えており、今後観光振興の重要な観光資源となることが期待される。観光振興事業の業績評価には、観光産業および観光資源に関する専門的知見が必要であり、観光学を専門とする研究分担者の知見を総動員して取り組む。なお「やや遅れている」を選んだ理由は、秩父鉄道SL列車のアンケート調査の結果取りまとめはほぼ完成しているものの、結果を解釈・考察するうえで必要な先行研究のレビューが未だ完了しておらず、観光系学会の学会誌への投稿が未だ完了していないためである。できる限り早期に調査結果を取りまとめて、学会誌への投稿を行う。また、研究分担者の成果公表についても、順次進めるよう努める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、西武グループと大井川鐵道の調査を進める計画であったが、大井川鐵道が台風被害により一部区間の不通が続いており、全線再開後に調査を行う計画としていた。2024年5月時点で未だメドが立たない状況にある。西武グループについても調査の協力を得ることができず、調査対象の変更せざるを得なかった。そのため、研究計画を一部変更し、北海道ボールパーク、存廃が協議されている地域鉄道沿線地域、および鉄道遺産による地域振興に取り組む地域を研究対象とすることとした。北海道ボールパークについては、研究代表者が2023年シーズンの試合を観戦し、実際の施設を見学するとともに、交通アクセスの実態を視察した。ファイターズ・スポーツ&エンタテインメントの担当者へのヒアリング調査も引き続き実施し、開業初年度ではあるが、一定の結論を得るべく調査を進めた。北海道ボールパークをめぐっては経済効果の試算なども公表されており、これらのデータも参照しつつ、北海道ボールパークの事業価値評価およびステークホルダーとの情報共有・連携の具体的方策について一定の成果を得るべく研究を進める。また、大井川鐡道については、被災状況を視察するツアーに参加し、現状を調査するとともに、同社へのヒアリング調査を進める予定である。
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