研究課題/領域番号 |
22K12675
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
草野 広樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 研究員 (10547615)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 中性子検出器 / シンチレータ / パルス波形弁別 / 水分計測 / 月惑星探査 |
研究開始時の研究の概要 |
月や火星などの表面の水の存在量と分布の把握は、太陽系進化過程の理解の促進や有人宇宙活動の資源としての利用のために重要な課題と認識されている。銀河宇宙線により天体表層で生成される中性子を利用した中性子分光法は、表層深さ数十cm程度に含まれる水分量を推定するための有力な手法である。本研究では、月惑星探査ローバに搭載して水探索を行うことを目的として、熱中性子から高速中性子までの幅広いエネルギー帯に対応可能であり、小型軽量・低消費電力な中性子分光計の開発研究を実施する。
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研究実績の概要 |
月表層の水の存在量と分布は、惑星科学や宇宙資源の観点から注目されている。中性子分光は表層に含まれる水分量を推定する有力な手法であり、本研究では、熱中性子から高速中性子までの幅広いエネルギーに対応可能で宇宙機搭載リソースの小さな中性子分光計の開発を目的とする。 2022年度は、月面中性子環境のシミュレーション計算と検出器試作機の基礎特性評価を実施した。月面中性子環境は、銀河宇宙線による月面での中性子生成・輸送について、Geant4を利用して定量的に評価した。本研究により、漏出中性子が水の深さ分布の影響を受けること、漏出中性子計測により含水層の深さ・厚さを制約できる可能性があること、が示された。これは、ローバ探査のようにその場の局所的な条件に依存する場合に、水分量の定量精度の向上および利用可能性の評価のために特に重要である。 中性子検出器の基礎特性評価では、検出器応答のシミュレーション計算をもとに仕様を決定し試作機を製作した。シンチレータは、リチウムガラス(GS20)と波形弁別プラスチック(EJ-276D)を接合したホスウィッチ型とした。PMTとデジタイザで信号波形を取得し、発光減衰時間の違いを利用して粒子弁別を行った結果、GS20とEJ-276D、およびEJ-276Dの高速中性子とガンマ線を弁別できることを確認した。弁別性能の良さを表す性能指数は、電子等価エネルギー200 keV以上に対して、EJ-276Dの中性子とガンマ線が1.2以上、EJ-276DとGS20が2.1以上となり、十分な弁別性能が得られた。また、熱中性子遮蔽材(カドミウム)を利用することで、GS20により熱外中性子を計測できることを確認した。従って、熱・熱外中性子、高速中性子、ガンマ線を波形と熱中性子遮蔽により弁別して計測可能であることを実験的に実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子分光に関連する数値シミュレータを構築し、シミュレーション計算の結果として、水の存在形状に対する漏出中性子の感度についての知見を得ることができた。中性子検出器は、試作機の特性評価により、計測の実現性を実験的に実証することができた。以上は、当初の研究計画の通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
中性子分光計の小型軽量化のため、シンチレータの光検出器としてSiPMを利用した中性子検出器を試作し、性能評価を実施する。SiPMは、小型軽量で動作電圧が低く、宇宙ローバ搭載に適した特徴を持つ。PMTの場合と信号波形の時間特性が異なることが予想されるため、信号読み出し回路の検討、波形弁別条件の最適化を行い、PMTの場合と同様に、熱・熱外中性子、高速中性子、ガンマ線の弁別計測が行えることを実証する。
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