研究課題/領域番号 |
22K12664
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
研究代表者 |
青木 貞雄 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 総合科学研究センター, 主任研究員 (50016804)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 中性子 / 顕微鏡 / 結像 / ウオルターミラー / Ⅹ線 |
研究開始時の研究の概要 |
中性子は結晶解析や非破壊検査のプローブとして多用されているが、有効なレンズがないため、短波長を生かした中性子顕微鏡の開発は遅れていて、数10ミクロン程度の分解能に留まっている。 本研究ではⅩ線結像用のウオルターミラーを中性子顕微鏡に利用する。ウオルターミラーは、斜入射全反射を利用した結像素子で、色収差がなく集光効率が高い。中性子も特定の金属面で効率よく全反射を起こす。中性子顕微鏡システムは、ウオルターミラーを基本にした集光ミラーと対物ミラーの組み合わせから成る。中性子源として、J-PARCおよびJRR-3の冷中性子を利用し、分解能1ミクロンを目指す。並行して、新しいウオルターミラー製作も行う。
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研究実績の概要 |
非破壊検査法の代表的なものとしてⅩ線と中性子によるイメージングがある。Ⅹ線は原子番号が大きくなるにつれ透過率が小さくなるが、中性子は原子番号とは無関係な透過率を示す。特に、水素やリチウム、ホウ素などの軽元素では、中性子との相互作用がⅩ線に比べて極めて大きく、Ⅹ線では困難なイメージングが可能になる。この特性を生かした中性子ラジオグラフィーは植物や燃料電池内部観察などに用いられている。 しかしながら、従来の中性子ラジオグラフィーはレントゲン写真のような単なる影絵的な投影法であるため、光源の大きさあるいは検出器の解像度によって空間分解能が制限され、10ミクロンを切る事が大変難しい。この困難さを解決するひとつの方法として、中性子を結像できる光学素子の利用が考えられる。幸いにして、冷中性子(波長0.4nm以上)は特定の反射材に対して、すれすれ入射(斜入射)では有意な反射率(全反射)を示す。この性質を利用したミラーはⅩ線顕微鏡の結像素子として用いられ、同様の波長域で1ミクロンを切る分解能を示している。 本研究では、Ⅹ線顕微鏡用として開発されてきたウオルターミラー(回転楕円面と回転双曲面の組み合わせミラー)を中性子の結像に適用し、中性子顕微鏡システムを構築する。当該年度は、日本原子力研究開発機構のJRR-3号炉に設置されているCNRFビームラインの利用を想定し、実験計画を立てた。本ビームラインは、中性子ラジオグラフィー用として設計されており、本研究の波長域をカバーしている。中性子顕微鏡光学系素子として、0.1nmより長波長Ⅹ線の集光・結像に使用した3種類のウオルターミラー(白金反射面)を検討した。それぞれのミラーの中性子結像特性評価のため、令和5年度JRR-3実験課題「中性子顕微鏡照明系ウオルターミラーの集光結像評価」を申請し、採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で使用する中性子顕微鏡の結像素子は、既にⅩ線顕微鏡(波長0.1nm以上)の集光・結像に利用され、1ミクロン以下の解像力を有している。顕微鏡としての性能は、結像素子の解像力以外に光源輝度によるところが大きい。今回利用する原子炉中性子源は、実験室系Ⅹ線源や放射光光源に比べ、光源サイズが著しく大きく輝度が極めて小さい。そのため、高分解能イメージングには長時間の露光が必要になる。露光時間の短縮のために 中性子顕微鏡光学系は、試料照明用の集光ミラーと拡大結像用の対物ミラーから構成する。試料面に多くの中性子を集めるため、集光には開口の大きなウオルターミラーを使う。可視光による集光実験を行った結果、効率よく集光することが証明されたが、その開口数にマッチングする対物ウオルターミラーの必要性が生じた。この問題を解決するため照明光学系の工夫、あるいは、試料からの散乱光結像による暗視野法の採用などの検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
日本原子力研究開発機構JRR-3号炉に設置されているCNRFビームラインの利用実験計画申請が採択されたので、その光学系の準備を進める。具体的には、実験に必要な物品の入手、実時間画像計測のための検出系の組み立て、装置の制御とデータ取得の自動化を検討する。集光照明系と拡大結像系の組み合わせ光学系を設計・製作する。最終的には比較的長尺の光学系(約3m)になるので、それに適したビームラインの選択が課題になっている。JRR-3あるいはJ-PARCのいくつかのビームラインを候補として検討を重ねる。
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