研究課題/領域番号 |
22K12644
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
園部 裕子 香川大学, 経済学部, 教授 (20452667)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | ジェンダーに基づく暴力GBV / フランス語圏西アフリカ / 女性 / マリ / FGM/C / EU共通庇護政策 / ジェンダーに基づく暴力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、国際条約が国内の「ジェンダーに基づく暴力」に対する「抑止力」となるよう働きかける、女性団体など市民社会の役割について、西アフリカのマリ共和国の事例から検討する。女性たちが地位向上を求めて主体的に発揮する力をエイジェンシーと位置づけ、マリ女性のエイジェンシーがどのような活動や現象として表出されているのかについて、社会学的なアプローチにより研究する。具体的には、1991年以降の民主化運動、2000年代のFGMをはじめとするジェンダー暴力に関する国内法の整備、さらに結婚法の改正をめぐる政治・社会的議論について、現地とフランス在住の移民女性による団体の果たす役割について分析する。
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研究実績の概要 |
「ジェンダーに基づく暴力GBV」とマリを含むサブサハラ・アフリカSSA女性の地位についての現状を分析するため、文献を収集するとともに、現地の報道などを手がかりに実態を分析した。マリのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数GGGIは149位であり、家父長制の慣習が根強く残る社会で、近年、女性に対する暴力が社会問題化している。FGMを行わない北部も含めて、15歳以下で結婚する女性が過半数を占め、低年齢の出産など少女の健康の課題に加えて社会的・経済的損失が大きく、強制結婚の問題もともなう。2012年の政変後は、とくに北部で経済的困難から結婚させられる少女も増加し、女性法律家団体が少女の保護活動を続けている。2020年には楽師の若手音楽家が、元交際相手でSNSインフルエンサーの女性から交際中の暴力と監禁で訴えられた。SNSで声援が拡散されボイコット運動も広まり、加害男性は音楽祭への出演が停止されるなど、マリ版#MeToo運動が展開された。 マリが批准している国連人権条約、アフリカ諸国による人権憲章、女性差別撤廃条約をはじめとする女性の権利についての憲章や条約に基づいて、GBVを罰する国内法の整備を求める声が高まっている。2019年には複数の女性団体が首都バマコでデモを行い、同年末には4つの国際・国内NGOがマリ政府を相手取り、FGM禁止法の制定を求める訴えを西アフリカ経済連合CEDEAO法廷に起こすなど、GBVが今まさに社会的な論争の的になっていることが明らかになった。これらの調査をふまえた論考を発表した。 さらにSSA女性の地位はアフリカ大陸のみならず、EUにおいても移民・難民の受入をめぐって議論が続いているため、EUの共通庇護政策とアフリカ女性の保護をめぐる政治的・法的議論についても調査し、論文をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
他の業務にかかるエフォートが増加したため、本研究に割くことのできるエフォートがその分、減少することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、文献収集を進める。マリやSSA女性についての研究は社会学に限らず、英語圏の歴史学、政治学の分野における蓄積が多いことが分かってきたため、分野横断的な分析を行う方針とする。マリではフランス軍が撤退し、隣国ブルキナファソでもフランスのメディアが国外退去を命じられるなど、引き続き西アフリカの広い範囲で政情不安定な状態が続いている。そのため、現地調査が行えるかどうかについて、引き続き慎重に情報収集して見極める。現地調査が難しい場合は、マリ国外の関係者や研究者への聞き取りを行うなどにより、専門的知識を補うこととする。
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