研究課題/領域番号 |
22K12748
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
喜多 伸一 神戸大学, 人文学研究科, 名誉教授 (10224940)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ワーキングメモリー / 視覚障害者 / 空間的記憶 |
研究開始時の研究の概要 |
視覚障害者を対象としてこれまで行われてきた実験的研究は,コミュニケーションや自律移動の障害のような,視覚障害者の「弱さ」に注目したものであり,それぞれの障害を克服するための支援の研究と実践に結びついてきた。これに対し本研究は,ワーキングメモリー能力の卓越性という,視覚障害者が持つ「強さ」に注目しており,視覚障害者の社会参画や就労支援の研究と実践に結びつくことが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,視覚障害者が日常生活で見せる記憶能力の卓越性の実験室実験で実証することである。視覚障害者の日常生活を見ると,事務作業,食事,料理,化粧など,手が届く範囲に多数の物品を並べて,それらの物品を適切に操作することにより,遂行されているものが多い。重要なことはその作業に必要な多数の物品を見ることができず,記憶に基づいて行っていることである。こういった日常現象は,視覚障害者のワーキングメモリー能力が晴眼者よりも優れていることを示唆する。 日常生活の観察から得られて仮説の実証に関し,2023年度は,2022年度に行った空間的ワーキングメモリーに関する心理学実験を,課題を変えて行った。2022年度は,マトリクス・パターンを言語的に提示し,そのパターンに回転のような変換を加え,やはり言語的に回答してもらった。これに対し2023年度は,円環上に配置した物体をクロックポジションを用いて言語的に提示し,言語的に回答してもらった。2つの実験の結果はいずれも視覚障害者の成績が晴眼者の成績よりも優れていることを示しており。視覚障害者におけるワーキングメモリー能力の卓越性が,複数の課題に共通して示された。 これらの実験は,聴覚や触覚など視覚障害者に有利な他感覚を用いていないこと,視覚障害者や晴眼者の日常生活とはかけ離れたのもでありどちらにも有利に働かないことといった,視覚障害者と晴眼者を対等に比較するための要件を見たしているので,本研究の目的に合致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では視覚障害者と晴眼者の記憶能力を対等に比較する実験を行う。2022年度はそのような実験手続きを考案し,実際の実験を行うことに成功した。対等な比較のためには,1) 視覚障害者は視覚以外の感覚モダリティに依存する度合いが高いので,空間情報を音像定位や聴覚で以外で提示する必要がある,2) 視覚障害者にも晴眼者にも有利に働かないようにするため,日常生活とは異なる中性的な課題を設定する必要がある,3) 視覚障害者が使い慣れている空間情報を避ける必要がある(具体的には,点字)。2022年度と2023年度ははそれぞれ,上記3つの条件を満たす空間課題を開発し,ワーキングメモリーの計測を行い,視覚障害者と晴眼者の対等な比較に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度と2023年度の実験は,新型コロナの影響うを受けて,実験参加者の人数も少なく,年齢の統制も取れていない。具体的には,視覚障害者の実験参加者は神戸市立盲学校の職員に限定され,年齢は30歳代から50歳代であったことに対し,晴眼者の被験者は大学生で,年齢は20歳内外であった。一般に,中性的な記憶課題は若年者が有利であり,それにもかかわらす実験結果は年齢が上の視覚障害者が好成績であったので,実験の方向性は正しいと言える。しかし対等な比較とは言えないので,年齢を統制した条件を設定し,データ数を増やす必要がある。
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