研究課題/領域番号 |
22K12719
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊哉 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 助教 (70311545)
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研究分担者 |
守岡 知彦 国文学研究資料館, 研究部, 特任准教授 (40324701)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 説文解字 / 書誌学 / 木版印刷 / 改刻・改彫 / 校訂 / 小篆 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の康煕字典字形は、説文解字の小篆を根拠として伝統的な筆写字形を改めているものが少なくない。現在見ることができる説文解字は許慎原本や唐代石經の楷書よりもずっと下った南唐末(小徐本)・北宋初(大徐本)に成立したテキストに基づくものだが、元・明代には出版が少なく、現在利用されているのは清刻本である。現在通行の両本とも、初印本出版後に何度も改彫が加わっていることが知られる。これは清代には説文学が大きく発展したために、「清代まで誤って伝わった部分を修正する」ための改彫とみられ、現在通行の影印本が最終版であるかも明らかでない。日本に残る二徐の清刻本の影印を調査し、改彫の過程を明らかにする。
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研究実績の概要 |
第二年度は、初年度にデジタル化した陳昌治本の画像を精査してその改彫の調査を進めた。 京都大学人文科学研究所所蔵本(京大人文研本)、名古屋大学総合図書館所蔵本(名大本)、早稲田大学図書館所蔵本(早大本)と、中華書局影印本(1963年初版本、ただし初印本の入手が困難なため香港中華書局による1972年印刷)、中華書局重新製版本(2013年初版、2017年第11次印刷)に対して、田泉と胡永鵬の先行研究で調査された箇所(合計123箇所)をすべて確認した結果、京大人文研本は胡永鵬が早印本として報告した甲種本、早大本は後印本として報告した乙種本に相当することが確認できた。 すなわち、京大人文研本が附録の説文校字記を含まないのは、残欠本なのではなく、校正が未完了の状態であったため、校字記は附されていなかったと考えられる。また、胡永鵬の調査報告に2か所の転記ミスと思われるものが見つかり、それを除けば早大本の本編については乙種本の中で最も早くに刷られたと判断された北京大所蔵本と同等であることがわかった。ただし、胡永鵬は乙種本の成立時期を附録の説文通檢に光緒5年の末題があることをもとに推測したが、早大本や北京国家図書館所蔵本にはこの末題が無い。附録のみが改版される可能性も考えると北京大所蔵本の本編と早大本の前後関係はまだ確定できない。 また、名大本は残欠本であり、巻15も欠けているので、説文校字記が附されていて脱落したのか、附されていなかったのかは不明である。胡永鵬の調査個所を確認すると、大半の箇所では乙種本に符合するが、説文校字記が記す修正箇所が修正未完了となっている箇所、乙種本と異なる修正となっている箇所も見つかり、乙種本への校正作業中のものである可能性が疑われる。以上の成果をじんもんこんシンポジウム2023、また、第四届早期中國經典研究國際學術研討會にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も社会情勢のため海外渡航調査は困難であったが、北京国家図書館による漢籍画像の公開の拡充によっていくつかの資料を遠隔で調査することができた。ただし、目録は十分に整備されておらず、善本書目などで公開されていた書誌情報とインターネット公開されている画像の紐づけが難しく、先行研究で参照されていた文献がどれなのかはっきりわからないという問題は残っている。 陳昌治本の校字記は平津館本の誤りを190箇所指摘するが、先行研究が指摘する「早印本では校字記が誤りと記す状況になっているが、後印本では校字記が正しいとする状況になっている」ものは40箇所程度であり、大半は早印本の段階で既に直されていたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は祁シュン藻本の調査を進める。デジタルテキスト化に関しては、国立国会図書館のNDL古典籍OCRでのテストを進めているが、「令和4年度NDLOCR追加開発事業及び同事業成果に対する改善作業」にて1900年以前の印刷物の読み取り精度がversion 2以降低下していると報告されているように、version 1のほうが精度が良い結果を得ている。撮影画像を高詳細にしても認識精度の向上には限界があるため、四部備要などの活版印刷された資料での補助を試みたい。 関連して、宋版本の楷書字形とデジタルテキストでの正規化に関して、HDICでの宋本玉篇の事例を調べることができるよう、宮内庁書陵部所蔵宋刊本の斯道文庫公開画像をCHISEから参照するための対応データを作成し、CHISEの検索結果から当該ページの書影画像を参照できるよう追加した。 また、データ校正作業の際の異体字からの正規化候補を得るツールとして、文字情報基盤整備事業のMJ縮退マップのビューワを設計している。同様のツールとして、もともとはIPAが「UCS関連文字マップ」(のちに「関連文字グラフ」)として提供していたものがあったが、データベース機能を持つサーバが必要なシステムであったため、移管ができず廃止された。また文字関連性をユーザ側で改変可能とするため、サーバなしに静的なデータだけで動作するよう作成している。
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