研究課題/領域番号 |
22K12720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
塩崎 亮 聖学院大学, 基礎総合教育部, 教授 (70825687)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ドキュメント理論 / デジタル保存 / ソーシャルメディア / 萎縮効果 / 納入制度 / 国立図書館 / ドキュメント |
研究開始時の研究の概要 |
不特定多数の個人がソーシャルメディア上に公開したドキュメントは、誤情報・偽情報を含めて現代社会の諸相が記録された貴重な史料と将来なりえるが、それらを第三者が収集保存する行為は個人の諸権利を侵害する可能性があり、長期的に利用できる社会的な仕組みは確立されていない。本研究ではそれらソーシャルドキュメントの潜在・顕在利用者と文化遺産機関の関係に焦点を当て、国単位でのコレクション構築の可能性について理論的・実証的な検証を行う。
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研究実績の概要 |
2022年度はソーシャルドキュメントの保存に関する理論研究(A)と実証研究(B)を実施した。 Aについては、人工物の存在論およびデジタル保存の議論とドキュメントの存在論との親和性(何かの証拠となるドキュメントとは、ある領域における記録者/受容者の志向的作用によりドキュメントとして存在し始めるといえ、その存在は物質/記号/意味という複数の側面からとらえることができ、その多面性を維持するためにはビット列/再生環境/文脈の依存関係をも記録・保存する必要があること)を整理した。あわせて、ソーシャルドキュメントを第三者が収集保存する行為は法的・倫理的な課題やリスクを生じさせ、費用対便益の観点からもその行為を正当化する必要があるため、本研究ではデジタルドキュメントを含む「納入制度(legal deposit)」の機能を法と経済学の観点から考察した。いずれの結果も査読付き国際誌で公表済みである。 Bについては、エビデンスにもとづくナショナルコレクション構築の実現へ向けて、既存(図書や雑誌など)および新規(ソーシャルメディアなど)のタイプのドキュメントを保存することの必要性とそれらの優先度に対する市民の意識を質問票調査により比較検証するとともに、必要性および優先度に対する意識がどのくらい強固なものなのかをサーベイ実験にもとづき確認した。加えて、公権力がオンライン上の公開コンテンツを一律的に集める行為は言論活動に対する「萎縮効果」を生みかねず、法制度化は困難との指摘が20年以上前になされて以来、日本では議論そのものが停滞しているが、そのような萎縮効果がユーザ生成コンテンツの収集において実際に生じうるのかどうかをサーベイ実験にもとづき検証した。いずれの結果も公表予定の段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソーシャルドキュメントの保存に関する理論研究については一定の成果を公表でき、予定していた実証研究の一部についてもデータ収集・解析を終え、論文として投稿するところまでは達成できたことから「おおむね順調に進展している」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
ソーシャルドキュメントを第三者が収集する行為を許容しない層が一定程度いることと、非許容の主な理由が情報プラバシーに関する漠然とした懸念であることまでは以前の調査で確認済みである一方、許容する層の意識については明らかにできていないため、2023年度は、たとえば文化遺産機関で実際に収集されている個人ブログサイトの管理者を対象として、探索的なインタビュー調査を実施する予定である。 また、ソーシャルドキュメントを第三者が収集する行為を許容しない態度の強さやその背景的要因を明らかにし、デジタル保存に関する効果的なアドボカシー活動を展開できるよう、行動経済学の知見を援用して、「現在性バイアス」(これまでに残されてきたものをこれからも保存することと異なり、将来価値が不確かなものをこれから保存しだすことには意義を感じにくいのではないか)または「損失回避バイアス」(一般個人は二次利用者とならないためメリットを感じにくく、予期せぬリスクを単純に回避したいと反応しただけではないか)といった認知バイアスの有無を質問票調査により検証する想定である。
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