研究課題/領域番号 |
22K12630
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
海老 良平 大手前大学, 現代社会学部, 准教授 (10880479)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 遊園地開発 / 大正時代 / 海水浴レジャー / 香櫨園 / 甲陽園 / 宝塚 / 関東大震災 / カフェーパウリスタ / 近代 / 郊外遊園地 / 私鉄沿線 / 土地開発会社 / 阪神間 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は20世紀初頭の大阪とその近郊における遊園地開発とそれに付随するエンタテインメント事業活動を対象として、具体的な史料をもとに調査を行い、その考察から我が国の遊園地の誕生期の姿を明らかにすることである。具体的には次の諸点について解明していく。 (1)第五回内国勧業博覧会を契機として展開した大阪における近代遊園地開発の解明 (2)大阪近郊の私鉄による娯楽地成立過程の考察とそれに関連する大阪の経済産業環境の解明 (3)産業資本家、在来資本家による大阪近郊のレジャー地開発の過程の解明 (4)各地の遊園地で開催されたエンタテインメント事業の萌芽(博覧会、スポーツ、演劇・音楽等)の考察
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研究実績の概要 |
本研究の目的は20世紀初頭の大阪とその周辺各地に見られた近代的遊園地の萌芽、及び郊外遊園地開発の経緯を明らかにすることであり、私鉄・地元資本家・産業資本家の各主体のレジャー・娯楽事業の展開について考察するものである。実施にあたっては関係史料の調査・収集とその検討、現地での聞き取り調査、学会や研究会での報告と論文執筆、の三つの柱で行う。 2023年度は香櫨園遊園地、甲陽園遊園地に関連する文献、史料の調査、研究を行うことを研究計画とした。2023年度の研究実績は以下の通りである。なお、甲陽園遊園地の調査は2022年度の研究実績でも記載した通り、本研究に関連する出版が2022年度中に決定したため、執筆の準備として2022年度からすでに先行して行っている。 (1)ミネルヴァ書房発行の『入門観光学改訂版』の出版:2022年度から執筆を始めた本書が2024年2月に出版された。担当した章はテーマパーク産業に関するものだったが、本研究に重ねて関西の初期の遊園地開発について言及し、それに関連する関係史料の再検討を行った。 (2)神戸新聞総合出版センター発行の『1923ー関東大震災と阪神間ー』の出版:2022年度から執筆を始めた本書が2023年12月に出版された。本書は1923年当時の阪神間に焦点を当てることを主題とし、本研究代表者が所属する大手前大学の教員(経営、建築等の教員)や地元研究者などの共著であった。本研究代表者は編著者として「7章 阪神間の娯楽とレジャー、震災前夜」を担当し、本研究に関連する大阪都市部での初期のレジャー開発、宝塚、甲陽園の震災当時の活動状況について執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は大阪周辺部である西宮市内に20世紀初頭に開設された香櫨園遊園地、甲陽園遊園地に関連する文献、史料の調査、研究を行うことが当初の研究計画であった。このうち甲陽園については、2022年度に関東大震災当時の阪神間を描写する『1923ー関東大震災と阪神間ー』の出版が決まったこともあり、2022年度より先行して実施していた。2023年度は本書の2023年内の出版に向け、本研究をもとに執筆を行ったが、その中で当初甲陽園のみに焦点を当てる予定であったものが、大阪湾周辺での海水浴レジャーの展開、宝塚、香櫨園、甲陽園の阪神間の郊外遊園地の展開、等、本研究に関連する事項を網羅する内容となった。その結果、一部積み残しとなっていた2022年度の研究計画であった大阪都市部における初期の遊園地、私鉄系遊園地に関連する文献、史料の調査について、この執筆過程において実施することができた。また、執筆過程において香櫨園遊園地に関係する阪神電鉄との協力関係を得ることもでき、その成果として充実した執筆内容を得ることができた。さらに甲陽園遊園地については、甲陽園の開発者である本庄京三郎に関連するカフェーパウリスタを現在経営している日東珈琲の幹部への聞き取り調査も2024年度前期中に行う予定である。 また、2023年度には新たに阪急文化財団との関係を築けたことが大きな収穫であった。宝塚の史料調査や研究において同財団は欠かせない存在である。先の阪神電鉄と合わせて、私鉄系遊園地の事業展開の調査、研究において重要な協力関係を得ることができた。 以上が現在までの進捗状況であり、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は本研究の総括として学会の報告と論文を執筆する予定である。学会報告と論文執筆は本研究代表者が所属する日本観光学会での報告と投稿を行う予定である。2024年度における具体的な調査、研究内容としては近代遊園地に付随するエンタテインメント事業に関連する文献、史料の調査、考察を行うことであるが、この点については2023年度に出版した『1923ー関東大震災と阪神間ー』において、震災当時の東京劇場界、映画界と阪神間との関連について注目したこともあり、その関連性について深掘りしていきたい。調査については関西だけでなく東京の映画、演劇界にわたる広範囲のものとなるため、協力関係のさらなる充実が必要となる。そのためには2023年度に築くことができた阪急文化財団との関係をさらに強化し、東京との繋がりを作っていきたい。 また甲陽園の開発者である本庄京三郎が社長を務めていたカフェーパウリスタの存在、関西の郊外遊園地に出店していたことも研究途中であるため、2023年度に引き続き、現在のカフェーパウリスタの経営にあたる日東珈琲の幹部にも聞き取り調査を行う予定である。
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