研究課題/領域番号 |
22K12727
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹田 章作 立命館大学, 映像学部, 教授 (30756185)
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研究分担者 |
斎藤 進也 立命館大学, 映像学部, 准教授 (70516830)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 映画館文化 / 手描き映画ポスター / 映画館地図 / データベース / 非フィルムアーカイブ / 映画看板 / 手描き映画看板 / 映画館 / 観客 / ポスター |
研究開始時の研究の概要 |
昭和の映画全盛時代に映画フィルムと観衆を繋げ映画文化の一端を担ってきた映画館の独自の文化について「関連資料とオーラルヒストリーのデジタル保存」、「アーカイブ管理システムの開発・運用」、「人的ネットワークの構築」という3つの方法を用いた“映画館文化”を保存するための実践的研究を展開していく。そして、この目的にアプローチするプロセスを通じ、「映画館文化研究」を既存の映画研究の体系へと接続するとともに、デジタル・ヒューマニティーズの観点から非フィルム資料の保存と継承に関する方法論的知見の導出を目指す。
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研究実績の概要 |
・映画館文化に関する関連資料とオーラルヒストリーのデジタル保存について:関連資料については①手描き映画ポスターのデジタル保存と原物整理、②映画プレスシートの整理とリスト化、③映画館地図の作成等を行った。 本研究の目的の一つは映画館が提供していた多様な文化的価値を再考することであるが、①においては立命館大学アート・リサーチセンターのデータベース(DB)技術を使い独自のDBを構築した。DB作成に当たってメタデータに関する新たな調査を行うことで、映画館と手描きポスターとの関係やフィルムが存在しない(焼失などによる)映画作品ついての情報などが明らかになった。②に関しては宣伝材料としてのプレスシートのリストを作成することで、記載されたキャッチコピーやアピールポイントなどが実際の映画内容とどれだけマッチしているのか、また興行面から見た映画コンテンツとは何か、という問題に関して映画館文化という側面からアプロ―チするための準備が整ったと言える。③では既存の映画館リスト(1964年頃)を基に京都の映画館地図を作製した。映画館地図作成過程で映画館の配給系列の変遷を辿ることができ、映画興行の歴史を映画館側から考察することができた。また今回データ保存したオーラルヒストリーは主に映画看板製作に関するものであるが、その仕事の様子から1960年代当時の映画館の賑わい、映画産業の華やかさが実感できた。 ・アーカイブ管理システムの開発・運用:上記①でも記載した通り、手書き映画ポスターについては既に基本フォーマットでのDBが構築できているが、映画館地図に関しては時代区分ごとに地図レイヤーをもつ情報閲覧ビューをDBに組み込む方法を開発中である。 ・展示会の開催と人的ネットワークの構築:人的ネットワークに関しては非フィルムアーカイブに関心のある機関との協力関係を構築し、資料や情報の提供が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記①に関してはメタデータの調査と整理に予想外の時間がかかり、総数815枚の手描きポスターの内、とりあえず250枚についてのみDBにアップロードした。現在はテスト的にDBを限定公開し、内容の確認を行っている。予定よりも遅れてはいるが、基本的なフォーマットが出来ているので、今後の予定が立てやすくなった。②については現在保有しているプレスシート総数約3000枚程度の内、637枚について基本的なメタデータと共にリスト化した。③では京都の映画館リストに年代ごとの館名及び系列の推移を記載した。これによって時代区分ごとに地図レイヤーをもつ情報閲覧ビューをDBに組み込む準備ができた。 そのリストを基に1964年頃の京都市内の映画館マップを作製した。また神戸市、大阪市、北九州市の映画館マップを入手し(全て1960年代)、映画館地図作成のノウハウについて比較検討を行った。手描き映画看板のデジタル保存についても既存の紙焼き資料のデジタル化を進めているが、同時に映画館のDBと関連付けるためデータ整理を行っている。オーラルヒストリーについては映画看板製作関係者及び劇場関係者3名のインタビューデータをデジタル保存した。 アーカイブ管理システムに関しては基本となるDBが現在データ作成中のため、まだ具体的には着手できていないが、研究分担者によってシステム構築の検討は進行中である。 展覧会の開催についてはコロナ禍のため現在は開催を見送っている。人的ネットワークに関しては既に繋がりのある「おもちゃ映画ミュージアム」、「神戸映画資料館」、「堺市立東文化会館」に加え、北九州の「松永文庫」、京都の「城陽市歴史民俗資料館」ともコンタクトを取ることができ、資料提供などの協力関係を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
手描き映画ポスターのDB構築に関してはデータアップ作業の継続及びメタデータ項目の見直しを行う。これは現在仮公開されているDBは立命館大学アート・リサーチセンターの既存のものを使用しているため、映画ポスター用にカスタマイズする必要がある。この項目に関しては2023年度完成を予定している。プレスシートのリスト作成も継続して行う。方針としてはまずタイトルだけのリストを作成し、全体が見えたところで50音順にIDを振り邦画と洋画に分けて整理する。次にID順に現物のファイリングを行い、最後がデジタル保存の作業となる。この作業は枚数が多いので2024年度完成を目処に行う。映画館地図は年代区分を5年とし、1950年~2000年について京都市の地図にプロットする。これは前述の時代区分ごとに地図レイヤーをもつ情報閲覧ビューをDBに組み込むシステムの元データとなる。この地図の作製は2023年度の前半には終わらせる予定。これと並行して京都市の住宅地図を参考に各映画館の所在地データを検証していく。手描き映画看板のデジタル化作業も継続して行う。今後の課題としてはデジタル化された看板写真と映画館地図のリンクを予定している。この作業が早く進めば、アーカイブ管理システム構築の前に、その内容が可視化できる可能性がある。 アーカイブ管理システムに関しては2023年度はDBの完全構築と並行してシステム開発にも注力する。年度内に簡単なサンプル作成を目指す。 展示会については2023年秋には立命館大学アート・リサーチセンターの展示室にて「手描き映画ポスターと看板の世界Ⅲ」を開催する予定。ネットワークに関しては現状を維持しつつ、新たに「国立映画アーカイブ」、「鎌倉映画資料館」等とコンタクトを取り2024年をめどに、全国に映画館研究ネットワークの構築を展開する。
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