研究課題/領域番号 |
22K12682
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土屋 潤 九州大学, 芸術工学研究院, 講師 (40448410)
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研究分担者 |
須長 正治 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60294998)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 外装用木材 / エイジング / 木材保護塗料 / 光劣化 / 耐候性 / 経年変化 / 木材仕上げ / 視覚印象 / 紫外線劣化 / 味わい |
研究開始時の研究の概要 |
木材の質感を生かした木材仕上げ表面のエイジング過程は複雑で、いくつかの要因が複合的に影響している。その中でも、木材表面の変退色の原因として、特に紫外線の影響は大きく、種々の研究が行われている。しかし、長期的な使用に伴うエイジング効果を加味した系統的な研究例がなく、使用樹種・表面性状と視覚心理的な質感評価の関連性については充分に検討されていない。 本研究では、特に木材の経年変化で重要となる紫外線による表面色の初期変化に着目し、木造建築物の内外装に使用される木材仕上げ表面の紫外線暴露による表面色の変化と、これが視覚印象に及ぼす影響を検討し、エイジング効果が得られる条件を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
木材の表面色変化について気象劣化要因の1つである紫外線に着目して実験を行った。この実験では、木材表面の滑らかさや様々な塗料による塗装など、いくつかの表面の条件の木材に紫外線を照射し、それによって引き起こされる木材表面の変色を観察・分析することで、木材の表面加工と紫外線の関係について基礎的知見を得ることを目的とした。 また、本実験で得られる結果を、今後行う屋外暴露試験の結果と比較しやすいように、各試験体の変色の推移を詳細に記録した。実験の結果、以下のような知見が得られた。 ①全ての試験体が紫外線を照射することで黄方向に濃くなるように変色した。スギとヒノキにおいては、心材よりも辺材が強く変色し、その色の差は小さくなった。 ②ヤスリ掛けすることで、より変色が進行した。ヤスリの番手と変色の大きさの間に、全材種で共通するような特徴は見いだせなかった。 ③保護塗装によって紫外線照射による変色は抑制される。屋外用塗料と屋内用塗料の間に、紫外線による変色の抑制効果の差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、木材の表面加工と紫外線による変色の関係について基礎的知見を得ることを目的とした実験を行い、研究実績の概要に示したような知見が得られた。 特に、スギ・ヒノキ・クリの各樹種とその心材・辺材の変色傾向は、黄方向に濃くなることと、スギ・ヒノキは心材よりも辺材の変色程度(速度)が大きいことが明らかとなった。このような傾向は既往の研究でも示されているが、今回の実験で用いた短波長253.7nmの光源による照射実験でも同様の傾向であることを改めて確認することができた。 また、ヤスリによる表面加工はプレーナー仕上げよりも、紫外線照射後の表面色変化が大きいことが明らかとなった。一方、ヤスリの番手と変色の大きさに明確な関係は見いだせなかった。このことから今後は再度、異なる番手のヤスリを用いて、木材の表面性状を定量化し、その関係を明らかにする必要がある。 塗装試験体に関しては、屋外用塗料と屋内用塗料ともに、塗装を施していない試験体に見られる紫外線照射開始 10 時間後の急激なΔ E* ab 値の増加を抑制し、変色を緩やかにする効果があったが両塗料に変色の抑制効果の差は見られなかった。本実験では雨風による風が再現されず、雨水への塗料の溶出や剥離が起きなかったため、屋内用塗料であっても塗膜が消失せずに、変色の抑制効果に差が生じなかったという可能性が考えられる。 このようなことから、本研究は当初の計画どおりに進展しており、今年度も上記の課題を究明するためにさらに実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1年目の実験で得られた材種や表面加工と変色の関係についての知見と、今後行う屋外暴露実験で新たに得られる知見を併せることで、木材とその表面仕上げの適切な選定のための指標の提案を目指す。特に、屋外用塗料と屋内用塗料に変色の抑制効果の差が見られなかったのは、本実験で雨風による風化が再現されず、雨水への塗料の溶出や剥離が起きなかったため、屋内用塗料であっても塗膜が消失しなかったことで、変色の抑制効果に差が生じなかったという可能性が考えられるため、屋外暴露試験において再現されるその条件下での塗装の効果を注視する。 またエイジング評価も考慮し、被験者実験を予定している。この実験では、紫外線を照射する前後の試験体と屋外暴露する前後の試験体の印象を被験者に評価させ、エイジング評価に及ぼす要因を明らかにする。また、表面色変化の影響について検討するため、CGを用いた評価実験も行う予定である。
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