日本近代の女性作家を取り巻く社会規範に関する研究

• 研究課題/領域番号: 22K12642
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分80030:ジェンダー関連
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 水野 亜紀子 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授 (80707711)
• 研究期間 (年度): 2022-04-01 – 2025-03-31
• 研究課題ステータス: 交付 (2023年度)
• 配分額: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円); 2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円); 2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円); 2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
• キーワード: 田村俊子 / 幸田露伴 / 創作指導 / 社会規範 / 表現行為 / 樋口一葉 / 田辺花圃 / 半井桃水 / 坪内逍遙 / 女性作家 / 近代文学

研究開始時の研究の概要

本研究は、近代の女性作家に求められた創作の姿勢や文章内容に着目することで、当時の女性をめぐる社会規範の一端を明らかにするものである。女性作家が師にあたる作家から受けた指導内容や添削、批評を具体的に検討することで、女性が小説等を執筆する際に社会から求められたものについて考察する。個別の作家の例を取り上げて検討したうえで、明治半ばから大正にかけての時代状況の変化について考察する。

研究実績の概要

本研究は、近代の女性作家が師にあたる作家から受けた指導の内容や添削、批評等を検討することで、女性が小説等を執筆する際に社会から求められたものについて考察し、当時の女性をめぐる社会規範の一端を明らかにすることを目的としている。今年度は主に明治30年代以降の時代状況について考察を行うため、特に田村俊子に着目した。田村俊子が幸田露伴から受けた指導やそれが持ちうる意味について、ジェンダーの視点から考察した。具体的に述べると、田村俊子の原稿、日記、書簡、回顧録など基礎的な資料の確認から始め、田村俊子と幸田露伴との関係について確認した。さらに、当時の論説等で女性の執筆について理想や警告がどのように述べられたかを確認し、それらと実際に田村俊子に与えられた指導との間にどのような関係があったかについて調査した。当初はそれらの作業を通して先行研究でまだ深掘りされていない点や重視されていない点を検討する予定であったが、結果的に新たな発見はなかったため、今年度は基礎資料の確認にとどまったと言わざるを得ない。ただ、調査の中では収穫もあった。幸田露伴から指導を受けていたとされる時期の田村俊子の小説を検討する際、それらが掲載された雑誌の傾向と、それらの雑誌に掲載された幸田露伴の文章の内容と、田村俊子の小説の内容を並べてみると、そこには方向性として差異を見出すことができるのではないかと推測する。これを手がかりとしてさらに調査を進めれば、田村俊子の執筆活動には師の指導方針に素直に従った部分とそこから逸脱する部分があることが明らかとなり、田村俊子の創作について新たな側面が見えてくるのではないかと考える。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

調査の過程で、作家を取り巻く事実関係の検討だけではなく、作家の創作した小説の内容面に着目し、そこに検討を加えることとなった。そのため当初の予定よりも調査の進捗が遅れている。

今後の研究の推進方策

研究に遅れが生じた理由は、調査の過程で、作家を取り巻く事実関係の検討だけではなく作家の創作した小説の内容面に着目する必要が出てきたところにある。この作業には引き続き時間を費やす必要があるが、資料はすでに全て手元にあり、作業を行う範囲も明確であることから、今後の計画に支障が出るとは考えられない。このまま現在取り組んでいる作業を進める。