研究課題/領域番号 |
22K12709
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
篠崎 健一 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80612613)
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研究分担者 |
藤井 晴行 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (50313341)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 身体的経験 / 生活 / 行為 / 改修 / 共創 / 民家 / 石垣 / 伊是名 / 意思決定 / VGA / 琉球 / 行為の概念 / 持続と変容 / 空間 / 定位 / 伝統的琉球民家 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,建築空間のありたき姿としての形の決定の仕組みを,行為の概念に注目して明らかにする。行為の前提と結論に基づいて,行為の決定プロセスを目的[大前提],信念(目的と手段の関係)[小前提],意図される行為[結論]を関連づける実践的推論として定式化し,意思決定のプロセスを可視化する。住まうことの意識がもたらす空間の構築と改変のモデルを生成し,建築空間の持続と変容を論理体系にのせて理解する。 本研究は,私たちが生活する(生きる)実在のフィールドから抽出する,住まいの空間構成の状態の記述(実体的側面)と住まい手の語る自然言語の定性的データ(意識的側面)を用いて分析し,形の決定の仕組みを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題に関連して,①本実施状況報告書10の研究発表リスト記載の学術論文を日本建築学会大会(近畿)発表した。リスト順に内容を記す。1)数学的解析の洗練が建築空間に住むことをよく表現するためには,解析を解釈するものの身体的な空間の経験が重要であるという知見を示した。2)新たな改修内容の地区住居の改築を地区民家の改築の特徴と比較し,空間構成の仕方や使用材料が異なっても住まい方や生活行為は共通する可能性を示した。3)改築と居住者の住意識の変容の関係を論じ,空間の実体的構成が変わっても居住者の住まい方は変化しない場合があることを示した。4)伊是名のリアルな敷地におけるMixed Realityと東京の研究室からの遠隔デザインによるTele-Existenceを同期させた共創デザインに向けた試みを紹介した。 ②次の論文を日本建築学会計画系論文集に投稿し現在査読中である。5)篠崎健一,藤井晴行,佐藤幸峰,高野真実,琉球民家の雨端空間の持続と変容について(沖縄伊是名集落に現存する伝統的琉球民家の空間変容の探究) ③民家改修行為の分析・考察を継続遂行している。 ④伊是名村伊是名地区における臨地調査研究を本格的に再開した。これにより,a)既存琉球民家が十分に手入れされず崩壊が進行する例が多数あること,一方で,新たな改修事例があることを確認している。新たな改修事例は詳細調査し,これまでのデータを更新している。b)石垣マニュアル(空間図式研究会『石垣を積もう!石積みマニュアル』(2018.3.))に基づいて,石垣築造行為の再確認のために,地区にて小規模な石垣築造活動を行なった(2024.3.)。 ⑤本年度は,11月, 12月, 1月, 3月に現地調査を遂行している。2024年3月に調査研究の定例(毎年度末)地区報告会をおこない,地区住民,村関係者らと意見交換した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既収集データの整理・分析,それに基づく論文執筆と,調査再開による臨地調査研究を両輪とし課題を遂行している。これまでの活動に基づいて,①以下の学術論文を2024年度の日本建築学会大会(関東)にて発表する(2024.8.予定)。6)篠崎健一,藤井晴行,清水 杏,琉球民家の雨端の改修による空間変容の特徴と住み方についての洞察,7)藤井晴行,篠崎健一,土着技術の継承の構成的方法論 - 琉球民家の石垣築造からの気づき。6)は研究実績の概要④a)に述べる地区民家の新たな改修事例の詳細調査に基づく論考で,7)は④b)に述べる石垣築造再開,再確認に関連する。 ②現在投稿中の学術論文(研究実績の概要②)において,民家の雨端空間に注目した空間変容の特徴のタイプを抽出している。これらの改修タイプの特徴は,改修による空間変容の進度に従うようにもとらえられる。すなわち民家の空間変容を系統的に表現する樹形図の描出に寄与する可能性があると考えている。 ③これまでの調査の蓄積,例えば報告書(篠崎健一,藤井晴行,ほかによる臨地調査報告書『伊是名集落調査まとめⅢ(5冊組:図面編,語り編,生活編,民家の改修基礎資料(前後編))』, 空間図式研究会,2020.3.),その後の調査による知見,①を含む日本建築学会年次大会発表学術論文,に基づき,またそれらを発展させて,上述②のように,本課題の目的に迫ることの可能性を見出している。 ④同時に,これまでの調査研究から,改修による民家の空間変容にも関わらず,地区民家にこれまで備わってきた空間の性質や,民家における居住者の生活行為,両者の関係が,伝統的に継承される場合と可能性があることを見出している。これも本課題の目的である民家の変容の樹形図の作成に寄与すると考えている。 ⑤石垣の築造に関する考察,探究も同様に,本研究課題を構成する。 これらを本格的に再開,遂行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,①研究を発展させつつ,②研究を整理しひとまとまりをつけることに主眼を置く。同時に,③関連する新たな研究課題を抽出し確立する,④これまでの調査研究成果を一般に公表することを計画したい。具体的には, ①・②においては,まず,住居の西側炊事屋空間に着目して空間変容の特徴をとらえること,これを行為の概念を用いて分析することを行いたい。現在投稿中の雨端に注目した論考と合わせ,民家の変容の系統の大枠をとらえられる可能性があると考えている。民家の空間を三次元的にとらえる考察も進めたいと考える。また,石垣築造を再開し,石垣マニュアルの表現と石垣築造行為の関係の考察を進めたいと考えている。地区民家の継続調査のための長期滞在を検討している。石垣築造は6月末に第1回の活動を,8月初旬に第2回を行うことを決定している。 ③は,①・②の遂行により明確になると考える。ひとつの可能性は,本研究課題の適用(実装)可能性と考えられるが,地区の歴史的重要住居の保存継承の実現を目指すことかもしれない。地区,村およびその他関係者との間で,そのための協議をすでに開始,継続している。本課題の目的である,ありたき姿の形の決定の仕組みの探究は,民家改修のみならず,民家が重要な構成要素のひとつである地区伝統的景観の継承の仕方の探究につながると考えている。その観点からは,石垣の築造も同じようにとらえられる。 ④は,本課題探究の基盤である調査報告書や発表学術論文などを,一般的な資料や書籍として公表する可能性の探究である。地区および村や琉球の資料としての活用と同時に,本研究はひとつの地区の総合的な研究としての固有性と一般性を兼ね備えると考えるからである。 これらを総合し,研究を遂行する。年度末3月に例年通り報告会をおこない地区住民および村関係者と意見を交換する場を設ける予定である。
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