研究課題/領域番号 |
22K12658
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
熊本 理抄 近畿大学, 人権問題研究所, 教授 (80351576)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | レイシズム / 世系 / カースト / ジェンダー / インターセクショナリティ / 部落差別 / マスキュリニティ |
研究開始時の研究の概要 |
2000年以降、国際的な社会運動と人権政策にとって重要概念となっている「職業と世系に基づく差別」「カーストに基づく差別及び類似の形態の差別」の分析を通じ、現代における部落差別を上記概念から解明する。 また同じく2000年代に国際人権言説に導入されたインターセクショナリティ概念を用いて部落男性の権力性と社会運動及び社会政策の関連を明らかにする。 人種、階級、カースト、世系をめぐる国際的な差別研究と連携しながら、部落男性のマスキュリニティをインターセクショナリティの視点から分析し、部落差別研究の新たな理論的枠組みを構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
今年度の主な研究実績は、以下の四点である。一点目は、人種、カースト、階級、職業と世系といった概念の関連性を解明する研究が進展した点である。人権侵害の改善に向けた政策について国際人権の枠組みに照らしながら考察する機会を多数構築できた。職業と世系に基づく差別を受ける世界各地のコミュニティから成るネットワーク組織に加わることによりこれらの研究が可能となった。この過程に関与している部落問題の研究者は一人だけであり、本研究は非常に重要である。 二点目は、北米および中南米における、人種、階級、ジェンダーに関連する研究者とのネットワークを構築することにより、レイシズム研究にかんする最新の知見を得ながら研究を進めることができた点である。レイシズムならびにジェンダーをめぐって、研究、教育、社会運動は困難性に直面している。この時期に米国を含む他国において研究会等に数多く参加する機会を得たことは、部落問題研究との架橋という点からも重要である。 三点目は、米国における多様な社会運動への関与ならびに共同研究への参加をつうじて、とりわけブラック男性をめぐる国家および資本主義との関係について、社会運動家、研究者、政策立案者との協議から多くの示唆を得ることができた点である。レイシャル・キャピタリズムやブラック・マルキシズムといった概念の部落問題への適用性を検証することは未着手のため、他の差別研究との連関性を探るという点からも意義がある。 四点目は、部落史研究者および部落解放運動家との共同研究に着手した点である。部落差別と国家および資本との関係、人種、階級、カースト、ジェンダー、家父長制との関係といった側面から、上記三点の研究進捗を踏まえた議論を重ねることができた。これまでの部落問題研究を振り返るとともに、上述したような他国の差別研究を踏まえ、部落差別研究の新たな展開を国際的に発信することは重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は在外研究の時期と重なったため、レイシズム研究ならびに社会運動への関与に多くの時間を割くことができた。さらにレイシズム研究者、反レイシズム活動家との広範なネットワークを構築することにより、必要な文献調査を進めるとともに重要な示唆を多く得ることも可能であった。加えて、職業と世系に基づく差別を受けるコミュニティから成る国際的なネットワークに専門家として関与する機会を得たことにより、同差別を被るグループとの協議を重ね、部落差別との共通性ならびに相違性について考察を深めることができた。このネットワークをつうじて国連プロセスにも関与する機会を得たため、国連文書ならびに非政府組織による文書の分析にも着手することができた。 本研究の問いとして掲げた三点のうち、一、国連が定義するところの「職業と世系に基づく差別」の適用は部落差別解明にあたりいかなる態様もしくは程度をもって可能か、二、人種、階級、カースト、世系の関係解明によりレイシズム研究との架橋は可能か、の二点については当初の計画以上に、文献研究ならびに関係者との議論を進展させることができた。一方、初年度に計画していた日本でのインタビュー調査については、在外研究中のため実行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した文献研究ならびに参与観察から得た知見を整理したうえで考察を深め発信していく。またそれらを踏まえて部落史研究者、部落解放運動家、人権教育実践者、相談支援実践者と協議しながら、インタビュー調査を重点的に行なう。さらにレイシズム研究者およびカースト研究者との国際的な共同研究を継続し、部落差別研究の新たな理論的枠組みを構築することをめざすとともに、他の事由に基づく差別研究との連携ならびに差別撤廃に向けた実践および政策に貢献すべく研究を推進する。
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